古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『空気人形』を見た

 映画の日で、ちょうどマンガのネタを考える最中で何かヒントになるかなと思って是枝監督の『空気人形』を見てきました。ダッチワイフが心を持ってしまうというファンタジックな映画で、そのダッチワイフをペ・ドゥナちゃんが惜しげもなくかわいらしいおっぱいを見せて見事に演じていらっしゃいました。『復讐者に憐れみを』より何度も脱いでいて本当に素晴らしかったです。片言の日本語が人形っぽさや、東京をファンタジックな空間に自然に変貌させていたように思います。

 空気が非常に重要な意味の映画でしたが、映画自体は空気とは程遠い重々しさに満ちていました。ここから先はネタバレで感想を書くのでこれから『空気人形』を楽しみにされていらっしゃる方は絶対に読まないでくださいね!

 登場人物が、主人公からしてダッチワイフだし、他の人もほぼみんなドキュンでした。子供とかお父さんとかは違ったけど、過食症の人とか、イケメンのフリーターも他人のダッチワイフとデートしているような男! 東京を舞台をみんな病んで苦しんでいました。現代を描こうとするとこうなってしまうのでしょうか。そういうのも仕方がないかなと思わせる映画でした。何が苦しいかって、人様に何かを求めることが原因だと思うんですよ。そんな期待がまっさきに裏切りを生み出すじゃないですか。何にもねえよと、それこそ空気だよと思ってないと余計にガッカリするわけです。自分で何とかできる範囲で期待して、期待に応えるようにしていた方がいいし、人様には期待とか関係なく何かいいことして上げるようにしたらいいと思います。そうするとそのうち巡り巡って自分に返って来るんじゃないでしょうか。別に道徳的に一日一膳とかそういう話じゃないですよ、近いかもしれないですが、精神の負担を考えると今の時点でオレの答えがそれです。

 この映画は本当に登場人物はたいてい自分の要求しかないという冷たい目線で描いていてとてもよかったです。脳が結局ダッチワイフレベルなので、誤解から殺人を犯してしまうというのが急転直下で『チャイルドプレイ』みたいでビックリしました。

 オレが初めてペ・ドゥナちゃんを意識したのは『グエムル』で謎の怪獣相手に家族を守るためにアーチェリーで戦っていました。そのジャージ姿が大変可愛らしくてビックリして他の作品をチェックしたら『復讐者に憐れみを』でおっぱいを見せてくださっていたので本当に魂消ました。オレが好きだったデリヘルの女の子に体つきがそっくりなので、なんだか切ない気持ちになります。

 美少女ロボットが未来から来る『僕の彼女はサイボーグ』を先日見たのですが、この映画も韓国語のシナリオを直訳で日本語にしたようで、変な字幕みたいな日本語の芝居が変で、ファンタジックな内容に合っていたと思います。ただ綾瀬はるかちゃんはとても可愛らしかったのですが、当然あるであろうセックス描写が皆無というか無い事になっていたのが残念でした。でも面白かったです。ペ・ドゥナちゃんのダッチワイフはメイド・イン・コリアなのかと思っていたら違っていました。

 女郎の死神おせんが人形浄瑠璃と化す田中登監督の『マル秘女郎責め地獄』もちょっと思い出しました。美少女や美女が人形やサイボーグになったらセックスを無視するのは無理があります。だって真っ先にそこいくでしょ。ロボットや人形だったら触ったって怒られないし、犯罪にならないもんね。

 さて、そんな美少女ロボや人形やそういうのは非常にムズムズするものがあるのですが、オレもそんなマンガを描いた事があります。『ピンクニップル』という作品集に収録の『ともだちロボット』という読みきりマンガで、20ページ足らずの読みきりです。けっこう評判がよかったので、『空気人形』『僕の彼女はサイボーグ』『マル秘女郎責め地獄』などと一緒にお読みいただけたら嬉しいです。