古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

トークショー!

 マンガが映画になるというのは実現してみるといろいろ分かることがあるもので、大それたことだったんだなーと今更ながら思うわけです。

 役者や音楽家、監督さんらと並んで、華もなければ白髪も染めず、Tシャツの胸には模様のように汗の染み出た男が舞台挨拶なんてさせてもらったと思ったら今度はトークショーです。これは竹原さんと熊切監督のイベントで、そもそも頭数には入っていなくて、たまたまその日程で上京しているから呼ばれただけなんですけどね。トークショーってオレなんかが人様に喜んでいただけるような事を話せるわけがないので、せめて聴かれたことには真面目にお答えしよう、他の人の話の邪魔だけはしないようにしようと心に誓います。

9月2日(土)夜9時より渋谷シネアミューズ
詳しくは公式サイトのニュースをクリックしてみてください。

 なるべく多くの人に映画をご覧いただくように勤めるのがオレの仕事でもあり、その映画の魅力をこのブログでも語らなければいけないんですよね。ところがですね、赤の他人の作品を見るように冷静に見れてないので実に困ってしまいます。ストーリーを完全に知った上で、なおかつ自分が描いたものと比較して見てしまうので、単純に面白い良かったと割り切れません。ベタ褒めしても自慢を単に垂れ流すだけみたいで、余計に足を遠ざけさせてしまいそうです。

 そうは言っても、竹原さんは頭の足りない男の純真な部分を非常にデリケートに演じ、坂井さんは凶暴なアル中女でありながらも可愛らしさを感じさせるように演じ、安藤さんは男のやさぐれ感を色っぽく演じてくださっております。監督の絵作りも素晴らしくかっこいいですし、赤犬さんの音楽もすごくいいですし、エンディングに掛かる野孤禅の曲も感動的です。

 一回目の舞台挨拶は、お客さんが見終わってからの回で、お客さんの表情が優しかったのが印象的でした。監督が意図した思いが伝わっているような気がしました。

 監督は原作をずいぶん尊重して映画化してくださっております。自腹で映画を見ていただいたマンガ評論家の大西祥平さんが電話を下さって、「マンガの映画化でがっかりしなくて珍しい」と歓心していらっしゃいました。

 自分の立場を差し引いてもよくできたすごくいい映画だと思います。人様に褒められるような事でなくても尊い事があるんだよというマンガを描いた時に込めた思いが、同じくこもっていると思います。

 今回は、自主映画の上映会もあっての上京で、そちらも9月1日なので、同じくどうぞよろしくお願いいたします! 
 毎週のように上京していて、もうしんどいです。自作マンガの映画化なんて光栄極まりない出来事なので、できる事は全部やらせていただこうと思っているのですが、仕事も進まないし、交通費も自腹です。これが終わった『ライフイズデッド』が終わるまでもう上京もしないし、どこにも行きません。