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古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

杉作J太郎さんの話はなぜあんなに面白いのか

提言

 先日、よるのひるねで行われた杉作さんとのトークショーはとにかく面白くて素晴らしかったのですが、なんであんなに面白いのか、とにかく凄まじいとしか言いようがありません。

 杉作さんがモーニング娘。に熱中していた時期、ヲタ仲間が自宅近くのファミレスに集まっているというので呼ばれて言ってみると、ヲタの皆さんが占める一角の壁にはなっちのポスターが貼られていて、杉作さんは近所ということもあり恥ずかしくて仕方がなくて、トイレやドリンクバーに行けなかったそうでした。そして議論が白熱して「ごっちんが」とか「梨華ちゃんが」と話題が移るたびに、後藤真希ちゃんや石川梨華ちゃんの写真をかざす人がいて、まるでテレビ画面の編集のようで、それがまた恥ずかしかったという話をしてくださいました。いかに当時のモーヲタの皆さんが熱かったかを物語る素敵な話で、オレの文章がこんな調子なのであんまり面白さが伝わらないかもしれないですが、杉作さんが話すと途端にめっちゃくちゃ面白くなるんですよ。笑いが止まりませんでした。

 内容も話術も、テーマも完璧に面白いです。こんな凄い芸のある人がそんなに超有名でも高額なギャランティを獲得するわけでもなく、身近に存在する事がむしろ奇跡なのではないかと思うんですよ。トークショーでは杉作さんに反対されてできなかった、オレが思う杉作さんのかっこいいところを申し述べたいと思います。

 オレはそもそもアックスで『ジンバルロック』と『チェリーボーイズ』を連載させていただいて、それがどんなマンガだったかと言うと、一般的な青春マンガで描かれる叙情性やメランコリックさや、繊細な傷つきやすいみたいなかっこいい感じとかそんなのに水をぶっかけてやろうと思って描いたマンガです。なぜかというと、オレの高校時代にはそんな感覚が全くなかったからで、クラスのかっこいい連中にはあったかもしれないと思うと腹も立ってくるわけです。もっと惨めったらしく、クソみたいに話しにならない生活を送ってました。

 それでこんなマンガ今まで描いた人もいないだろうと思って得意に思っていたら、杉作J太郎さんが『さらばワイルドターキーメン 卒業』というマンガでとっくに描いていたわけです。それまでオレはエロ本で見る面白い文章や『トゥナイト2』で北野誠さんとコントをやっていた印象しかなかったのでビックリしました。オレはガロはちょっと怖い印象があったのであんまり読んでなかったんですよね。それでビックリして、『チェリーボーイズ』の発売記念特集で杉作J太郎先生と対談させていただいて、そのお話の面白さにこれまた魂消ました。

 それ以来、勝手にガロ・アックス杉作系マンガ家を標榜しています。杉作さんが、モーニング娘。を応援しているというならとオレもテレビでチェックして新潟に爆音娘。というイベントが来たら行ってみたりで、見事にはまりました。杉作さんが男の墓場プロダクションを設立し、映画を製作するなら、オレはにいがた映画塾に加入して自主映画を作ってみると、杉作さんが行く道を追いかける活動方針を採用しています。杉作さんが道を指し示してくれるのでとても楽です。エヴァンゲリオンのパチンコはやるべきかどうすべきか迷います。

 普通、男としてかっこよくみられたくなるものじゃないですか、ところが杉作さんは、徹底してみっともない部分をさらします。ともすれば正論を述べたくなる時もあるじゃないですか、ところが杉作さんは立派な発言をする時は気が狂ったみたいな内容で言います。何より、自分を徹底して良く言わないんですよ。パッと見、かっこ悪く見えるその潔さと言ったらないです。

 オレは結婚しようとして失敗した経験があるのですが、その時は本当に思い上がっていて、こんなオレがマンガだ店だと頑張っているんだからとニートやフリーターの友達を見下す勢いでした。結婚の失敗で目が覚めて、杉作イズムを見失っていた事が分かりました。こんなオレが杉作さんの真似をしようにもできないところがあります。杉作さんの記憶力の凄さったらないわけです。映画や小説や体験や出来事の話の詳細さが凄まじいです。オレは本当に見たり聞いたり体験したりした先からどんどん忘れて行きます。記憶力の凄さが、話術の素晴らしさの一要素であるのは間違いありません。それから、人望が凄いです。オレも古泉軍団が新潟に二人居ますが、滅多に会いません。一人でいる方が好きで、杉作さんのように男の墓場プロのように凄い面子を束ねるような事は絶対に不可能です。人と深く関わってそこから産み出される面白いのは本当にダイナミズムがありますもんね。お話の表現力も絶対に真似できないです。それはもう頭の作りが違うんでしょうね。元々は愛媛県でも有数の進学校に在籍していらしたそうで、オレみたいなバカ高校の出とはわけが違います。

 そういうわけなので、オレはできる範囲で杉作さんの背中を追いかけて行こうと思うわけであります。