古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

鬱々とした映画を見ています

 マンガのネームをやっているのですが、陰々滅々とした内容なので、なんか雰囲気を取り入れられないかなと、またそんな気分に波長を合わせようと、鬱々とした映画をネームの合間に見ています。

『モンスター』監督:パティ・ジェンキンス 主演:シャーリーズ・セロン
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 年食ってもうにっちもさっちもいかなくなった売春婦が、レズの家出娘(クリスティーナ・リッチ)と出会い、彼女を食わすために真面目に働こうとするものの、何の職歴もないために結局売春に戻り、ひょんな事から客を殺してしまったことから、殺人に目覚め客を次々殺しては金を車を奪って暮らすようになってしまった。

 主人公の彼女は不幸な生い立ちで13歳から売春をしていた。なんだかもう本当に気の毒でやっぱり教育って大切なんだなーと格差社会が形成されつつある日本でももしかしたらこんな人が発生してもおかしくないと思った。先日見た『金八先生第2シリーズ』で金八先生は、大学に行かなくともこんなにたくさん稼げる仕事があると言って、高所得の職業を紹介していた。その中にはとび職や左官業などガテン系の職人仕事がたくさんあり、しかも教職はずいぶん下の方として紹介されていた。一番の高所得はパイロットだったが、その下がとび職で、そこからベストテンはタクシー運転手や建設業などずらりと肉体労働が並んでいた。それも25年くらい前の話で現在は全く様子が違って、高所得って銀行やトヨタやソニーの社員で、教師だって相当な待遇でしょ。

 オレにしたって去年はたまたま運良く週刊誌で描かせてもらえたのでけっこうな稼ぎだったけど、今年は未だにまともな原稿料で仕事してないし、例年は200万割れなんて本当にざらで、今年もその例にもれないような気がして仕方がない。今描いてるネームは単行本一冊分で、週刊誌での連載を当てにして最初にネームを全部やってしまおうとしていたところあっさりボツで、これから2〜3営業しようとは思うけど、最悪の場合自費出版だ。『ピンクニップル』は500冊刷ったのをなんとか一年掛かりでぼちぼち完売になりそうで、本当にありがたく、胸をなでおろしているところだけど、自費出版はやっぱりつらい。だったらそんな金にもならない原稿を描かなければいいだろという話なんだけど、思いついちゃったら描かずにいられないんだよね。こんな37歳で将来が不安で不安で仕方がないの! どうしよう……マジで、連続殺人犯になったら来世に響くしな……。

 すっかり殺人がお手のものになった主人公が客の嫌ったらしいデブ中年男を殺そうと目論んでいたら、その男がなんと「僕、こういうの初めてなんです」と童貞をカミングアウト! 主人公はカバンの中に仕込んでいた銃から手を離して、シコシコしてあげると、デブの中年はあっという間に出してしまった。そんななんともやる瀬ない印象的な場面があった。貧乏や売春や殺人も辛いけど、童貞も辛い!