古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

ひっこめ宮崎駿

 去年『風立ちぬ』という宮崎駿監督の映画で「真にクリエイティブな時間は10年」というような言葉が語られていた。なに言ってんの?と軽く流していたつもりだったんだけど、かれこれ20年以上漫画を描いていて、最近さっぱりなのはそのせいか? でも一番売れていた時期もとっくに10年以上経ったあとなんだけど、でもよく考えると単行本デビューの『ジンバルロック』が2000年で、『ワイルドナイツ』が2009年なのでそう考えるとぴったり。最近は増刷も全然かからなくなってしまったし、それは出版不況のせいばかりとは言えないのでは、要するにオレはもう終わっていたのか今描いてる『悪魔を憐れむ唄』もしょぼく終わっていくのか、と後からずっしり来ておりました。

 

 宮崎監督にしても『未来少年コナン』が78年、『カリオストロの城』が79年、『ナウシカ』が84年、『ラピュタ』86年、『トトロ』88年とまあこの怒涛の快進撃ですよ。その10年が終わったあと89年『魔女の宅急便』……そういうことか!なんて思いました。

 

 そんな戯言に付き合ってられないと改めて痛感したのが、『エルトポ』でおなじみのホドロフスキー監督です。ドキュメンタリー映画『ホドロフスキー監督のDUNE』を試写会で見させていただきすごく元気が出たんです。映画の作風から言って、気難しい芸術家みたいな人物像を思い描いていたら、全然違って、明るくて元気なおじいちゃんでした。80歳を過ぎてなお猛烈に創作意欲を抱いていらして、300歳まで生きたいとまで発言していました。しかも、『エルトポ』を作った時点で40歳で、『サンタサングレ』はそれから20年後、そして今年公開の『リアリティのダンス』もヘンテコでエネルギッシュな映画でした。また、次はとんでもないアクション映画を作るんだと意気込んでいらっしゃいました。映画を作っていない時期は何をしているのかと思ったら漫画原作をしていた。

 

アレハンドロ・ホドロフスキー DVD-BOX

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 宮崎監督の戯言なんか真に受けてへこんでる場合じゃない。あんな引退するって言ったり撤回してみたりしてばっかりいるような暗い人なんかより、ホドロフスキー監督を目指すべきなんです。

 

 オレの仕事部屋には熊切監督に作っていただいた『青春★金属バット』のポスターが、まるで過去の栄光にすがりつく感じで涙ぐましく貼ってあるんですが、それとは別に仕事机の右わきに『エルトポ』のチラシが、4~5年前のリバイバル上映の時にもらったのが貼ってありました。そんなに映画ポスターを貼る趣味はなく、本当によそ様の映画関連ではそれ一枚だったんですよ。砂丘を馬に乗った男が傘を差し、全裸の子供を後ろに乗せて去っていくというビジュアルイメージがすごく好きで、なんならすべての映画の中でも一番のビジュアルと言っても過言ではないくらいです。一番好きな映画かと聞かれたら、まあそうでもないんですが。

  

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 大学の時に、美術研究会の同級生に教えてもらってレンタルビデオで見たんだけど、正直な話、気持ち悪くて内容はあんまり好きじゃなかったです。もっと言えばこんな好きとはバカじゃないのかくらいに思っていました。でも人生と言うのは、世界と言ってもいいですが、好きなものだけで構成されているわけじゃないんです。好きじゃないものとも折り合いをつけて、仲良くやっていくしかない。ざっくりと言えばそんな映画でもあるわけですよ。ちょうど東北大震災の直後にリバイバルで一緒に見に行った友達は「無常を表現した素晴らしい映画」と評していました。そういうことなんですよ。

 

 とにかくホドロフスキー監督にお会いできるということで、そのチラシを剥して持って行きました。大学の時は気持ち悪いと思っていた『エルトポ』や『ホーリーマウンテン』も今ではDVDを買うほど好きになってしまっておりました。これも含めて無常! DVDボックスとチラシを持って、そのためにビームの原稿を早目に仕上げて関越道を車で東京に向かいました。f:id:koizumi69:20140422124042j:plain

  そしてお会いしたホドロフスキー監督は、映画見た明るくて元気と言った印象に加えて、優しくて大きい人!! 持参したチラシとDVDボックスにサインをしていただきました。その模様をタイム涼介さんの奥さんに写真を撮っていただいております。DVDボックスは黒いのでサインを描く場所を迷って、小さい『エルトポ』の空のスペースに描いてくださった。

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 『リアリティのダンス』はすごく変で、特にお母さんが変すぎて面白いし、お父さんはちんこばっか出すし、次回作のとんでもないアクション映画も楽しみすぎるわけです。改めて宮崎監督の戯言を真に受けるのは本当にバカらしいし、宮崎監督ご本人も『もののけ姫』けっこう面白かったからそんなこと言わないでほしい。『千と千尋の神隠し』もよかったよ。

 

 久しぶりに『サンタサングレ』も見たくなりました。

 

 

 

リアリティのダンス

リアリティのダンス

 

  監督の伝記本、3000円もしたけどつい衝動買いしてしまった。