古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

縄井さんが亡くなっていました

 縄井さんは、オレが物心つく前からお世話になっているおばあさんで、うちにお手伝いさんで来ていただいていました。毎日午前中に来てくれてました。家政婦を雇うなんて超セレブなイメージがあるかもしれないですが、うちの辺りで商売をやっている家ではごくごく普通で、料金もいつか聞いたらとても安くてむしろ申し訳ないくらいな感じでした。そんな縄井さんには幼稚園の送り迎えしてもらっているのが一番古い記憶です。母や父が時折鬼のように恐ろしい顔を見せる場合がありますが、縄井さんは常にいつも優しくしてくれていました。雇い主の子で他人なので普通かもしれないですが。

 上京していて、昨日帰宅すると母の書置きがあって縄井さんが亡くなっている事を知りました。言ってくれればだらだらしてないで帰ってお通夜出たのにと思いました。なので今日の告別式に列席させていただきました。告別式って本当に身内の人しか普通いなくて、他人はオレ一人みたいで、なんだかとても気まずかったです。ご遺体の縄井さんは生前の面影がなくて、本当に縄井さんなのかどうか確信できないような感じがありました。出棺の前に参列している人が棺に花を添えるという儀式があって、やらせていただこうとしていたら、幼稚園児の女の子が次々と花を並べてとうとう全部添え切ってしまいました。追加の花があるかと思ったらなかったです。

 縄井さんのご自宅はすごく遠い農村地域にあってそこから毎日自転車で通っていました。そんな記憶だったのですが、それはオレが子供だったからそう思っただけで自転車では15分くらいの距離でした。祖母が入っている施設に行く通り道沿いだったので、こんなことなら訪ねておくんだったと後悔しました。縄井さんのご自宅に遊びに行ってバッタを捕って遊んだ事もありました。二人目のお母さんか、三人目のおばあちゃんでした。

 オレが高校くらいまでうちに来てくれていたように思います。上京して戻って2回くらいお会いしたように思います。もっとしっかり挨拶すればよかったです。子供がいたら一番に見てもらいたかったです。マンガがもっと胸を張れるような作品だったら、どうぞ!と見せれるのにと思いました。「縄井さん」とずっと呼んでいて全く気にした事もなかったのですが、下のお名前が「シゲ」というのを初めて知りました。本当に失礼な話です。

 帰宅してから部屋の片づけを久しぶりにしているのですが、不要な一年以上触っていないものを部屋から出すという方針にしました。そして床にものを置かないというようにも決定しました。まだまだ途中で疲れてやめてしまい、この後どうやったらいいのか途方に暮れている最中です。縄井さん、どうしたらいいですか? 縄井さんがいなくなっちゃったと思うととても寂しいです。