古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

とうとう見ました

 アマゾンで買って届いたままほったらかしにしていた、田中登監督・芹明香主演作品『マル秘色情めす市場』です。そもそも、『仁義の墓場』で芹明香が演じた、大阪の売春宿に巣くうヤク中の淫売という凄まじい役が発端で、この役者はなんだと調べていくうちに、どうやら芹明香という役者さんがズバリ西成地区で売春婦をやっている映画があり、それが大変な傑作であると、そしてそれを作ったのが田中登監督であると言うことで、ぜひ見てみたいと思ったのだが、DVDのレンタルが全然なくて、とっくに廃盤になっていて買うこともできず、小針のビデオ1でVHSを見つけたものの、6月に再発があるとの事で、だったらDVDできれいなのが見たいなとこの時期になった次第であります。

 ここに至るまで田中登作品で『マル秘女郎責め地獄』という大傑作を見てしまったせいで、田中登作品及び日活ロマンポルノ作品は、とてつもない鉱脈なのではないかと期待が膨らみ、いろいろな作品を巡り巡ってきたわけです。再三再四このブログでお伝えしている通りなので、触れませんが、そんなでもない作品もけっこうありました。けっこうな本数を見たので目が肥えてきたようにも思います。

 そんな余計に期待がパンパンに膨らみ、なおロマンポルノに対してすれっからしにもなりつつあるという、相当に厳しい状態で『マル秘色情めす市場』を見ました。この映画は大部分白黒で、一部カラーの最近はあまりない方式でした。白黒ってそれだけで、オレはちょっとしんどいです。

 ところが、この映画始まってから終わりまで芹明香のかっこよさったらないです。全部の言葉やしぐさが完璧に絵になっていてかっこいいんですよ。やさぐれて、気だるく、虚ろで、それでいて尚且つ可愛らしくて美しいです。『疑惑』の桃井かおりの5割り増しで気だるく、すれっからしです。気だるい関西弁が色っぽくてたまらないです。たまらなく人間でした。嘘だと思ったら見て欲しい。ラストのカラーになった時の芹明香の美しさも大変な衝撃です。

 昭和40年代の大阪西成地区がどうだったのかなんて全く分かりませんが、そこにそういう人が居て本当にそういう生活をしているようなリアルな感じがぐんぐんしました。切なく遣る瀬無くも、エネルギッシュなストーリーは脈絡がないようで、そう感じさせるような緻密な計算があるようで、好みは分かれるかもしれないですが、絶妙でした。絶対またすぐ廃盤になるから、買った方がいいと思います。

『マル秘色情めす市場』(★★★★★)

この映画の感想や解説
http://kurumi.sakura.ne.jp/~yen-raku/cinema/m1.html
http://d.hatena.ne.jp/molmot/20061015/p1
http://www.cmn.hs.h.kyoto-u.ac.jp/NO1/IVIEW/TANAKA1.HTM
http://blog.goo.ne.jp/langberg/e/8496592aeffefd343cf7b8789457297c
http://shibuya.cool.ne.jp/team_masa/tokugawa/actress/s-meika.shtml
みんな大絶賛です。

 これで一山超えたような気分ですが、芹明香は事実上主演作と言われる『特出しヒモ天国』という作品もあり、これはDVDはおろか、VHSにもなっていない作品なので、いつか何かの機会で見てみたいものです。田中登監督作品は『夜汽車の女』『牝猫たちの夜』など未見の作品がまだまだあります。