古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

2005年4月11日放送の深夜の馬鹿力

 作画作業中はラジオを聴いています。
 伊集院光さんの月曜JUNK『深夜の馬鹿力』は新潟でネットしてないので、青林工藝舎の担当さんに録音してもらったMDで聞いていて、昨年の3月からの分が溜まってきている。

 昨年4月11日の放送は番組アルバイトの田代32という芸人が、芸人活動を休止して旅に出るということで、そのため番組アルバイトも辞めることになっていて番組から今までの活躍に対するお礼をするという回だった。その内容は、15分間だけ田代32にJUNKをやらせてあげるというものだった。全く無名のお笑い芸人が深夜放送のパーソナリティをたとえ15分でもやらせてもらえるなんて、お金に代えられない凄いことなのだ。番組冒頭でスタジオに呼ばれた田代に伊集院さんは今日これからお前に時間をやるから、別室で時間まで何を話すか考えろと告げた。田代はすごく感激して大喜びで感謝の気持ちを述べ、スタジオを去った。

 しかしこの企画には田代に秘密行われた仕掛けがあった。田代は全く売れてない芸人で、本業は牛乳配達のアルバイトもやっていて、牛乳配達の腕前は相当なものであるそうだが、芸人として肝心のトークの方はそれほどでもないのであった。

 そんな田代にラジオパーソナリティをさせるため、伊集院さんと番組スタッフが田代の周りに面白いハプニングを設定していたのだ。さらに誰の仕掛けによるハプニングが、田代のフリートークで採用されるか賭けの対象になっていた。伊集院さんとスタッフ三人はそのまでの3日間、白ブリーフを洗濯せずに履き通しで、賭けに負けた人が順繰り白ブリーフを履き回さないといけないのであった。

 伊集院さんの企画は、田代の師匠であるコント山口君と竹田君が田代を呼び出し、田代に山口君と竹田君秘蔵のセーラー服をプレゼントするというもの。構成スタッフ渡辺の企画は、田代が待ち合わせをしている場所の近くで怖い人が携帯電話でおかしな話をしているというもの。ディレクター柳沢の企画は、田代の原付に袋が掛かっていてその中にはTシャツとMDが入っていて、MDにはフィリピン女性が中川さんという恋人に当てたメッセージで途中で歌ったり話の肝心なところになるとタガログ語になったりというもの。プロデューサー池田の企画は、田代の自宅に蟹と振り込み通知が送られ、その直後に警察から「カニカニ詐欺の被害はないか」という連絡がはいるというものであった。これらは放送数日前から田代に仕掛けられていた。

 そして田代のJUNKが始まると、田代は緊張しながらも深夜放送のパーソナリティである大役に対する高揚感とでせっせと、セーラー服を師匠からもらった話とおかしなMDを拾った話をし始めた。

 田代の持ち時間が終わると、伊集院さんが賭けに勝った喜びと安堵感で田代そっちのけで話し始めた。田代は困惑した。伊集院さんが企画を説明すると、なんだそうだったのか!と驚いた。田代はこれまでも番組で騙されて山の中で置き去りにされて来たりしていたのだ。

 ネタを明かし終えると伊集院さんのトーンがぐっと真面目なものになった。田代はこれまで番組に随分尽くしてくれたとお礼を言い、また旅に出るのは芸人として面白の花を摘む作業であるからとてもいいことだ、自分と二つしか年が違わないのに、上から言って申し訳ないが、まだまだ面白を流暢に話す事はできないが、今日は頑張って不器用だけど丁寧に伝えることができていた、これから期待しているというような話を始め、田代に対する曲を最後に掛けたいと思いますと言い『トムソーヤの冒険』のエンディング曲が流れ出した。曲に被せて田代の後輩からのメッセージも流れ、このまま番組が終了した。
 聞いていて感激してこっちも泣いてしまった。

 と思ったら、まだ放送時間はあって、伊集院さんが嬉しそうに話し始めた。すっかり感激して泣いた田代に伊集院さんは大喜びしていた。田代が泣くかどうか、伊集院さんは田代の後のアルバイトとなるヒットマン河野と賭けをしていたのだ。田代はどこまで騙すんですかと憤慨していたが、伊集院さんが田代に送った、素晴らしく暖かい言葉には嘘はなかったと思った。

 月曜JUNK『深夜の馬鹿力』は毎週月曜日深夜1時から、関東圏と北海道と福岡、沖縄をネットしてます。史上最高に面白い深夜ラジオですよ!!