古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

新連載『ワイルド・ナイツ』

 本日、発売の漫画アクション双葉社)にて新連載が始まります。『ワイルド・ナイツ』というタイトルの長編マンガです。スロット屋で働く男が空手を始めてそれまで抱いてきた鬱憤や日々の憂さを晴らすという鬱々とした、すっきりしないマンガです。駄ケンカと駄セックスに明け暮れるさっぱりな男の殺伐としたお話です。いつものように人でなしな内容なのですが、いつもより度合いが増しているかもしれないです。みんな引いちゃうんじゃないかと心配です。

 去年の始からネームを描き始めて8月に完成して疲れたからほったらかして、秋から冬に掛けてはだらだらDVDを散々見たりして遊んでいたんですよね。それで掲載の目処が立たないまま先月から描き始めて何話か描きたまった辺りから連載をどこかでさせていただけたらなーと考えていました。編集者さんの意見もないまま勝手に描くと往々にして売れないまま保留になってしまい事が多いですからね、そういった不安と久しぶりに長編を描き始める事への嬉しさみたいなのでちょっと興奮していたんですよ。ここぞという時に聴こうと思って溜めていた『深夜の馬鹿力』のMDを聴きながら描くのは大変な喜びでもあります。去年の3月から溜めてました。

 年末にネームのコピーを預けていた漫画アクションの担当の平田さんから「来月から連載が決まりました」と唐突に連絡をいただいて、とてもビックリしました。
 「そんな無理ですって」
 「いやいや」
 「他の仕事もあるので月一連載なら大丈夫です」
 「いやいや」
 「いやいやじゃなくて……」
 と、全く取り合ってくれず、それどころか言うに事欠いて
 「初回は2話掲載は無理ですか?」
 「コラー!」
 コラーはウソですが、こんなやり取りで、とにかく始まる事になってしまいました。このところ、ブログの更新が今月に入って滞っていたのは作画していたからなんですよ。

 今年は4月にエロ漫画集を青林工藝舎から出していただく予定だったので、それを今回はじっくり売るための営業に力を入れて大事にして、他の連載も充実させて、4コママンガや文章の仕事をまとめた自費本を作ったり、いろいろ怠りなくやりたいものだと考えていたのですが、それどころの騒ぎじゃなくなってしまいました。毎月2本『ワイルド・ナイツ』描いて、6ページの連載2本、2ページ2本、隔月でもう一本、4コマの連載があるので絶対無理なんですよ、途中でどこか休みを入れてもらわないと落とす計算ですってなんて思っていたんですが、今月はマガジン・バンとホイップの作画両方を2日で終わりました。ネタを考えるのに時間が掛かってそこが順調ならもっといいんですけど、18日がアクションの締め切りで無理だと思っていたら15日で終わってました。とにかく作画を毎日フルでやればなんとかこなせそうになっているのがオレとしても恐ろしいんですよ。過労死するんじゃないですかね。指が痛いのと目が霞むくらいしか体調に変化はないので当分大丈夫だと思うんですけど。

 第1話の扉に「自伝的」とあるんですが、全然自伝じゃないですよ。一部オレの実体験を題材にしている部分はありますが大体フィクションです。大体はフィクションなんですが、オレが新潟に引っ越してからの思いや感情を全部注ぎ込もうと思って描きました。これを描き終わったら次のステージに行けるような気がします。全く褒められるような内容じゃないどころか、軽蔑される内容なのは間違いないです。そもそも大間違いなのは仕方がないと諦めているところで、そういう思いを余すところなく描き尽くそうとしているので、どうしようもないのですが、最低限できる限り面白くしようと思ってますし、これまであんまり誰も描かなかったところに行けたらいいなと思って一所懸命描いておりますので、どうぞお楽しみに! 「楽しみ」という言葉に読んでも決して楽しいマンガじゃないだろうと、違和感を覚えるのですが、是非お読みいただきたいです。