古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

DANZEN! 『グエムル 漢江の怪物』面白い!!!

  『グエムル 漢江の怪物』という韓国の怪獣映画を見てきました。
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 自分の原作マンガが公開中の身でありながら、こういう発言は語弊があるかもしれませんが、今年見た中で一番面白いし、これから先あれこれ見るかもしれないけど、この印象を塗り替えられる気がしない。韓流映画はこれまでそれほど見ていないですが、オレが見たのはどれもこれも最高に面白いものばかりでした。『オールドボーイ』『マルクチュ青春通り』『殺人の追憶』……ってなくらいしか見てませんけどね。

 『グエルム』は漢江という日本で言えば多摩川か江戸川に当たるような都心の大河で、そこにある時、怪獣が現れて人を丸呑みにするという事件が起こる。その川原で売店を営む主人公一家がいて、中学生の娘が怪物に食べられてしまう。すっかり死んだと思っていたら生きていることが分かり、一家で救出に向かうというドラマです。

 その怪獣が2t車くらいの大きさで猫のように機敏に動いて、尻尾は象の鼻のように起用に物をつかんだり、更には猿のようにぶら下がって移動もするという実にやっかいな生物で、外見は魚とトカゲを合わせて女性器を口に付けたような感じでした。そんなのが猛スピードで向かってくるから怖いったらありません。

 普通の怪獣映画なら、対策委員会が組織されて軍が動いたり科学者が弱点を研究したりしますが、この映画では川原の売店一家以外に怪物に立ち向かおうなんて人が現れず、怪獣が持っているウィルスを恐れて現場を封鎖するばかりでした。

 この映画の何がいいかって……これから先はネタバレの文章ですので、是非とも見終わってから読んでね!

 ソン・ガンホ(Uターンの土田似)演ずる主人公はトレーラーハウスみたいな川原の売店で自分の父親と娘と暮らしていて、そんなボンクラなので奥さんには逃げられてしまっているのでした。お客さんのスルメの足をつまみ食いして父親に注意されてました。

 うまいこと文章にする自信がないので、よかった点を書き出します。

・怪物に飲まれたけど吐き出されて生きていた主人公の娘コ・アソンの健気なところの可愛らしさ!
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・主人公の妹のアーチェリー選手を演ずるペ・ドゥナちゃんの透明感!! 可愛すぎる!
・主人公の弟は大卒のフリーターで火炎瓶の名人
・おじいちゃん役のピョン・ヒボン(長門裕之似)の勇敢さと無残な死にっぷり
・クライマックスの凄まじい対決のかっこよさ
・娘を死なせてしまうお約束破り

 芸が細かいので、もう一回見たらさらにいくらでも面白いところを発見できそうなので、まだまだ素敵なところはありそうなのです。人類と宇宙人との対決に背中を向けた『宇宙戦争』の不満を解消してくれた気分です。怪獣映画としても平成ガメラよりもしかすると上を行くかもしれません。こうなるとガメラも今一度見直したくなります。主人公に対する感情移入度からすると断然こっちですけどね。

 不満があるとすれば、ウィルス問題が主人公に不自由さを与えるだけになっていて、やや無理矢理くっつけた感があります。ひたすら主人公が川や溝をうろつきまわって面白いドラマを構成していたらなお完成度があがったのではないでしょうか。川原を主人公一家以外に人払いをするには仕方が無いかもしれません。オレにももっといい手段は思いつきません。
 
 とにかく屁みたいな連中が恐ろしい怪獣と戦うというコンセプト自体が完全にオレのど真ん中ストライクで、それだけでもオレにとっては傑作なのですが、更にはかっこいい演出や容赦のない場面構成がどれもこれも最高なんですよ。お葬式の場面なんて完全に笑わそうとして作っているから、韓流ブームで見に来ていた前の列のおばちゃんたちは困っていました。ポン・ジュノ監督はオレと同じか一個下ですが、エリートを活躍させないさ加減や真面目な場面をふざけた場面にするなど本当に素晴らしいです。