古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『イングロリアス・バスターズ』を見てモヤモヤした

 クエンティン・タランテイィ−ノ監督の最新作『イングロリアス・バスターズ』を初日のレイトで友達と見てきました。登場人物が多くて役者の顔を覚えるのが苦手なオレには少々難しい面のある映画で、しかもブラッド・ピットが主役だと思っていると案外出番や活躍が少なく面食らうという期待に肩透かしを食わせる作りでありました。てっきり2時間くらいの映画だと思っていたら後から2時間半と聞かされて、充実した作品だったんだなと思いました。退屈とかは全くせず、派手な爆発や銃撃戦の場面もあって楽しめたのですが、心底大満足とは思わせてくれないモヤモヤした気持ちが残りました。

 オレ、Eくん、Mくん、Uくん、カトキチくんの5人で見たわけですが、「傑作!」と見終わった直後からテンションをあげて口火を切るカトキチくんを尻目にオレを含めて他の人は言葉を濁し曇った表情だったのが印象深かったです。カトキチくんがとにかく年間500本を見るドマニアであり、オレは記憶力に難ありで役者の顔の把握にも四苦八苦しているので、カトキチくんはオレには理解できないところも深く洞察しているから面白いのだろうと思いました。イーライロスって誰?あのバットの人か!てなもんですよ。こんな癖球を素直に打ち返せる柔軟な感性をうらやましく思いました。その後いつものようにサイゼリヤに移動して『イングロリアス・バスターズ』が一体我々に何をもたらしたのか話し合いました。

 今回もネタバレするので、これから映画を楽しみにしている人はここから先、絶対に読まないでね!!!

 オレはEくんの感覚を信頼しています。映画を見ている本数は今回のメンバーで少ない方ですが、残虐シーンが大好きで『プラネットテラー』を見た後は、「00年代で一番!」と興奮してました。オレはその意見には賛成しなかったですが、素直でいいじゃないですか。今回Eくんは「『ブラックブック』の方がよかった」と素直な感性ぶりを発揮してました。『ブラックブック』はエグい場面もありながらも、主人公の女を中心に分かりやすく物語が展開するという王道の作りでオレもとても面白かったです。その意見には賛成です。

 それで、一体なぜ『イングロリアス・バスターズ』にモヤモヤしてしまうのかずっと考えていました。カトキチくんは頑張って面白かった場面を強く訴え、それには全く反対ではないんだけど、「なるほど!それならとても面白いね!」と膝を打たせてはくれなかったです。他の人の感想ブログを見てもモヤモヤをすっきりさせてくれる意見はなかったです。例えば『ランボー 最後の戦場』は普通に面白かったという印象だったのが宇多丸さんのシネマハスラーを聞いたら、やっぱり傑作だった!と印象が激変しました。そんな意見が聞きたいです。

モヤモヤする原因として考えられるもの
・期待が高すぎた
・登場人物を把握できない
・ブラピの活躍が少ない
・バスターズの活躍がさっぱりない
・外国語の会話の面白さを字幕を通してなので分かりにくい
・実は女が主役みたい
・ナチスだからと言って残虐に殺しすぎ(ここは面白い)
・実はパラレルワールドだったのか?

 オレの感性の柔軟性のなさは本当に深刻で、最初にテクノを聴いた時、アンダーワールドとかデリックメイとかですが、何がいいのかさっぱり分からなかったです。みんなは嘘をついていると本気で思っていました。知ったかぶりすんじゃねえ、それかヤクやってんのかと真剣に思いました。オレは、期待して映画を見て、その期待を上回る面白さを見せて欲しいと常に思ってしまいます。今回はオレが期待する方法と違う方向での面白さを提示されてしまったために受け止めることがうまくできておらず、モヤモヤしているのが大きいのではないかと思いました。全くオレの中の問題なので、勝手に気にしてろって言われたら、済みません。外国語ネタにもとても置いてきぼり感があります。将棋マンガにオレが乗れないのは将棋の展開がさっぱり分からないので、その本質に触れる事ができないからなんですよ。「ボンジョルノ!」と元気にブラピた言ったのは笑ってしまいましたが。

とても面白かった場面
・こぶしに仕込んだ拳銃!!!!殴る事で銃弾が発射される!かっこよすぎる!!!
・ヒトラーを蜂の巣
・映画のスクリーンが燃えたあと煙に映写される女の顔
・居酒屋の銃撃シーン
・バスターズの登場場面とわずかな活躍場面

 なので、ブラピやバスターズがこぶし拳銃(漢字にすると拳拳銃)や木製バットで、ナチの高官を殺しまくって最後は蜂の巣になって死んだらきっとすっきりしたのかなと思いました。安っぽくなるけどね! こういう映画であるということを踏まえてもう一回見に行けば随分印象も違うと思うので、きちんとした評価はそれからです。

 今年は『ウォッチメン』『母なる証明』『イングロリアス・バスターズ』と、あたかも挑戦状のような、オレの度量を試そうと言うかのような映画が多くて困ります。疲れたよ。