古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

佐藤監督が始まった!

 こう言うと申し訳ないですが、正直自主映画だし、映像をきちんと撮影するイメージの監督でそんなに期待していたわけではなかったです。シナリオも最初は『新しい絶望』に『ところでここどこ』の竹夫のエピソードを組み入れる感じであんまり馴染んでなく、感想や意見を率直に申し上げてお任せした以上気持ちよく撮ってもらえればいいので完成版は見てませんでした。よっぽどひどい仕上がりだったら上映が終わる前に逃げようと思っていました。

 ところが!

 『透視せよ!タケオ』は大変な傑作に仕上がっておりました!!! 挿入された超能力のエピソードが完全に機能していて原作よりももっとずっとずっと深く心をえぐる作品となってました。原作のタイトル『新しい絶望』は思い付きでつけたタイトルで大した意味はなかったんですが、佐藤広一監督版では本当に新しい絶望の形が描かれていたんですよ! こんな映像化は原作者として無上の幸福です。

 撮影は二日間立ち会ったのですが、こんな風に仕上がっているとは全く予想できませんでした。佐藤監督はこれまでクールな人物が登場する淡々としたドラマの作品を描いていて、正直申し上げてオレにはちょっと退屈でした。オレはセックスとバイオレンスがない作品は苦手なんですよ。映像もかっちりと自主映画なのにプロ級の仕上がりで、そこそこきちんとしたものは完成すると予想してましたが、まさかこれほどとは! 今回の映画は主人公がとにかくかっこ悪いですからね。そんな男が無様に悲惨な目にあれこれ会う描写が本当に間抜けで笑いました。出演者の皆さんが面白いですし、佐藤監督のセンスが光っているんだと思います。クライマックスの蛾場面では見事なCGですごい迫力でした。津田寛治さんのノリノリの演技もすごく面白くて笑いました。佐藤監督始まったんじゃないでしょうかね!! 

 主演の佐藤直樹さんは主演作なんと50本目という自主映画としてはギネスに載るんじゃないかという節目の作品となったそうです。

 佐藤監督を始め、出演の皆さん、撮影スタッフの皆さん、本当にありがとうございました!! 本当に感激しちゃいました。早くみんなに見て欲しい! とりあえず山形の皆さんは来週18日も山形自主制作映像祭での上映があるので、絶対に見に行っていただきたいです。新潟でも12月2日のBook of Daysの上映会で掛けれたらなと思いますが、こんなのやられたらオレの作品の悲惨な出来が際立ってしまうので迷惑です!! でもまあしょうがないですよね。

 とは言え、オレは事前にストーリーを知っていて見ているのであんまり客観的じゃないんですよね。果たして、事前になんの予備知識もなく見る人は本当に面白く見ていただけるのかは分かりません。山形の皆さん、御覧戴いたらぜひオレにも感想を教えて下さい!