古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

最近見た映画など

 世間では、加護事件に端を発し、辻事件、藤本事件と続いて紺野あさ美ちゃん復帰事件で大騒動になってますが、オレはもうあんまり興味ないので特に感想もありません。復帰にしては早いし、こんな裏口に火がついた家みたいな状況で復帰しても不安と心配以外何もありません。大人しくお勉強していて欲しいです。

 そんなオレが一番楽しみにしているのは木曜10時フジテレビ系で放送中の『わたしたちの教科書』です。毎回息も絶え絶えになるほどの興奮で、面白すぎて苦しいです。当初、いじめがテーマの学園ドラマかと思ったら、法廷ものに展開してます。菅野美穂ちゃんが火の出るような名演技で弁護士役をやってまして、彼女の最高傑作となるのではないでしょうか。前々回ですが佐藤二朗さんは長年ドラマで見続けていて、深海魚みたいな顔のおじさんですが、大抵はパッとしない役どころが多く、上手な脇役くらいにしか思っていなかったが、その回はあまりのすごい芝居で魂消ました。裁判の証人で呼ばれて法廷で、いじめの存在に気づいていた事を涙と鼻水で顔面をぐちゃぐちゃにして告白するんですよ。うつむいた顔の鼻から汁が垂れそうで、ずっとぷるぷるしてました。このドラマは役者さんがみんな凄まじく完璧なんですよ。続きが見たくて死にそうです。フジテレビに就職すればオンエア前のテープなど見れるのですか? 株式を買収して役員会を乗っ取れば見れるのかな。

 にいがた映画塾で卒業制作の企画を出さないといけないです。15分くらいの作品って難しいです。それ以上長くても見る人がしんどいですので、いいんですけど、難しいですよ。何しろ金もほとんど使わずに作らないといけないので、制約が多いですし、偉い監督様になって好き放題予算使って好きに撮影してみたいものだ。

 最近見た映画。

仁義なき戦い』(★★★)
仁義なき戦い 広島死闘編』(★★★★)
仁義なき戦い 代理戦争』(★★★)
仁義なき戦い 頂上作戦』(★★★)
仁義なき戦い 完結編』(★★★)
『新 仁義なき戦い』(★★★)
県警対組織暴力』(★★)
『バーフライ』(★)
『ザ・シューター』(★★★)
『アートスクールコンフィデンシャル』(★★★)
『アメリカンスプレンダー』(★★★★)
スケアクロウ』(★★)
『パーマネントバケーション』(★)
『ストレンジャーザンパラダイス』(★★)

 『仁義なき戦い』シリーズ本編は見終わって、新シリーズと親戚みたいな作品も見始めました。オレは主人公である菅原文太さんがどうやら好きで、かっこいいなーとうっとりしてしまいます。菅原さんがかっこいいのは第一作と『新 仁義なき戦い』で、他のは意外とそうでもなく、人間関係の板ばさみで苦悩してばかりでした。作品としてはなんと言っても千葉真一さんの狂乱ぶりが見れる『広島死闘編』が最もしびれます。『県警対組織暴力』は、『仁義なき戦い』シリーズでヤクザだった連中が警察になっているので、違和感たっぷりでした。全員ヤクザにしか見えません。特に梅宮辰夫さんがキャリアで登場していて困りました。徳間書店から出ている『仁義なき戦い浪漫アルバム』という本を参考にしながらずっと見ているので面白さ倍増です。杉作J太郎先生たちが熱く語ってます。シナリオを書いた笠原和夫さんの『破滅の美学』という本も読んでます。

 チャールズブコウスキーがシナリオを書いた『バーフライ』はミッキーロークがブコウスキーの役で出ていて、どうやら本人の物真似で役作りしているようでしたが、本当にしょぼい小汚い飲んだくれのオヤジになりきり過ぎて、魅力的に見えませんでした。お話もぐずぐずでした。ずっと探していたのが見れて納得できたのでよかったです。今ブコウスキー作品ってほとんど買えないんですね。オレは東京に住んでいるときに中野の図書館で借りて大体読みましたけどね。

 『ザ・シューター』は退役した狙撃の名手が犯罪に巻き込まれると言うサスペンスアクションで、狙撃場面が凄まじくスリリングで、同じ人を銃で撃つ広島ヤクザとは全く違ったスマートなやり方でした。すごく面白かったんですが、こういうのはすぐに跡形もなく忘れてしまうんですよね。深作監督の作品は心に深く傷を残すのに、一体何が違うのでしょうね。

 『アートスクールコンフィデンシャル』は『ゴーストワールド』のスタッフが作った美術大学に通う学生のお話でした。連続殺人事件が物語の軸となっているのですが、それがなくても面白い作品になったように思いました。『アメリカンスプレンダー』は不遇のマンガ原作者の伝記映画で、こっちも『ゴーストワールド』のような味わいで大変面白かったです。

 『スケアクロウ』はニューシネマでずっと気になっていた映画で、初めて見ました。すごく地味でけっこう退屈でしたが、じんわり感動的な結末でした。見なくてもよかったかな。

 『パーマネントバケーション』『ストレンジャーザンパラダイス』ジムジャームッシュ監督の初期作品で『ストレンジャーザンパラダイス』は20年ぶりに見ました。高3で大学受験で上京して銀座の名画座で見たような記憶があります。当時は斬新なかっこいい映像に衝撃を受けたのですが、今はかっこいい映像とおしゃれな登場人物と素敵な音楽では納得できない男になってしまったので、退屈でした。面白い話が思いつかないのか、それともドラマ性をあえて排除してるんですかね。でもオレもこういう空気を描くような表現ができたらいいなという憧れる気持ちはあります。

 映画塾に参加している学生さんと作品のオリジナリティについての話になって彼は「どんな話も使い尽くされていて真にオリジナルな表現はない」と言うような事を言ってました。確かにその通りで、オレもさんざんパロディ的なことをしたり、実際にどこかからネタを引っ張ってくることもあります。松本零士先生からだけは絶対にやらないように心がけてます。でも、盗作はダメだけど、物語などを模倣しての表現などは割りと認められているというか、認めないとなると世間の作品が大体全部認められない状態になります。でもまあ、創作活動をする者としてなるべくならオリジナリティ溢れる作品を創造したいじゃないですか。「こんな面白いの見たことない!」なんつってびっくりさせたいです。そこまで行かなくとも、胸を張って盗作なんかじゃないと言える方法は、自分の実体験を題材に創作すればいいんじゃないでしょうか。それだと、他の作品に似ていても「だってしょうがないじゃん」と言えると思います。オレは割とそうするように心がけてます。完全に自分の体験じゃなくても、そこから膨らませたり、状況を置き換えたりして、気分や感情を反映させるようにします。ちょっと話は変わるかもしれないですが、頭で考えて構成しただけの血肉の通わない作品はやっぱりちょっとオレは面白いと感じないです。同じような題材でもいい作品になるかそうでもないかは、そこいら辺がポイントなんじゃないでしょうか。