古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

読書した

 仕事が一段落しているので、読書しようと思うのですが、集中力の欠如とポケモンのせいで中々進みません。このブログでももっと読んだ本を紹介して読書家の皆さんを唸らせようと思っていたのですが、よくよく考えたらオレは元から読書家でもなんでもなかった。強いて言うなら偏った雑誌好きです。

 そんな中、枡野浩一さんの『あるきかたがただしくない』と峯田和伸さんの『恋と退屈』を読み終わりました。

 95年くらいでしょうか、その当時の『SPA!』は小林よしのりさんが連載していたり、その小林さんが宅八郎さんと揉めたり、『バカはサイレンで鳴く』が始まったりと実に熱い雑誌でありました。『中森明夫新聞』という若いクリエイターの登竜門的なコーナーがあって、そこで枡野さんは別格な、即戦力的な歌人として華々しく登場されておりました。オレは当時マンガでにっちもさっちもいかず、仲間とフリーペーパーを作ったりと、もがき苦しんでいたわけです。それはそれで楽しかったんですけどね。枡野さんのように有名な編集者さんに認められたり脚光を浴びてみたいとそれは羨んでいたわけです。ライターズデンというライターを育成する教養講座のような会合にも出席したところ枡野さんは同じ受講者でありながら準講師的な存在で、すごくかっこよかったんです。別格な感じでした。オレはと言えば、会場までバイクで行って雨が降ってずぶぬれになったり、エンストでトラックの運転手に怒鳴られたりしていたわけです。なんだよこりゃあって思ってました。

 それから10年以上の時を経て、実に申し訳ないことに枡野さんの本を読んだことは全然なく、南Q太さんとご結婚されたとかうっすらとした話題や興味を見聞きしているくらいでした。今も枡野さんはTVやCMにご出演されたり、何冊も本をご出版されたり、新聞に寄稿されたりとかっこよく活躍されています。そんな枡野さんが昨年『Sight』という雑誌でマンガの企画での対談でオレのマンガを紹介して下さっていたんですよ!!!

 そもそも、オレのマンガはそういう『STUDIO VOICE』や『クイックジャパン』などでの今読むべきマンガ100みたいな企画で、「載ってるのかな」なんてワクワクドキドキしてページをめくると全然載ってなくて、がっかりして終わる。載ってたら買っちゃおうと思って手に取るけど、痰を落として書棚に戻すのがいつもです。痰は心の中だけですよ。それにこうしてリンクを張ってるアマゾンにしてもなぜにこうも画像を入れてくれないのか。売れてないと載せてくれないのかな。自分で画像を送ればいいんでしょうかね。あんまり恵まれてても気持ち悪いからいいんですけどね。ひがんだり羨んだりしてる暇があったら、その辺走って来いって話ですよ。

 とにかく、そんなオレにとってスターである枡野さんがオレなんかのマンガを好意的に取り上げて下さっていることにビックリしました。そこでとりあえずアマゾンからエッセイ集の『あるきかたがただしくない』と短歌集『かなしーおもちゃ』を買いました。

 『かなしーおもちゃ』は短歌の投稿作品を集めた本だったので、先に『あるきかたがただしくない』を読むことにした。枡野さんは南Q太さんと離婚されて、お子様に会わせてもらえず、実に苦しんでおられた。のた打ち回るが如き苦しみようで、日々の出来事が綴られているのに、必ず毎回、子供に会わせて欲しい、子供に会いたいという話になってしまう。軽やかに出版会を歩んでいるというイメージとは程遠い、恥も外聞もなく、まる裸で泣きじゃくるようなみっともなさ! まさしく血を流してそれをぬぐおうともしない作家であったのでした。かっこいい!! 裁判での面会が認められているのに、それを守ろうとせず雲隠れした南さんをいくらでも悪く書こうと思えば書けるのに、そうするとまた揉めたりするのを避けているのかもしれないですが、決して悪く書かないところもまた立派で、子供を育ててくれていることに対する感謝の気持ちを表しているのでした。というよりむしろ、枡野さんは今も全然南さんのことが嫌いでなく、好きみたいな感じがしました。枡野さんには訴えるべきテーマがあってそれを伝えずにはいられないわけです。

 そういった枡野さんのお気持ちはいつか絶対にお子様に伝わるはずなので、希望を捨てずに頑張って欲しいと願わずにはおれません。

 枡野さんとは歳もほぼ一緒で、大学も枡野さんはすぐに中退されて、オレは一浪しているので重なってないのですが、一緒だったんですよ。そんな少ないながらも縁のある存在なので、これからも著作の読破を目指して行こうと思いました。

 長くなったので、峯田さんの本はまた今度書きます。