古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

歳を取った気がしない

 先日誕生日を迎え37歳になりました。自慢したいわけでも、強がっているわけでもないのでありますが、実際問題、歳を取った実感がありません。

 30歳で東京から実家のある新潟に戻って丸7年で、生え際は引くほど白髪たっぷりになってはいるものの、体力はそれまで高校以来運動を一切して来なかった30歳くらいが最低だとすると今が人生でもピークで、下腹は若干出ているが、まずまずの標準体型で、顔立ちも28歳くらいの人に見られる。若いときに体力がなかったお陰で体力が落ちるという感覚がない。逆に上がっている。2002年くらいで体重も77キロくらいまで上がったのがピークでそれ以降は70キロか71キロあたりで安定している。外見を売りにしていないし、そもそも洒落っ気もないので、本当に威張っているわけじゃないよ。

 本日放送の『めちゃめちゃイケてる』は岡村が熊田曜子とのスキャンダルをメンバーに謝罪して回るという内容だった。『めちゃイケ』はまだ東京に住んでいる98年くらいから継続して見ていて、初めて面白いと思ったのは『持ってけ100万円』という企画で、矢部が現金の入った封筒を路上に放置して5分間そのまま誰も拾わないと中身のお札が倍になるというものだった。それまでナイナイはどっちかというと嫌いだったのだが、その面白味が初めて分かり、オールナイトニッポンも少ししてから聞き始め、それも現在に至る。
 放送で岡村はメンバーを一人一人尋ね、その際、メンバー各々めちゃイケ10年の歴史を振り返る構成であった。そういえばそうだったなーと非常に感慨深いものがあり、岡村もメンバーも歳を取ったなーと思った。しかしこの番組が継続していること自体が時間間隔をゆがませているような気もした。

 そもそも、ここまでの長寿番組って最近多い。オレが高校くらいの時はもっと番組は短命だった。『めちゃイケ』だけでなく『ぐるぐるナインティナイン』もずっとやっているし、ダウンタウンの番組も長いものが多い。

 テレビ番組の(主にバラエティ番組)制作スタッフが恐らく自分と同世代のせいだと思われ、そのため面白くて仕方がない。今後数年で世代が変わって面白味のセンスが違ってくることだろう。それは既に雑誌などでは起こっていて、楽しみだったサブカル誌『クイックジャパン』などが辛い状況になっている。ライターや編集者さんが自分より下の世代になったせいだと思われる。
 なのでテレビが抜群に面白いと感じているお陰か時代に取り残されている感じもない。(
感じてないだけで、若い人には「終わっている」と思われていたら非常に恥ずかしいのですが……)

 それ以上に、新潟に戻ってから商売に携わったり辞めたりなどはあったのだが、ほぼ環境に変化がないせいか、30から時間の経過した感覚が希薄で、ついこの間まで東京に住んでいたような気がいつまでも今もしている。実際に下北沢に行くと全然店が変わっていたり、前の職場の人に会うと頭髪の薄さに腰を抜かしそうになったり、一緒に働いていた人が亡くなったという報告を受けたりする。高校生だった従姉妹が大学で東京に行って、就職で戻って来たのも、いつの間に?という感じで驚く。
 こういった時間経過を早く感じること自体が歳を取ったことなのかもしれない。結婚も考えたくないし、いつまでもチャランポランにやっていられるのか分からないし、要は変な中年になってしまい、死んだ父にも生きてる母にも申し訳ない気持ちは脇に置き、人生も後半戦なので、あとどれだけマンガを描けるかそれだけを機軸に精進したいものであります。

 先日、お世話になっている編集の人との打ち合わせの時に「いや〜古泉さんは、ほんとにいつまで経っても童貞の気持ちを忘れてない!」と褒められた。「いくつになっても気持ちは不良のまま」もしくは「少年の気持ちを忘れない」というのは幼さを残しながらも感傷的でそれこそ、ロマンチックでもあるのだが、「童貞の気持ち」って無様だ。