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古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

作品の鑑賞について

 マンガや音楽や映画を見ようと思うとき、好きなのを選ぶじゃないですか。全然それでいいんですけど、マンガを描き始めてから、好きなものにばかり親しんでいたらよくないのではないかと思うようになりました。好きじゃないようなジャンルの作品でも優れたものはたくさんあるだろうからそういうものから刺激を受けて、いい影響を受けたいと思って、東京に住んでいた時は毎週2本ずつビデオをレンタルして一本は好きなアクション映画やSF映画、もう一本は全く興味のわかないヒューマンドラマや恋愛映画、芸術映画、などを借りるようにしました。好きなものだけ選んでいたら世界がどんどん狭くなりますもんね。好き嫌いでものを見るのではなく質の良し悪しで鑑賞しようという試みでした。それは後のテレビドラマ研究に至ります。

 大学の時に美術研究会に所属して油絵を描いたり、陶芸をしたりしてました。その時オレに油絵を教えてくれた辻さんが「この絵は長田さんの人間が表れていていい」と言うような事を言っていたのを最近ふと思い出しました。当時は、人間性が作品に表れていようがどうだろうが別にどうでもいいと思っていました。特にオレみたいな人間の人間性なんかが表れたらそれこたまったものではないではないかくらいに思いました。要するに全くその言葉にピンと来なかったわけです。

 その時は、技術的なものや作品の内容についてしか興味がありませんでした。

 レコケンくんという集まりがあって、そこでは出席者が各々他の参加者に聴かせたいレコードやCDを持ち寄って、聴かせっこするという実に素朴ながらも楽しいイベントです。レコケン君にはmimizという現代音楽のグループや映画音楽を作っている福島さんという人がいらしていて、福島さんが掛けた音楽について「よく分からない」と言っていた時に「どういう意味で分からないのですか」と質問してみました。福島さんが掛けていたのは確かにノイズのような音楽で、オレにとってはなんだこれはと思いながらも、別に分からないとは感じませんでした。これはオレは聴かなくていいやで終わる種類の音楽でした。福島さんは「意図が分からない」と答えました。オレは、それまで、音楽は単に自分に面白い面白くない、合う合わない、オレにとって良い悪い、かっこいいかっこよくない、好き嫌いという快感原則みたいなところでしか聴いておらず、意図を理解しようなんて気は全くなかったです。オレにとってはすごくビックリする答えでした。

 意図を理解してみようというアプローチで、これまで高い評価ながらいいと思えなかったルーリードや二ールヤングを聴いてみました。オレは東京に住んでいた時長らく、ミュージックマガジンを読み続けていたのですが、そこで評価の高い二ールヤングとルーリードがさっぱりいいと思えず、会話に入っていけないような寂しさをずっと抱いていました。当事は、退屈でフックのないと思っていて、耳に一切残らなかったです。

 車をゆっくり流しながらipodで聴いてみたルーリードの『Transformer』とニールヤングの『Sleeps With Angels』はどっちもとてもよかったです。意図を理解できたかどうかさっぱり分からないですが、慈しみ深さのようなものをどっちからも伝わってきました。どっちも、すごく暖かい音楽でした。以前のオレはそういうのを全く音楽に求めていなかったのかもしれないです。

 それで辻さんの作品に表れる作者の人間性のようなものの話に戻りますが、奇しくも作品の意図を読み取ろうと思って鑑賞してみたところ、人柄みたいな事にもなんとなく同時に接しているような感覚がありました。こういう事かと、辻さんが言っていたのはこう言う事かと思いました。オレが描いているマンガっていうのは本当に下劣なものばっかりじゃねえかと改めてぞっとしたわけです。

 オレの事はさておき、作品とは即ち技術的な事や作品内容も含めて製作者の人間そのものなのではないかと思い至りました。ともすれば本人以上に本人なのではないかと思います。よく作品は素晴らしいけど、本人は最悪だなんて話を聞くじゃないですか。でも、やっぱりオレにとって素晴らしいと思える作品を製作する人は、もしオレが作者と会って感じが悪かったとしても、それはたまたまオレが嫌われていたり、表現や接し方がまずかったりするだけで、本人様は素晴らしいんだと思います。素晴らしいというのはオレ基準で、オレにとってですよ。会う機会もそうそうないですけどね。

 それで、夕べ運転しながら銀杏BOYZの『光』を聴いたんですよ。シャッフルモードにしていたらたまたま掛かって、もううちが近かったんだけど、10分もある大作じゃないですか、最後まで聴きたくて横越まで回って帰りました。これがまたよくて、素晴らしい曲なんですよ。GOING STEADYの時は、オレの読者で音楽を頑張っている人がいる、頑張れよ!くらいに思ってました。当時オレはハロプロに夢中でしたからね。頑張ってるけどパンクならメロン記念日の方が上かななんて思ってました。それが解散して銀杏BOYZになって音楽性もどんどん豊かになり、ステージがぐんぐん上がっているような感じがあります。峯田さんは、いろいろ苦味や辛い経験されたんでしょうね、勝手な推測ですが、そんな経験からくる味わい深い暖かさが伺えます。今じゃ申し訳なくておいそれと話しかけるのも緊張します。以前はそんなに大して思ってなかたですから気楽にクソみたいなエロ話ばっかできていたんですが、もうなんだか畏れ多くなっちゃって申し訳ないですもんね。

 尾崎豊を真面目に聴いた事がなかったので、きちんと聴いてみましたが、オレにはダメでした。死んだ人の悪口になるので理由は書かないです。

 特に音楽のことばかり描きましたが、映画や小説やマンガでも同様に鑑賞していますが、まず最初に面白くないと意図や人間性を理解しようという気持ちが働きません。