古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

映画『色即ぜねれいしょん』を見た

 この夏はさっぱり面白そうな映画がないなんて思っていたんですが、よくよく見るとTジョイに『色即ぜねれいしょん』が来ていました。みうらじゅんさんの小説が原作で、峯田和伸さんも出演されているというので絶対に行かなければいけない、なにしろオレには『アイデン&ティティ』を劇場で見逃すという前科があるので公開二日目に行ってきました。これが!とても面白い青春映画でした。主役の渡辺大知さんの顔がとにかく表情豊かで困った顔やうれしそうな顔や、歌うときの顔がやたらと面白いんです。最初、峯田さんが若返ったのかと思ったくらい似ていました。顔が面白いというのは、それだけで表現が豊かで、エモーションも伝わっていいですよね。実際そういう場面があるんですが、恥ずかしくてやりきれなくて枕に顔をうずめてもだえ苦しむというのがこの映画の真髄だと思うんですよ。渡辺大知さんはそんなこっ恥ずかしいお芝居をやりきっていらっしゃって本当に見事でした。

 この映画を新潟で上映してくださったTジョイ新潟万代の皆さんにまずは感謝申し上げたいと思います!

 見事と言えば、峯田さんが感極まって海に飛び込む場面があるんですが、それがあまりの飛び込みようでびっくりしました。あれは事故じゃないのか。パンク系のミュージシャンの皆さんとオレも自主映画を作ったことあるんですが、同じ役者として素人でも表現に対する前のめりな姿勢があってとても撮影しやすかったです。

 舞台となるのが1974年の京都で、時代劇なのですが、そうなるとオレはちょっと現代がいかに映りこんでいないか意地悪に見てしまいます。主人公のご自宅のエアコン室外機くらいしか目立つところがなかったです。ただ、あの時代ではTシャツをズボンの外に出す文化はまだなかったと思うんですよ。どんなヤクザでもきっちりズボンにインしていたと思います。でもそこはきっちりやりすぎると、現在との違和感になってドラマに集中できないという判断もあると思います。現在から見てダサすぎるのは除外するというのも判断だと思います。

 みうらさんの原作で田口トモロヲさんが監督するのは2作目なのですが、どっちも音楽が大変豊かに使われています。田口さんもばちかぶりというバンドで活躍されていたのに、田口さんご自身の音楽を全く前に出さないというのは遠慮されているのでしょうか。そのうち、ばちかぶり的な映画をおつくりになるのかな。ばちかぶりのライブは一回見たことあるんですが、すごくかっこよくて興奮した記憶があります。田口さんがつばを天井に向けてぺっと吐いて、それをまた自分の口で受け止めるというパフォーマンスをされいたような、記憶違いかもしれないですが、かっこよかったです。

 ユースホステルで出会う、オリーブというあだ名のお姉さんが本当に身もだえするような、あんな女がいたらそれ以外なにも考えることができなくなり、己の矮小さばかり突きつけられて苦しくなるようなタイプで、それだけたまらないってことなんですが、本当に魅力的でつらいくらいでした。夢が一つだけかなうとしたら、やらせてくんないかな。面倒なプロセスや、後々の面倒もなしで。とはいえ、オレなんかもうお父さんみたいな気持ちもあるんで、そんな色気に満ち満ちた女の子がいても、その子を慈しんでいるご両親がいると思うと、おいそれと不誠実な行為に及びにくいという現実もあるわけです。デリバリーヘルスなどで誤魔化す以外どうしたらいいのか分からないです。

 すごく面白くて、いい映画なので皆さんも見に行った方がいいですよ!