古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

著作権はゆるくして欲しい

竹熊健太郎先生のブログ【著作権】とんでもない法案が審議されている:

 こんな恐ろしい法案が可決されたら、オレは昨日の作文の作者や、大林監督などに訴えられる前に警察に逮捕されてしまう。どういう事かというと、現在著作権侵害があったら、著作者が侵害者を訴えるシステムで、それがこの新しい法案では著作者が何にも言わなくても、警察が独自に取り締まりなどできるというものらしいです。

 そもそも、ネットで安倍なつみさんが「素敵だな」と思ってメモしていたノートから創作した詩を発表した際にも、それがaikoさんやYUKIさんの歌詞の丸パクリだったとの事件も、『スラムダンク』の絵を丸々模写した少女漫画の人の事件も、法律上全く問題になってないじゃないですか。騒いでいるのはネット上の人とうろたえた出版社の人が出版差し止めにしたりで、元の作者は全く訴えていません。こんな法案が成立したら、安倍さんも少女漫画の人も逮捕されてしまいます。そもそも作家だったら、叩けばいくらでも埃出るのはみんなあるに決まってんですよ。そこは、互助的にやっていこうという暗黙の了解があるものだとオレは認識してます。

 安倍事件の当事者であるaikoさんにしても最近、発表していたシルエットのモンスターみたいな絵が、外国の作家の作品に非常に良く似ていると新聞に揚げられてました。『スラムダンク』もNBAの写真を使い放題だそうではないですか。ポケモンも権利に非常に繊細な会社ですが、ユンゲラーというエスパーポケモンが、ユリゲラーに文句言われてましたよね。

 権利関係で騒ぐのはもう現役で描いてない松本零士先生たちと管理をしている会社の人です。松本先生は『宇宙戦艦ヤマト』で確かに西崎プロデューサーとの裁判で負けておかしくなってしまったので、気の毒ではあるのですが、当時充分懐は暖まったわけじゃないですか。(予断ですが松本先生と言えば、銀杏BOYZが『惑星基地ベオウルフ』という歌の語りで「メーテルメーテルさよならなんだね……」という『銀河鉄道999』を思わせる部分があるので非常に心配!)

 だから、お互い様なんですよ。なあなあでやりましょう、尖るのはよしましょうというのがオレの主張です。実際、それでここまで繁栄したわけじゃないですか。死後50年守られる著作権を70年にしようという動きが松本先生などの方からありますが、オレは20年にすべきだと思います。その方が文化がより一層豊かになることは確実です。

 作品なんて日々風化するものです。オレの本だっていつ絶版・廃刊になるか分かったものではなく、よっぽどのヒット作以外、出てもすぐに何の話題にもならず忘れられます。ヒット作でも忘れられる場合が多いです。作家の立場で言えば、オレみたいな泡沫作家の場合本が出ても大して金にもなりませんし、所得の大半は掲載時の原稿料です。お金うんぬんより、奇麗事みたいで申し訳ないですけど、読んでいただける事がなにより嬉しいんです。ダウンロードでも立ち読みでも、貸し借りでも漫画喫茶でもなんでもいいから人目に触れていればいずれ、何か評判になって編集者の耳に届いて仕事の依頼がいただける可能性に繋がります。死んだ後でも著作権が短いと扱い易いじゃないですか。長いとそのために忘れられっぱなしです。

 youtubeのお陰で埋もれていた作品が評判になっていくらかCDの売り上げが上がったり、再発の動きが出たりするんじゃないでしょうかね。

 著作権管理団体など中間業者のみを一瞬潤わせて、最終的に日本の文化を衰退させるに決まっているこの天下の悪法を、マンガ好きで有名な麻生太郎議員はどう思っているんですかね。麻生議員に投書しようと思います。

・麻生太郎HP