古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『トゥモローワールド』までの遠い道のり

 思えば、『ブレードランナー』の2019年(1982製作)、『未来世紀ブラジル』(1985製作)と来て、これからもすごい斬新な世界観のSF映画が現れては、我々をわくわくさせてくれることだろうと胸を躍らせて来た。そうして心待ちにして見たSF映画の数々たるや……。『トゥモローワールド』(2006年製作)は、2027年のイギリスが舞台で、リアルで薄汚れてかっこいい未来都市の表現も去ることながら、ドラマがスリルに満ちていて大変面白く、なお画面は何度も見ても新たな発見があるほどの情報量に満ちていて、思想や理念もしっかりしていてと、一流のSF映画の条件を兼ねている素晴らしい作品で、こんなのは20年ぶりと言っても言い過ぎではありません。

 期待で胸をパンパンに膨らませた分、しぼみのダメージがきつい。こだわりの都市造形を披露してくれたものの見事にずっこけた近未来SF映画の記憶を蘇らせて、ことさらに『トゥモローワールド』の素晴らしさを再確認しましょう。

・『フリージャック』2009年(1991)
 ミックジャガーが出ていたのとさっぱり面白くなかった記憶しかない。

・『デモリションマン』2032年(1993)
・『ジャッジドレッド』2139年(1995) 
 子供だましというか、子供もバカするなと怒るような内容だった。シルベスタスタローンの近未来SFにはろくなものがないと思った。

・『ウォーターワールド』水没した未来(1995)
・『ポストマン』荒廃した近未来(1997)
 このころになると悪い評判に対してセンサーが働くようになった。ケビンコスナーのSF映画はいかにもつまらなそうで見てません。もし面白かったらごめんなさい。

・『JM』2021年(1995)
 キアヌとビートたけしが競演。悪い評判を散々聞いて見に行ったらそこそこ面白かった。日本企業が悪者だったような記憶があるが確かめよういう意欲が沸かない。

・『フィフスエレメント』23世紀(1997)
 世界を救うのは愛だって、くだらなくてびっくり。当時はまだリュックベッソン監督に対する幻想が健在だったため、大きくずっこけた。エアカーや美女が出ても話がどうしようもなければ意味がない。

・『A.I.』未来(2001)
 キューブリック監督が慎重にやろうとしたのをスピルバーグ監督がさっさーとあんまり考えないで作ったみたいだった。

・『スカイキャプテン』1939年(2004)
 ちょいと毛色の違う過去SF。びっくりするほどつまらなかった。


○面白かった作品
・『トータルリコール』2054年(1990)
 さすがバーホーベン監督、とても面白かった。でも舞台が火星だった。

・『マイノリティリポート』未来(2002)
 スピルバーグ監督で『A.I.』を撮った人とは思えない仕上がり。シナリオの問題なのだろうか。

 
 他にもあったような気がするのですが、忘れてしまいました。とにかく90年代の近未来SF映画はカスが多いので変なのをつかまされて人生の貴重な時間を浪費しないように気をつけましょう。