古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『クローバーフィールド』見ました

 フェイクドキュメンタリーの怪獣映画で、今年一番の期待作で、今月の映画秘宝でも大特集されていたため、映画秘宝が読めなくて本当に困っておりました。これが期待を裏切らない素晴らしい出来栄えで、大変面白かったです。ところが、公開2日目のレイトショーなのに、お客が20人前後というガラガラ具合で、新潟から映画館が撤退したらどうしようかと心配になりました。

 予告があまりに面白そうで嫌がおうにも期待が高まるじゃないですか。そういう場合大抵、予告以上に面白い場面がなかったりして往々にしてガッカリするのですが、予告以上に面白かったです。

 ここから先はネタバレありありですので、楽しみにされている方は絶対に読まないでくださいね!!!

 とにかく、市販の手持ちカメラの映像だけで一本を成立させようという意欲作で、なおかつリアリズムを徹底しようと頑張っている姿勢が素晴らしかったです。怪獣に襲われてカメラを持って逃げるだけ。そのため手ぶれがひどくて気持ち悪くなるんですが、それでもよかったです。日本映画の、特に戦争映画なんかはおかしな思惑が介入してがっかりする事だらけですもんね。そのせいで面白い日本軍の戦争映画を外人に作られたりするわけですよ。

 手持ちカメラなのに音声が良過ぎるという突っ込みどころもあるのですが、そこは迫力があって映画館で見てよかったです。

 怪獣に噛まれて軍に殺される女が、パーティの時随分感じ悪いじゃないですか。でもそれは撮影している人が不細工で、性格も悪いからというのが段々明らかになるところも面白かったです。誰と誰がセックスしてると言いふらしたり、もめているところを撮影しようとしたり、地下道を歩いている時に気持ち悪い話をしたりで、そんなところも人間的なコクの深い描写でよかったです。パーティの場面もこれからこの浮かれた臭い連中が散々な目に会うと思うと非常にワクワクします。

 なぜ、捨てた女を心配して倒壊しかけたビルにまで乗り込むかというと、みんなパーティで日本酒をぐいぐい飲んでいかれていたからではないかと一緒に見た友達が言っていたのも、なるほどと思いました。

 ガッカリポイントは怪獣がかっこ悪いのと、強すぎるところです。グエムルくらいのサイズと弱さの方が生々しくて怖いですが、グエムルサイズでは今回の映画が成立しないです。デザインはゴモラガメラのようなちょっとモサい感じがいいと思います。通常兵器が通用しないと打つ手なしになって、それこそエヴァンゲリオンが発進しないと収まりがつかないです。小さい怪獣もドラマを逆算して作ったイベントみたいな感じがしてちょっと嫌でした。オレが作るとしたら1時間くらいで軍が怪獣を殺して、残りの20分は帰宅困難者のサバイバルドラマとして作ります。ビルの倒壊による粉塵も大変な被害があります。それでは多分受けないですが。

 とても面白いですが手持ちカメラの映像が気持ち悪いので2回は見たくありません。

 今年見た中で現時点で1位です。2位は『ジャンパー』です。

・うろ覚えと思いつき怪獣映画ベストテン
1位『グエムル』(2006)
2位『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)
3位『ガメラ2 レギオン襲来』(1997)
4位『クローバーフィールド』(2008)
5位『大日本人』(2007)
6位『ゴジラモスラキングギドラ大怪獣総攻撃』(2001)
7位『ゴジラ対へドラ』(1971)
8位『ザ・グリード』(1998)
9位『ゴジラ』(1954)
10位『モスラ』(1961)

 とにかく金子修介監督の怪獣映画は大好きです。『ガメラ3』だけちょっと今ひとつでした。昔のゴジラシリーズは見ていないのも多く、見てももう10年以上まえですし、他にまだまだ面白いのがあったような気がしますが、思い出せません。そのうち見返して正式に怪獣映画ベストテンを決定したいです。