古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『TUFシーズン9』を見ている

 UFCの登竜門番組『TUF』(ジ・アルティメッと・ファイター)の放送が9月からWOWOWで始まって、ずっと録画していてあんまり溜まると見るのが億劫になってまとめて消してしまうなんて事にもなりかねないので、ちょっとずつ見ていると3話目から途端に面白くなりました。今回はアメリカチームとイギリスチームの対抗戦とのことで、1話はアメリカチームのオーディション対決で、2話がイギリスチームでした。3話目から合宿が始まって、今6話まで見たのですが、毎回1試合か2試合の放送があります。

 この試合が無名の選手ばかりにもかかわらず、UFC本戦より面白いんですよ! 

 それというのも、その試合に至るまでの過程にドラマがあって、面白いんだと思います。対戦が決まるとその相手を意識してトレーニングを積みます。合宿は両チームとも同じ宿舎で行われているので、キッチンやプールやロビーで顔を合わすわけです。「あいつが本当に嫌いだ。顔を見ているだけでムカついてくる。キッチンでもテイクダウンを奪って顔面にパウンドを叩き込んでやりたいのさ」と物騒な内面を語るわけです。

 今回はチーム対抗戦なので各チームにコーチがいます。アメリカチームは日本でもおなじみのダン・ヘンダーソンで、イギリスチームはマイク・ビスピンです。コーチ同士も名勝負を繰り広げたライバル関係にあります。イギリスのマイク・ビスピンが第5話の試合でなぜか現れないという不測の事態が生じました。その結果かどうか選手は否定しましたが、イギリスが負けてしまった。「実は、寝坊をしていたんだ。本当に済まない。アメリカに来てからというもの時差ぼけが直らなくてすっかり寝ていてしまった」と仰天の理由を沈痛な面持ちで語るビスピンでした。

 イギリスチームが一丸となって練習に取り組んでいるのに対して、アメリカチームは気持ちがばらばらです。
「オレはそうだな、よく覚えてないけど今まで70人の女とやったな。親友の妻がいて」
「おいおい、もしかしてその親友の妻ともやったなんていうんじゃないだろうな。だとしたら口に拳をねじ込んでやるぞ」
「その女が自分からオレに乗っかって来たのさ」
「ギャハハハハ」
「お前の帽子コンドームみたいだぞ」
 プールサイドでそんな最低の会話を交わしていると、あるアメリカ選手は「あいつらは最低だ。一緒にいたくない。オレはむしろイギリスチームの連中と一緒に居るほうが落ち着くんだ」と背中を向けるわけです。ここでの会話はうろ覚えなので、なんとなくこんな感じだと思ってください。

 試合が面白いのは、選手やコーチ、レフリーなど登場人物全員が吹き替なのも大きな理由です。
「肘だ!肘を叩き込め!」
「腕をたぐって引き寄せろ」
「ジャブを入れろ!」
「蹴りもつかえ!」
「あと20秒しかないぞ」
「もぐりこむんだ!」
「立ち上がれ!」
「テイクダウンだ!」
「ガードをあげろ!」
 どっちがどっちのチームの応援なのかさっぱり分からないですが、とにかく熱いです。字幕だったらクロストークの時わけがわからなくなりそうだし、画面に集中できないのでここまで面白くないと思います。

 負けた選手は控え室でタオルを被ってメソメソ泣くところまで曝されてしまい、おちついたところで「だけどこれでオレは諦めるわけじゃねえ。絶対にUFCに出てみせる」と堅い決意を語ります。

 次回の予告では癖っ毛の白人選手が「この痣はヘルペスじゃない!」と言ってたように、宿舎に感染症が発生するようです。本当に目が離せない。言うなれば総合格闘技版ガチンコファイトクラブです。でもこの番組では本当に超一流の総合選手を輩出しているところがすごいわけです。『ASAYAN』の娘。オーディションにも通じる面白さと言ったら分かってもらえるでしょうか。シーズン9から本線に出場したら今よりずっと面白く見れそうなのでWOWOWさん本当にどうもありがとう。