古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『ゾディアック』と『TVのチカラ』

 デビッドフィンチャー監督の最新作『ゾディアック』を見てきました。フィンチャー監督といえば『セブン』『ファイトクラブ』でドキドキわくわくさせてくれたと思ったら『ゲーム』や『エイリアン3』などでガッカリ、『パニックルーム』で微妙な気分にさせてくれて来たわけで、果たして最新作はどうだろうとこちらとしても身構えるわけです。

 ここから先はネタばれアリアリで行きますので『ゾディアック』をこれから楽しもうとしていらっしゃる皆さんは絶対に読まないで下さいね。オレとしては、けっこうガッカリでした。

 だって退屈なんだもん。長いです。連続殺人でうっひょーみたいなのを期待していたら、殺人場面は確かにリアルでぞっとするような自然さで淡々としていて素晴らしかったですが、そんなのは始めの方だけでした。ドラマの大半は主人公の記者が事件の調査にのめりこんで刑事や関係者にうざがられて、嫁にも愛想を尽かされるというダウナーな展開でした。のちのち重要な場面だったと分かる、最重要容疑者と刑事の接見もその場では全くドラマチックではなく、すごく退屈に演出されていました。そういう意図で計算通りなのでしょうが、寝そうでした。

 日活ロマンポルノや『仁義なき戦い』なら90分で表現してくれるだろうに、この映画ときたら2時間半以上ですよ、2時間半! 最近の映画長いのばっかじゃないですか。長くても時間を忘れさせるなんていうのも時々ありますが、大体は長さを感じさせます。DVDの普及のせいでしょうかね。VHSだったら2巻で出さないといけないですもんね。

 長さと退屈さにイライラしたのですが、先日最終回を迎えたテレビ朝日系列の公開捜査番組『TVのチカラ』みたいな場面がこの映画にあって、ゾディアックがテレビ局に直電を掛けてテレビの人と会話します。高橋秀樹か中山秀征みたいな人と話すんですよ。アメリカって言えばFBI超能力捜査官の本場じゃないですか、何で超能力捜査を行わないのかとイライラしました。マクモニーグルやオリバーは当時現役じゃなかったんですかね。こんな事件は彼らに掛かったら一発で解決に決まっているんですよ。

 それにしても残念極まりないのは『TVのチカラ』の放送が終了してしまった事です。こんな面白い番組なかったですよ。最終回はクリスとハンナというお馴染みの超能力者が二人も出るという大盤振る舞いでした。クリスは寝て夢で被害者と通信して事件の全容に迫るという技を持ちます。調査を進めるために一々一晩寝ないといけないというまどろっこしい人ですが、彼が今回はリンゼイさん殺しで逃亡中の市橋容疑者の潜伏先に迫っていました。千葉で女性の部屋に匿われているらしいですよ。ハンナは被害者の持ち物や写真などから残留思念を読み取って、事件現場に立ち会うような霊視をします。彼女はバーのオーナー女性殺しを担当してました。どうやら殺された女性に借金のある人による犯行のようでした。これらの事件の行く末が番組を通して見る事ができないのが寂しくて仕方がありません。なんとかタイトルや体制を変えて復活というわけには行かないでしょうか。切に願っております。

TVのチカラSOSファイル

 『ゾディアック』の感想は否定的でしたが、けっこういい場面もたくさんあったことをだんだん思い出して来ました。冒頭の連続殺人場面はやっぱり素晴らしくいいですが、それ以外もぐっと来る場面ありました。期待が大きすぎたせいで、目が曇ってました。それでもやっぱり長いは長いですけどね。
・最初担当だった記者が退社して、ヤクや酒でボロボロになって家でテレビゲームのテニスをやっている。
・映写技師で、犯人と勘違いして記者がとてもびびる。
・音楽がかっこいい。オレの大好きなスライ&ザ・ファミリーストーンの『I Want To Take You Higher』が大変かっこいいアレンジで使われていた。
・60年代70年代の車や景色がかっこいい。