古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

畏れ多くも審査員などさせていただきました

アックス50号 第8回アックスマンガ新人賞

 オレは所謂ガロ系作家に位置するところなのは分っているのだけど、実際のところ、長井勝一さんにお目にかかった事もなく、ガロでの掲載は一回きりなので、気後れしてしまうところが多分にある訳です。そんなオレがアックス新人賞のゲスト審査員のご指名をいただき、畏れ多くもお引き受けすることにいたしました。

 将来有望な作家がいたらオレが初めに目をつけたんだぜ!なんつって今後オレが落ちぶれた時には仕事を回してくれるような、そんな新人はいないかと、ゆくゆくは古泉軍団を形成し上納金を納めてもらえるような体制を作るチャンスだと思ってわくわくしていた。

 編集部内での選考で選ばれた8本のマンガのコピーが封筒で送られ、まずは一読すると、これは厳しいものだと思った。元々そんなにガロ系のマンガに強いわけではなく、どっちかというとエンターテイメントが好きなので、生半可な気持ちで読めるものではないのだなと強く思った。

 今現在多方面で活躍していらっしゃる、花くまゆうさくさんや魚喃キリコさんにしても一朝一夕で現在の作風があるわけではなく、デビュー作はちょっと読んだだけでは「なんだこりゃ」みたいなところがあったわけで、ちょっと読んだだけではその魅力が理解できないところから可能性を探っていく必要があるのだなと認識した。(失礼!)

 こんなこと言うとハードルが上がるから嫌なんだけど、オレはストーリー至上主義だ。実際のところ、本当に面白いストーリーだったら、丸に棒が生えた絵でも人の感情を揺さぶることができると信じているし、キャラクターもストーリーに帰属するもので、あくまでストーリーの面白さをより伝えるために存在すると考える。「それでこのマンガ?」って言われると丸っきり反論のしようがないけど、そう思っているんだから仕方ないでしょ。うるせえな理想だよ!理想!そうだったらいいなって事なの。

 強いストーリー性のあるマンガが全然なかったので本当に困ってしまった。悩める現代人と言った観念的な作品が多かった。音楽で言えばノイバウテンやホワイトハウス、ハナタラシといったノイズミュージックのような厳しく険しい雰囲気をたたえていた。う〜ん……。

 選考会は南伸坊さんと林静一さんと言った伝説的な大物とご一緒させていただき、協議の形で行われた。お二人とも大変暖かい、本当に気持ちの大きな人でした。人生の厳しさも味わいながら、お年を召してなお朗らかで、楽しく強く生きていらっしゃる感じがした。オレももう40代を目前にしてこんなことでいいのかと日々答えのない自問自答を繰り返しているのだが、大いなるヒントを頂戴したような本当に素晴らしい時間を過ごさせていただきました。端的に言えばもっと人付き合いを大切にしなければいけないなーと言ったような言葉にすれば他愛のないものですが……。選考内容は本誌をご覧下さい!

 それから『巨大戦闘メカ・ガロハロ後編』も掲載になってます。