古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

がんばれ!脳性麻痺ブラザース

 新潟のお笑い集団NAMARA所属のお笑いコンビ・脳性麻痺ブラザースが深夜のニュース番組に出ていた。彼らは本当の身障者で、面識があったので興味深く拝見しました。

お笑い集団NAMARA

 脳性麻痺ブラザースの上手に話せないほうの木原さんとは、にいがた映画塾で一緒に自主映画に出た経験があり、その際監督の演出に横から口を出して「こうすればいいんだよ」と上手く動けない体で実演しようとして全く伝わらなかったのがすごく面白かった。

 脳性麻痺ブラザースの歩けない方の周佐さんには、お会いした際に人懐っこい声と笑顔で「友達になってください」と言われ、ひどくうろたえた事があった。オレには健常者の友達もろくにいないのに、身障者と友達づきあいができるのだろうか。健常者ですらよく泣かすこのオレが身障者に対してひどいことをしないでいられるだろうか、そもそも友達とは一体どういうことと彼は捉えているのだろうか、オレとの認識の違いはどのくらいあるのだろうかと一瞬にしてあれこれ考えて、そもそもオレは用事がないと人付き合いをしないので、友達づきあいするのは難しいと答えたような気がする。

 その後、NAMARA主催のマンガについてのイベントで出させていただいた際に彼らも一緒に出演してネタを披露していた。それが全く面白くなくてすごく困った。「手品」と言うネタでは周佐さんが風呂敷を自分にかぶせて「消えた!」と言うのだが全く消えていないという笑いどころがどこかわからない苦しいネタだった。何周かすれば笑えるのだろうかと考えさせられた。テレビで彼らはみんなを笑わせたいと強く強くそれは語っていたのだが、どうにも厳しいとろこが多分にあった。

 それに当時はコンビ名を脳性マヒストラルと名乗っていたのだが、口がうまく回らずなんと言っているのか分かりづらかったので「ポンコツ」の方がいいとアドバイスしたものだった。「脳性麻痺」は譲れないようだ。

 彼らを見た人はまず引くことは間違いなく、素直に安心して笑うことは難しいだろう。踏み絵を突きつけられたような複雑な気分の後で面白くないネタを見せてがっかりされて、でも強い情熱や情念のようなものは激しく伝わるというのが現状ではないだろうか。最近のネタを見てないので、ここでの発言が的を得ているのかどうか分からないのは申し訳ないところで、でもテレビで見た感じでは以前とそう変わっていなかったように思った。ネタが面白くなくて素直に笑ってもらえないのは彼らとしても本意とするところではないだろう。彼らのどぎつい存在感でまず引かれてしまうのは仕方のないところで、そこで身障者がネタをやってその程度かと思われたらまずいわけで、そこは健常者がいじれない部分を抉り出してますます引かせるくらいの事を、下品にならないようにやるのがまずは道ではないだろうか。もしかしたら鬼みたいな健常者をメンバーに加えたらいいかもしれない。本当に面白くなるようにがんばれ脳性麻痺ブラザース!

 芸人でもなんでもないオレが安全なところから好き勝手な事を言うのは申し訳ないことだが、このままでは身障しか売りがなく、こうしてテレビで取り上げてもらっても先が見える感じがして、思うところがあったので作文にしてみました。