古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

巨大化は興醒めだ

 『インクレディブルハルク』を見てきました。冒頭の場面がブラジルで、ヒクソンがなんか日本語交じりで喋っているぞと相当日本かぶれなのか、変なのと思っていたら吹き替え版でした。オレは前の『ハルク』もけっこう面白いと思っていたのになかった事になっていて、そのハルクに変化してしまうプロセスがダイジェストで説明されていました。前回はそこが物語の半分だった事を大いに反省しているようでした。

 『ハルク』と言えばテレビ版が最も親しみがあり、主人公が怒ると洋服を引き破るくらいパンプアップした筋肉男になってしまい大暴れしてみんな散々な思いをするという悲しいヒーローで、好きか嫌いかで言えばちょっと好きくらいですが、そこはかとない侘しさがあってよかったです。ところが前回の『ハルク』もそうですが今回の『インクレディブルハルク』も変身するとでかくなりすぎです。

 オレは昔からSF作品での巨大化して強くなるというのに懐疑的なんですよね。今回は特にネタバレなしです。

 いくらガンマ線を浴びたからと言って、せいぜい70キロくらいの男がパンプアップしたからと言って500キロくらいの筋肉男にならないでしょう。500キロはオレの推定ですが、ボブサップが160キロ、曙が250キロでしたっけ?確かそんなだったと思いますが、目をつぶってもせいぜいそのくらいの巨大化くらいが収まりがいいように思います。
映画のハルクはでかすぎます。戦車と同じくらいのサイズでした。マイクロバスくらいの大きさを想像した方が分かりやすいかもしれないです。

 『AKIRA』で鉄男が巨大化して、大きな胎児のようになって街を破壊する描写があったじゃないですか、ハードSFだと思って読んでいたのでガッカリでした。男としても小柄なやせっぽちの鉄男なんて、ともすれば50キロ台じゃないですか。50キロが巨大化したら、それこそスカスカのフワフワになると思うんですよね。ろくに動けず、街も破壊できないどころか、ビルの角に体をぶつけて多大なダメージを負うと思います。骨なんてすぐ折れるんじゃないですか?皮膚も弱ってすぐ血がでるんじゃないでしょうか。

 巨大化で強くなるなんて、それ相応のたんぱく質がせめて必要じゃないですか。水もです。そこにガンマ線が当たって強靭な肉体になるだったら、科学にうるさい人はそれでも文句が出るかもしれないですが、オレはそこまでやってくれたら納得します。

 ウルトラマンみたいに本来巨大なのに、普段は無理矢理小さくなっているだったらまだ納得します。そこで窮屈な思いをしている描写でもあったらなおいいですね。見た目70キロなのに、体重が500キロあるとか。とにかく巨大化して強くなるというのは子供だましな感じがして、興醒めするので気をつけて欲しいです。

 映画は今回も前回も面白さは同じくらいだったように思いますが、前回の内容をあまり覚えていないので正確なジャッジはできません。今回のはハルクが軍人に物凄い前蹴り一発で半殺しにするという場面が特によかったです。