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古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『ウォッチメン』をまた見てきました

 初回はとにかく圧倒され通しで、そのくせストーリーにはガッカリしてしまい、でも字幕を追っていて映像を把握していないところも心残りだったので再びユナイテッドで『ウォッチメン』を見ました。すでに覚悟ができているので圧倒されないように気をつけながら見ました。すると、それでもやっぱり面白く引き込まれる場面が多々あり、アクションシーンは噛み締めるように見てもなお圧倒的な高クオリティで、それでなおさらストーリーの不具合がやっぱり残念極まりないところでした。2時間40分の上映時間は1回目よりむしろ短く感じました。

 それから映画秘宝の特集や、町山智浩さんのポッドキャスト、その他の映画評なども事前にチェックしました。どの記事も原作の扱いがとても大きく、むしろザック・スナイダー監督の存在がとても軽視されていました。映画は原作に大変忠実に作られているとのことで、いい部分も残念な部分もアラン・ムーアさんの原作だったら仕方がないのかな、そんなに言うんだったら原作を読まないといけないのかなと思いました。原作は大絶賛の暴風雨が吹き荒れています。

 ここから先はまたネタバレなので、これから見るのを楽しみにしているという人は絶対に読まないでください!!

○2回目見て気づいたところ
・コメディアンは初代シルク・スペクターの事が真剣に好きで、強姦に及んだようだった。部屋に未練がましくスペクターの写真が飾られている。なんとう不器用男! 東映ヤクザ映画ではナンパが一般的に強姦だった事を踏まえればそんな時代だったのかな。
・2代目シルク・スペクターは美人でスタイルも抜群と思っていたら案外ずん胴だった。案外目も小さい。でもやりたい!
・やっぱり面白いドクター・マンハッタンの変化前のあまりの普通さ。
・ドクターマンハッタンはすごい巨根だったような気がしたけどそこまででもなかった。
・ドクターマンハッタンが着替えながらテレビ局に瞬間移動するシーンかっこいい。
・シルク・スペクターとナイト・オウルはチンピラどもを惨殺した後、優雅に食事。
・ナイト・オウルはバットマンをモデルにしているそうなのに、レンジでチンのパスタや缶入りの豆など、食事が質素。バットマンを意識して見るととても面白い。
・オジマンディアスの南極の基地は『Xメン』みたい。世界中のテレビが見れる。

 アランムーアさんかスナイダー監督かどっちのセンスか分からないですが、黒幕のオジマンディアスにはほとんど関心がないんじゃないですか。人類で一番の頭脳を持って銃弾を素手でつかめてアイアコッカ以上の大富豪というオジマンディアスなのに、彼の立案した人類を核戦争から救う計画は、あまりに綱渡りで、江戸川乱歩の失敗作品みたいなクオリティです。人類最高の頭脳とは全く思えません。ダメでしょう。

 その計画の鍵を握るドクターマンハッタンとシルクスペクターの恋愛の行方もひどくグズグズです。「母親が自分を強姦しようとした男との一回の浮気で誕生したシルクスペクターの存在そのものこそが奇跡だ」と感動して人類に関心が向くドクターマンハッタン……ダサい! 万能神にあるまじき安っぽさ。がっかり。

 僕もこれでもマンガ家の端くれなので分かるのですが、こういう残念な物語になってしまうのは、始めにミステリー要素を入れてしまったせいなんですよ。全くコメディアンが黒幕のオジマンディアスに殺される必要ないんです。殺すんだったら計画を知られた時点で殺さないとダメじゃないですか。コメディアンが敵を呑んだくれて尋ねて愚痴をこぼしていたら、もう計画を公表されても仕方がないです。なにやってんのオジマンディアス? 

 最終的に人類を全面核戦争から救うというストーリーにするなら、小規模核爆発を起こす作戦をオジマンディアスが計画して、それに対応するウォッチメンの面々という組み立てでいいのではないでしょうか。ミステリーにしないで。原作がそうだからという話は面白くもなんともない理由なので聴きたくないです。

 オープニングのミニットメンでのスピンオフが見たいです。そこはザックスナイダー監督のオリジナルストーリーでやったらいいんじゃないですか。特に最終的に救急車で精神病院に強制入院させられるモスマンの活躍が見たいです。レズビアンのゴスっぽい女も一体どんな活躍をしていたのかとても気になります。でも考えてみたら『ドーンオブザデッド』もオリジナリティが溢れていてもリメイクだし、『300』も原作通りだというし、もしかしたらオリジナルで何かするのが苦手な人なのかな。

 ウォッチメンがコスプレをして自警行為をする集団という設定はとても面白いです。どうやっても目立ちたがり屋というのは心の弱さや病んでいる感じが滲み出るので、そんな儚い集団の末路の物悲しさがとても味わい深いです。そっちメインで、連合赤軍みたいに内ゲバになって殺しあうという話でも面白いんじゃないでしょうか。実際内容はそんな感じなんですけど、ミステリーにしたせいでつまんなくなってしまいました。オレにとって映画『ウォッチメン』はすごいゴージャスで美人でなおかつ色っぽくてそれでいて性格も可愛らしいのに、性器の匂いだけは残念な女という印象でした。