古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『どろろ』大丈夫なの?

 映画化で話題の『どろろ』ですが、この作品は手塚治虫作品の中でもダーク度、グロ度で最上級レベルの作品で、それをテレビのCMで分けも分かってなさそうな女子が「どろろ〜!」なんつっておどけてます。激しく不安なんですけど。


 そうは言っても『どろろ』はオレが手塚作品で1番好きなマンガです。いい機会なので手塚治虫ベスト3を発表します。

1位 『どろろ
2位 『シュマリ』
3位 『アドルフに告ぐ

 『どろろ』は戦国時代の話で、武将の父親が魔物との契約で魔力を手に入れる代わりに、息子を差し出すという話です。その息子の百鬼丸は魔物に体の48のパーツを奪われ、義眼、義手、義足、背骨までも作り物で、どうにかテレパシーや念力と大変な執念で青年まで成長します。義手に仕込んだ刀を武器に、魔物を一体殺す度に、取られたパーツが蘇るというすごい話なのであります。目玉を取った魔物をやっつけると、義眼がポトリと落ちて、本当の目が蘇ります。どろろ百鬼丸に付きまとうコソ泥です。

 大体、どろろはこのマンガの中で、唯一天真爛漫で元気な登場人物で、それをあんなおっかない顔の女が演じるってどうなんですか。オレとしては辻ちゃんを推薦します。顔や雰囲気だけなら、百鬼丸柴崎コウでいいんじゃないでしょうか。オレがキャスティングするなら若いときの柴田恭平です。

 魔物に苦しめられている村人を、百鬼丸が助けても、村人たちは「お前も気持ち悪いから魔物の仲間じゃねえのか」と石持て追われてしまいます。その感じもまたいいんですよね。手塚治虫の、この暗さの中で、でも仕方がないから次に行こうというような切なさだけではいい足りない何かの感じが好きです。ポール・バーホーベンが監督すべき題材です。テリー・ギリアムでもいいです。それが無理ならちょっと落ちるけどティム・バートンでもいいです。『オールドボーイ』のパク・ヌチャク監督もいいと思います。

 アニメの『どろろ』は面白そうですね。

 2位の『シュマリ』は明治時代の北海道の開拓が舞台となってます。主人公のシュマリは食い詰めて北海道に流れ着いた浪人です。体がでかくて心もでかい男です。マンガで言えば東三四郎(『1.2の三四郎』)に次いで好きな登場人物なんですよね。映画にするんだったら若いときの安岡力也がいいと思いますが、もう若くないので、今だったらピエール瀧がいいんじゃないでしょうか。

 そのシュマリがひどい荒地を開墾しようとすると有力者に妨害されたり、恨みを持った男に殺されそうになったり、普通にしていたら凍死するような留置場に入れられたりとえらい散々な目に会います。そこで全然へこたれないところがすごくいいんですよね。読むと元気が出ます。

 3位『アドルフに告ぐ』。アドルフヒトラー以外にもう2人のアドルフが同じ時代を生きたという大河ものです。面白かったように思うのですが、ちょっと内容を忘れてしまいました。何回か読んでるはずなんですけど、何しろ高校か予備校くらいだったので、もう20年も昔です。そのうちまた読もうと思います。