古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

最近見た映画

 以前のまとめが10月1日だったので随分空きました。20代の時に見てオレの人生に相当な重大事と思われる作品を改めて見返したところ、印象が随分変わっていてそれが衝撃的でした。また、初見の印象と再見の印象で随分ちがうものもありました。『オールドボーイ』なんてすごい面白くてぶっ魂消て当時年間1位に揚げたんですが、見返してみたら、確かにすごく充実した作品なんだけど、謎の解明でドラマを引っ張る形式じゃないですか、それだと2回目以降不利ですよね。一回目の衝撃が強すぎる分ますます不利なところがあると思います。

 それはそうと、何度もお知らせして申し訳ありませんが今週はオレの自主映画の上映会があります。12月2日(日)古町ブックオブデイズで行います。世界的芸術家で新発田在住の吉原悠博さんが高校時代に同級生と撮った作品と山形の佐藤広一監督がオレのマンガを原作に撮った『透視せよ!タケオ』を一緒に上映いたします。夜8時からです。当日はなんと山形から佐藤監督が来場してくださいます。

・上映作品
「ゾンビの森」(古泉智浩監督)
「夜のしずく」(古泉智浩監督)
「いなほ一号大爆破 ディレクターズカット」(吉原悠博監督)
「透視せよ!タケオ」(佐藤広一監督)

・「古泉智浩、吉原悠博、佐藤広一、自主映画上映会at BOOK OF DAYS」

・最近見た映画
『ヴァージンスーサイズ』(★★★★)
『ラッパー慕情』(★★★)
『シッコ』(★★★)
『ミッドナイトラン』(★★)
『ヘドウィックアンドザアングリーインチ』(★★)
ゴーストライダー』(★)
『インランドエンパイア』(★★★)
『ドラゴン怒りの鉄拳』(★★★)
『かちこみタイガードラゴンゲート』(★)
『ビヨンド』(★)
『スターダスト』(★★★)
未来世紀ブラジル』(★★★★)
『ホテルニューハンプシャー』(★★★)
『ドラッグストアカウボーイ』(★★★)
オネアミスの翼』(★★★★★)
『キングダム』(★★★)
『ヒミコさん』(★★★)
『ゾンビーノ』(★★★★)
『グエムル』(★★★★)
『オールドボーイ』(★★★★)
『ロングキスグッドナイト』(★★★★)
スターシップトゥルーパーズ』(★★★★★)
『インディアンランナー』(★★★★)
『ヘアスプレー』(★★★)
ロボコップ』(★★★★★)
ブレードランナー』(★★★★★)
『サボテンブラザース』(★★★★)
ロストイントランスレーション』(★)
『ボーンアルティメイタム』(★★★)
童貞。をプロデュース』(★★★★)
『ボーンアルティメイタム』(★★★)
フリージア』(★★★)
『エレクション』(★★★)

 20代以来で見た『未来世紀ブラジル』は圧倒的な映像美は、改めて圧倒されたのですが、主人公が大企業のダメ社員のように思っていたのが、実は高級公務員みたいな職業の人でそこにどうにも感情移入できなくなっていました。オレが偏屈になっているんでしょうね。夢に現を抜かしてないで税金で食ってんだから働けよという気分が先行します。

 『ブレードランナー』はクライマックスでルトガーハウアーとハリソンフォードが両者一歩も引かずせめぎ合っていたような印象があったのですが、改めて見ると、ルトガーハウアーにブラスターを弾き飛ばされてから、ハリソンフォードはほぼ逃げっぱなしだった事に衝撃を受けました。なんというみっとものなさ!ますます評価が上がってしまいました。

 『インディアンランナー』は以前見たときは、はぐれ者である弟に感情移入して見ていました。彼女が出産するというのに酒場で暴れてそのままどこかに行ってしまうというあんまりな振る舞い。ところが今回見ると弟にも、それを咎める兄にも感情移入していたのでまた違った見方になっていて、それがまた実によく描かれていて改めていい作品だったのだなと実感しました。

 『スターシップトゥルーパーズ』も10年ぶりくらいで見たら圧倒的に面白かったです。でも心が全然なくて、全てをおちょくったような小ばかにした表現であるところに仰天しました。調子こいている人をコケにするようなのは大好物ですがネガティブと言えばそうなので、『ロボコップ』の方がどっちかと言えばやっぱり好きだなーと思いました。特典付のDVDを買って、おまけの映像を見たところ、携わったスタッフや役者さんのあまりの意識の高さに魂消ました。これだけの気合があってのあの面白さなのだなと思いました。

 『ホテルニューハンプシャー』はこれがオレの人生にもっとも重要な映画ではないかと思っていた時期があって、それほどでもないかもしれないけどやっぱり重要な作品に違いないと思って今回見返したら、案外そうでもなかったです。不幸やトラブルがあってもからっと受け止めて行こうというような心のありようを感じていたのですが、そういう面は確かに読み取れるものの、作品自体ちゃかちゃかし過ぎてるし、オレの苦手な近親相姦などの描写が嫌でした。またしばらくして見たら印象が変わるのかな。

 『ヴァージンスーサイズ』はおきれいなお嬢さんがお耽美に自殺する映画だと斜に構えて見ていたら、なんとびっくり童貞目線の童貞映画であったのでビックリしました。しかもよくできている。女子が抱くであろう男子に対する幻想的な部分をことごとく裏切るソフィアコッポラ監督の冷ややかな目線に冷や汗が出ます。男の射精をした途端それまでの気持ちがガラリと変わってしまうところをひどく辛らつに残酷に描いています。こんなの見抜かれていたら容易にセックスができない。ぞっとする映画でした。