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古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

マンガ界は大変だ

マンガ製作

雷句誠先生、小学館を提訴

 少年サンデーで連載され、大ヒット作となった『金色のガッシュ!』の作者、雷句誠先生がカラー原稿を紛失されたそうで、小学館に損害賠償請求をなさっています。問題は原稿紛失だけでなく、編集者との関係が大いに問題があったようで、雷句先生の言い分をそのまま受け取ると、お怒りは確かにごもっともとしか思えません。7年間にも渡る長期連載で、アニメ化もされ、小学館マンガ賞も受賞したくらいの大作家でありながら、編集部よりこのような扱いを受けているなんて、にわかには信じ難いです。少年サンデーは元より少年誌とはお付き合いがないですが、本当だとしたらオレにはとてもじゃないですが対応できません。雷句先生は7年もよくご辛抱されたと敬服するばかりです。

 この記事を読むといろいろな驚愕の事実が明らかとなります。

 「編集者が変わるたびにまずガンを飛ばす」これがまずおかしいですよね。敵対行為じゃないですか。マンガ家と編集者は言わば共同作業で作品作りに取り組んでいくもので、これでは仕事にならないです。オレなら即刻連絡を断ちます。「編集者が非協力的でケンカ腰」、何しに来てんだよこいつ!

 雷句先生はあまりのストレスで激高して拳を机に叩きつけて大事な右手の骨を折ってしまったそうです。なんという悲劇! オレも砂袋を拳で打って拳を鍛えるというのを以前やっていたのですが、硬いところを叩いてしまったようで拳頭を痛めた事があります。普段はなんともないのですが、サンドバッグを素手で叩いてちょっとすると痛みが出るというのが1年半くらい続きました。幸い左手で、練習はグローブをつけてやれば大丈夫でした。大事にするばかりでは、何かの拍子に怪我をする事もあるので、鍛えておく方がいいと思います。

 大ヒット作家なのに、白黒原稿が1枚13000円と、オレとあまり大差ない値段! 少年誌は安いという噂もあったのですが、こういうことなのでしょうか。しかも1枚仕上げるのにスタッフの手を入れて3時間!! オレはクオリティがあんな感じなので比較するのも申し訳ないのですが、一人でやって2時間ちょっとくらいです。カラー原稿は最低で10時間! これでは原稿料だけで人件費をまかなうのが大変ではないでしょうか。ちょっと効率化を考慮されてもいいかもしれないです。相当こだわるタイプなのかもしれないです。オレはちょっとくらい絵が変でも、そこは諦める方針です。

 雷句先生のご苦労は測り知れないですが、どんな場合であっても声を荒げたらちょっと負けですよね。威圧してそれが効果のある場合、例えば狂った人を相手にするような場合だけですよね。ちょっとおかしな人には、なるべく冷静に対応して反論の余地を与えないのがいいと思うんですよ。小学館の編集者なんてみんな超高学歴で高い競争率を勝ち抜いて入社した優秀な人ばかりだと思っていたので、ちょっと不思議です。オレはスピリッツの人しか知らないですが、皆さん素晴らしく優秀で人格も優れた人ばかりです。そんな皆さんにお世話になって出版された『転校生 オレのあそこがあいつのアレで』は現在も細々と販売中です!

 それはそれ、ちょっとネットで調べたところ、雷句先生は高校在学中にデビューされ、藤田和日郎先生の元でアシスタントとして修行して、『金色のガッシュ!』の連載を開始されたという事で、言わば小学館、少年サンデーの生え抜き作家でいらっしゃるわけです。オレはいろいろな雑誌で編集さんと気まずくなってはフェードアウトするを繰り返して現在に至るという真逆のマンガ家人生を送っています。雷句先生は本当のマンガエリートです。そこにはオレにはないご苦労があるわけで、一所で意地でやり抜くというすごい根性の持ち主じゃないかと思うんですよ。オレみたいに簡単に背中を向けてはへらへらしている者とはわけが違います。でも、オレの経験から言うと本当に自分の事を認めて尊重してくれる編集者さんと出会えるかどうかというのは大変な問題で、これから先やっていけるかどうかの重要なポイントでもあると思います。オレは流れ流れてやっとの事でそんな信頼できる編集者さんと出会えた幸福を噛み締めています。お医者選びでもセカンドオピニオンとか言うじゃないですか。一人の編集者さんの意見が絶対じゃないので、何人かお付き合いさせていただいていた方がいいと思います。

 『金色のガッシュ!』読んだことないですし、オレのマンガは全てデータなので紛失騒動も損害賠償も全く人事ですが、オレなんかとは比較にならないくらい才能溢れるマンガ家である雷句先生にはマンガ産業全体を活性化させるべく頑張っていただきたいです。オレはその片隅で糊口をしのげたらなと思うわけです。