古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

perfume新潟コンサートに行きました

 岡田斗司夫さんの『オタクはすでに死んでいる』を読みました。現在のオタク人口は肥大化し、一般化したせいで、かつてのハードコアな気高いオタク達の居場所が失われてしまったというような切ない内容でした。そしたらこのようなニュースが流れてそれに対して2ちゃんねるの人たちの間では、本を読まないまま岡田さんの主張に批判が巻き起こってしまいました。残念な事です。岡田さんは結末でこれからのオタ活動について、大変暖かいメッセージを発していて、オレはちょっとウルウルしましたよ。

痛いニュース:岡田斗司夫「オタクは消費するだけの存在、すでに死んでいる」

 先日見に行った、perfume新潟コンでオレが感じたのは『オタクはすでに死んでいる』で読んだ内容みたいな事でした。

 かつてオレはモーニング娘。では5期メンバーの紺野あさ美ちゃんを応援していました。その際には高橋ヲタなどから目の敵のようにされ、散々な悪口を言われていたわけです。ここでは書けないようなひどい悪口をネット掲示板で書かれて毎日のように胸を痛めていました。その怒りからオレは空手で自らの肉体を凶器と化す決心を固めました。それは確かに高橋愛ちゃんは、歌も上手で多くの楽曲で重要なパートを受け持ったり、何冊も写真集を出版したりしていました。紺野あさ美ちゃんは歌もちょっと苦手で、オレから見たら大変可愛らしいぷっくりしたほっぺの個性が、他のメンバーのファンからはきついだなんだと評判がよろしくなかったわけです。反面、あさ美ちゃんのファンは熱心な人が多く、写真集を一人で50冊くらい買ったり、『涙が止まらない放課後』(あさ美ちゃんがセンターの曲)をヘビーローテーションして再生回数ランキングでトップを取らせたりしていました。そんな見ず知らずの人たちをオレは頼もしく思っていました。

 オレはそんな人たちに比べると非常に浅い、戦力にも何にもならないような男でした。あさ美ちゃんの引退で一旦終止符を打ち、今では℃-uteBerryz工房の音源をチェックしたりミュージックジャパンの出演を見て保存しなかったり、新潟に来た時くらいはコンサートに行く程度のライトユーザーになりました。Cool Transでかわいい子がいるなと思ったら矢島舞美ちゃんの写真集の広告で、つい買ってしまいましたが(見ると寿命が縮むほど素晴らしい)、その程度のものです。

 たまたま親切な人がperfumeのライブチケットを売ってくれたので見に行きました。perfume掟ポルシェさんが、Berryz工房に狂っていたはずなのに急にperfumeを連呼しだしたので、アルバムを聴いてました。曲はすごくいいですが、オレは特にファンというわけではありません。現時点の再生ランキングでは、アルバム1枚シングル数枚の割りに26位199曲ですが、曲が好きなだけでファンではないです。オレは何かのファンなのかと聴かれたら、あくまでライトなファンですが℃-ute矢島舞美ちゃん以外あり得ません。

 仮にもアイドルのライブに出かけたわけですが、ハローの会場で見かける怪人みたいなヲタが皆無で衝撃を受けました。特攻服はおろかハッピもいなければ自作の押しメンTシャツもなければ、自作の押しメンうちわもない。フレディのカギ爪みたいに全部の指にサイリウムを取り付けた人がいないどころか、サイイリウムの一本も光ってませんでした。全身にメンバーのバッチをちりばめて耳なし芳一みたいな装いの怪人ヲタではなく、いるのは普通の音楽好きみたいな小奇麗な人々でした。そしてあろう事か、オレの前の女はあーちゃんかわいいとか言っているわけです。「おいお前だよ、そこの女今何つった?『あーちゃんかわいい』とかゆってなかったか?はあ?かわいい?だったらよ次生まれ変わったらあーちゃんのツラで産まれたいのか?おい」と気がつくとオレはその女に詰め寄っていました(ウソでした)。

 紺野あさ美ちゃんもアイドルとしてはかなりオルタネイティブな存在であったことは百歩譲って認めます。それゆえに我々は迫害を受け更に応援を激化する人が現れ、あの幸福な引退を迎え感動を共有した事だと思います。それがperfumeは確かに今すごい人気でアルバム『GAME』はオリコン一位です。テレビにもしょっちゅう出て、いろいろな雑誌で取り上げられ時代の寵児と言っても言いすぎではないです。また、所属事務所のアミューズは音楽を大切にする事務所で、それもとても幸福な環境と言えると思います。で、ありますがアイドルとしての容姿は非常にオルタネイティブじゃないでしょうか。気分を害する人がいたらごめんなさいね。「流行っているから好き」が「かわいい」の判断基準を浸潤してないでしょうか。会場は全体的に美少女扱いでした。

 perfumeの皆さんは芸暦が長く苦労人だけあってMCも大変面白く、何より曲が素晴らしいです。特に『エレクトロワールド』はメランコリックなメロディとアレンジにデビットリンチ風味の歌詞が素晴らしくオレも大好きです。お客さんはギチギチで、オレは会場の後ろの方でちょっと空いているところでずっとフリコピをしていました。振りはそんなに難しくなく、素晴らしい音楽で踊るのは楽しいです。白髪の40男が女の子の可愛らしさを際立たせるために作られた踊りを真似しているのはさぞ気持ち悪い事と思います。周りの音楽好きの小奇麗な人たちはちょっと手を上げて振るくらいでした。小じゃれた音楽を好む俺達がアイドルのライブなんてのもたまには悪くないよななんっつって空かしている感じがしました。被害妄想ですが。

 杉作J太郎さんもおっしゃっていましたが、モーニング娘。よりファンを最初に好きになったそうで、オレもそうでした。爆音娘。で保田圭ちゃんもいないのに『保田大明神』のノボリを振り回し、「圭ちゃん卒業おめでとう!」と連呼するヲタの皆さんに度肝を抜かれ、そのあまりの楽しそうさ加減にオレも仲間に入りたいと強く思いました。2002年の夏です。コンサートの会場ではくるくるパーなんじゃないかと言うくらい底抜けに嬉しそうに踊り騒ぐヲタの皆さんの姿を見るのは喜ばしい事でした。なっちや加護ちゃんを好き過ぎておかしくなっちゃったんだなと思いました。

 perfumeもそんなふうに応援していた人たちがきっといたはずなんですよ。新潟のライブでは見ませんでした。東京にはいるんでしょうか。11月は日本武道館でライブするそうです。