古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

マンガの教室

 池袋コミュニティカレッジという、大人の習い事教室のような、とにかくいろいろな教室のあるところで、マンガの教室をさせていただくことになりました。花くまゆうさくさんも、イラストの先生をしていらっしゃいます。

 オレのは、四コママンガや1ページからせいぜい4ページくらいまでのショートコミックの教室です。マンガと言っても特に内容についての考え方、お話の創作方法、構成についての講座です。絵は、やり始めると時間ばっかり掛かって能力差もバラバラで指導しきれないので、あんまりやりません。何よりオレなんかよりもっと上手な人に習った方がいいと思います。でもご質問があれば個別に時間外などに教えますよ。

・古泉智浩の四コマ・ショートコミック入門
 10月12日より、毎月第2、第4水曜日の夜7時からです。

 次のような挨拶文を考えたのですが、HPにはこんな文章を掲載するスペースがないため、申し込みの案内には添えてくださるそうです。前期の最終回は歌人の枡野浩一さんがゲストで来てくださいます。


【挨拶】
はじめましてマンガ家の古泉智浩です。20年近くマンガ家として活動していて本も十何冊か出しています。マンガが映画になったこともあるんですよ。ギャグマンガ家としては有名ではありませんが、2ページマンガの連載を10年以上続けてもいます。
マンガは絵と物語で構成されていますが、絵がいいから、物語がいいから傑作かと言うと、どちらも売り要素の一つであるとは思いますがそれだけでは足りません。皆さんには作品に込める心についてぜひ考えてみていただきたいと思います。
絵がまずくても、物語があまりよくなくても、作者が本気で訴えかけるものがあると作品としての迫力が全く違っています。悪く言えば、思いや心がしっかり描かれていればそれだけで60点は取れるという法則を僕は発見しました。
作品にどう心を込めたらいいのか、どう表現したらいいのか、それを一緒に考えて練習していきましょう。
とは言っても最初から長い作品を考えても完成しないことには発表もできません。まずは4コママンガや1ページマンガなどショートコミックで練習してみましょう。

?4コママンガを描いてみよう1
・オチを考えてみよう
・3コマ目と4コマ目を考えてみよう
・ネタ出しのワークショップ

?4コママンガを描いてみよう2
・オチから考えてみよう
・みんなで1本の4コママンガを作ってみよう
・ネタ出しのワークショップ

?4コママンガを描いてみよう3
・これまで考えたアイディアで4コママンガを描いてみよう
・他の人のアイディアで4コママンガを描いてみよう
・ネタ出しのワークショップ

?1ページマンガを描いてみよう1
・アイディアを短文で表現してみよう
・コマを割って構成してみよう
・ネタ出しのワークショップ

?1ページマンガを描いてみよう2
・ゲスト枡野浩一さんの短歌を1ページマンガにしてみよう
・枡野さんと一緒にネタ出しのワークショップ

 一応、このような形でカリキュラムを考えましたが、生徒さんの状況次第で柔軟に対応しようと思います。


 特にやりたいのはそのカリキュラムに毎回ある「ネタ出しのワークショップ」なんですよ。生徒の皆さん、三十何年とか二十代の人は二十何年と、日々の生活を積み重ねていらっしゃいます。そのご本人なりの面白味、ご本人には気づいていない面白さもとてもあると思います。そんな日々の発見、人生のどこかの出来事など、料理次第で面白いマンガになると思うんですよね。オレはプロなので、それで何年もやってきておりますので、こうしたらどうですかと提案もできます。また生徒さんは他の人の面白い出来事や考えや見方などをご自信のマンガで表現してみるといった方法をぜひ体験していただきたいんですよ。難しいと思いますか? これ、とても面白いんですよ。

 「ネタ出しのワークショップ」は、誰かの出来事や考えた事などネタになりそうな事を、その場にいる全員でどう料理するとより面白いものになるのかを考えてアイディアを出し合います。各自自分が描くつもりで考えていただきます。自分のアイディアを考えてもらったり、人のアイディアを考えてあげて、アイディアを練り上げる練習にもなるし、自分のアイディアに考えてもらったものをもらうこともできます。その際、単なるダメ出しや否定や批判はNGです。なぜかというと思考にブレーキが掛かってしまうからです。どんどん暴走したり、話が脱線するのもありです。最後にちょっと「四コマでは収まらない」とか現実的に表現が難しいなど注意すればいいのです。ダメ出しも代案がある場合はOKです。

 確かにこの方法は適正があって、ディスカッションしながら進めるので、よくしゃべる人の方が向いています。でも、マンガも表現じゃないですか、人に思いや考えを伝える手段としてマンガもあります。そしてマンガも人を面白がらせる仕事なんですよ。ディスカッションにはマンガで人を喜ばせたり、思いを伝えたり、関心を持ってもらうなんて事と共通するものが絶対にあります。でも苦手な人には無理強いしないので、話したくなったら参加していただくでも全く問題ありません! 聴いて、聴きながら考えているだけでも面白いと思いますよ。

 それで、次回までに四コマなり、ショートなりのネームを描いて来ていただきます。それもまた見せ合って「こうするともっと面白いかもね!」と意見を述べ合います。練習になるので完成原稿でもいいですよ。面白いのができたらコンテストに出しても面白いですよね。



 マンガの編集者さんでもひどい人がたまにいるんですよ。「ちょっとなんかイマイチなんだよね、もうちょっとなんかさー、う〜ん描き直してくれない?」などとぼんやりとしたダメ出しをして新人マンガ家を苦しめる人ですがいるんですよ。それで発奮して猛烈に頑張って大作家に成長する場合もあるでしょう。鳥山アキラさんなんて完成原稿を千枚ボツにされたなんて伝説を聴きます。オレをそれをやられたら殺しているかもしれません。冗談じゃないんですよ。

 無責任なダメ出しでいい事なんてそうそう滅多にあるもんじゃないんですよ。自分が分からないからってボンヤリしたダメ出しされても迷惑この上ないんですよ。テンション下げてどうすんだ。それより、大体マンガなんて描き直してもそんなに劇的に面白くならないです。1割増しになるくらいじゃないですか? それより編集者さんには、マンガ家と対話を重ねてそこで吐き出された言葉から「それ面白いよ!マンガにしてみよう!」という前向きで創造的な提案をすべきじゃないですか。言いすぎですか!すみません!

 オレはおじさんなので当然ですが、ダメ出しされても素直に大喜びで直します!