古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『くもりときどきミートボール』新潟は明日まで

 今週配信されているTBSラジオのポッドキャスト『シネマハスラー』で、映画『くもりときどきミートボール』を宇多丸さんが大絶賛されていて、なんだその映画聞いたことないぞと思ったのですが、調べてみると金曜日まで新潟でも上映していたので、慌てて見に行きました。

 CGアニメで、しかも3Dなので特別料金で2千円で、しかも今週は一日1回上映で、オレはCGアニメがちょっと苦手なんですよ。食指が動かないです。お子様や家族向け作品が多いじゃないですか。『Mr.インクレディブル』みたいな大傑作で好きな作品もあるんですけど、名作と名高い『ウォーリー』や『モンスターズ・インク』もあんまり好きじゃないんですよ。なので、いくら宇多丸さんが激奨していたからと言ってオレには関係ないかもしれないと半信半疑でした。

 ところが!『くもりときどきミートボール』という変な魅力的じゃないタイトルの映画は圧倒的な表現に満ち満ちたとんでもない気違い映画でした!!! 新潟は明日までの上映です!しかも昼間で、ワーナー新潟南は11時から、ワーナー新潟は14時からが最後です! レイトショーがないので高いですが、どっちにしても3Dの特別上映なので、2千円です。でも3Dで見れるからこその表現がたっぷりなのでむしろいいですよ!

 以下、ネタバレありありなので、『くもりときどきミートボール』をこれから見たいと思っていらっしゃる皆さんは絶対に読まないで下さいね!

 こんな映画いったいどんな人が見にくるのか、お客は我々だけじゃないのかと思ったんですが、おばさん2名と中学生男子2名が他にいて、計6人で見ました。男子2名、学校はどうした? なんでこんな映画を見ようとしているのだ? オレは、映画ならなんでも見る男でブロガーのカトキチさんを誘いました。他の友達も誘おうかなと思ったんですが、オレもあんまり進んで見たくない印象があったので、映画ならなんでも見る男は、それこそ『TAJOMARU』や『GOEMON』、『キラーバージンロード』すら見る地雷を自ら踏む男なので、誘ったら大喜びで現れました。ナイスガイ!

 映画は、発明家の青年が、ある日水から食べ物を生み出す機械を発明して、それが空中を漂い、コマンドを入力することで、空から自在に好きな食べ物を降らせられることができるようになったのですが、機械が暴走を始めて世界が破滅する危機が訪れるという内容でした。

 空から食べ物?なんだそりゃ、汚くて食えたもんじゃないだろう、料理屋さんはみんな失業するじゃないか?食べきれなかったら腐って生ごみはどうするのだ?生態系への影響は?機械のバッテリーはどれだけ高性能なのだ?などなど現実的に考えたら気になるところはたくさんあるのですが、作品の中でのリアリティが上手に処理されて、上手にこっちを誤魔化してくれるので、だんだん気にならなくなりました。『空気人形』でも感じたのですが、こっちの現実から映画内での現実に上手に連れて行ってくれました。こういのはどこに秘密があるのか、もっと検証する必要があります。『崖の上のポニョ』や『しんぼる』ではうまく行っていなかったと思います。

 機械が暴走を始めるクライマックスがとにかく圧巻で、それこそなんでも表現できるCGアニメの特性をフル活用しているんじゃないでしょうか。スパゲティの竜巻っていうのがとにかく素晴らしかったです。豊かなイマジネーションをド迫力で表現されております。それを伝えようとするオレの言葉がまるで貧困で全く申し訳ありません!!

 テーマもいいんですよ。主人公は失敗発明ばかりで、普段顰蹙を買ってばかりです。それがある日、そんな発明をしたもんだから一躍街の人気者になって調子こきます。この人気や他者から評価に踊らされて自分を見失います。オレもそういうのすごくあるんですよ。マンガが売れる売れない、評価されるされない、ブログのアクセス件数を気にして、元から人気なんてさっぱりないのに気にしてしまう。先日のイベントでも小田原ドラゴンさんや花くまゆうさくさんの人気者ぶりに改めて自分の無名さを思い知らされて、しょんぼりしたわけです。オレなんて4人くらいしかサインしませんでしたよ。というか4人の皆様に感謝すべきなんですよ、ありがとうございました! 思い上がるんじゃねえと自らにもっと言い聞かせないといけないです。これから皆さんオレを見たら「思い上がってんじゃねえよ!」て言ってください!! トゥイッターなんてのも登録したらみんなフォローしてくれんのか、なんつってね、そんなの気にしてんじゃねえ!って話なんです。そんな低レベルなことを気にする以前にもっとやるべきことがあるんだと、本当に気づかされます。みんなに本当に喜ばれるような立派な仕事をなしとげてみるとか、それこそ子供を早く作って、愛されることを求めるより愛する立場になるべきなんだと思いました。

 オレもカトキチさんもメガネ男子なので、普段掛けているメガネの上に3Dメガネを掛けるという間抜け極まりない並びなのが実に残念でした。とにかく、宇多丸さんとワーナーさんのお陰で凄い映画を見ることができ、本当にありがとうございました!!!