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古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

なんという野蛮さ、ラウェイ

 PRIDEは開催がなくUFCもテレビ放送が途絶えてしまって、この飢えをどうにか凌ごうと、サムライTVに加入しました。以前から『紙のプロレス』で何度か紹介されていたミャンマームエタイ・ラウェイという競技が先月東京で開催されている模様が中継されたので見ました。これがなんと、素手で顔面を殴りあい、更には肘や頭突き、立ったままの関節技や締め技までもが許されると言う恐ろしい格闘技です。そんな、ラウェイの無差別級王者を始めとして5人の選手と日本チーム5人(日本人4人とアメリカ人1人)が全面対抗戦を行っておりました。

・試合レポート

 その昔、80年代のプロレス文脈で言うと「パンチは腰が入っていなければ全く効き目がない」「手打ちだけのパンチは効かない」とされてました。格闘技マンガでも、プロレスラーの打たれ強さがいかに凄いかが強調され、体重の軽いボクサーがどんなに打ち込んでも顔面を腫らしながらも不敵に笑って、最後には投げ技や関節技で痛めてつけて勝利するという場面が多く見られました。名作『あしたのジョー』でもホセ・メンドーサだったと思うんですけど、矢吹丈との記者会見の席か何かで、ホセが矢吹の両肩を抑えて、顔を突き出して矢吹に滅多打ちにさせる場面がありました。ホセはそうすることで、自分が打たれ強さを演出して矢吹をビビらせていました。しかしそれは、ホセは矢吹の肩を強く押さえつける事で、腕の稼動範囲を減らしてパンチの威力を軽減させていたというトリックだった。

 こんな場面になるほどと鵜呑みにしていたのですが、90年代にUFCが現れた途端、そんな常識が崩壊してしまったわけです。プロレスラーは顔面を打たれると顔を抑えて鼻血を出して背中を丸めて亀のようになってレフリーが試合を止めました。パンチは腰が入ってなくても当たると相当痛くて効くというのが今では定説です。『あしたのジョー』のような場面が現実にあったら、ホセは顔面をボコボコに腫らせて半べそで、打たれ強いどころではなかったはずですよ。

 当時は、オープンフィンガーグローブなんてブルースリーの映画でチラッと見たことがあったくらいのもので、空手は顔面の突きがなくて、プロボクサーとプロレスラーの試合は引退後のボクサーだったり、シナリオが存在したりで、いろいろなものがベールの裏側だったんですよね。総合格闘技でプロレスラーはさっぱり活躍せず、何度もがっかりさせられました。今ではオープンフィンガーグローブなんてBerryz工房の衣装になってます。

 素手で人を殴るなんてUFCの初期ではジェラルドゴルドーが野蛮に殴っていてそれは大いに興奮したもので、ラウェイでの野蛮さや危険な雰囲気はそれ以来なんじゃないでしょうか。UFCは競技としてきちんとしたものになって、こっちも見慣れたのもあると思いますが、冷静に見れます。放送がないので見れないですが。

 しかもミャンマーの選手が普段から素手で殴ったり殴られたりしてるせいか、顔が怖い。『あずみ』に出てくるやばい修行を積んだ武芸者みたいな顔してます。この時代にあってなぜにそんな恐ろしい競技に身を投げ打っているのか、何か事情でもあるんでしょうか。そんなミャンマーの人たちを迎え撃とうと言う日本人もまたなんたる根性! 

 試合はミャンマーの人たちがけっこう小柄で、体重差がありそうで申し訳ない感じだったのですが、試合が始まるとミャンマー人の強さや気合がすごいです。結果はミャンマー側の4勝1敗でした。唯一の日本の勝ち星は寒川直喜選手で体格を生かした立ったままのスリーパーで、その前にも立ったまま肩固めを極めかけるなど、ミャンマーにはない技術で有利に試合を進めておりました。解説では、日本人選手は素手で殴られる事に対するプレッシャーが強くてそれで身を硬くしてしまい、スタミナをロスしてしまうのが敗因の一つらしいです。そんなの恐ろしいに決まっているので無理ないですよ。リングにあがるだけでも凄まじい勇気で、それを讃えずにはおられません。

 日本でも拳真館という団体が素手による顔面打撃ありのルールで大会を行っておりました。空手は突きによる顔面なしが普通で、K-1に出るような団体でもグローブで試合をします。それがいきなり素手で顔面って……。

 お そ ろ し い っ !

・2007年7月21日「WORLD CHAOS MADMAX」試合結果
 調べたら1つ前の大会はDVD付きで本が出てました。

 極真館という老舗空手団体も顔面ありを解禁すると言いますし、すごい時代が到来しつつある雰囲気です。