古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『ミスト』を見ました

 『ショーシャンクの空に』、『グリーンマイル』で知られるダラボン監督の最新作『ミスト』を見ました。スティーブンキング原作の怪獣映画でなんでも、とんでもない結末が待っていると評判だったので期待に胸をパンパンに膨らませて見に行ったら、期待が大きすぎたせいか、そうでもなかったな、オチもいい感じでよかったなくらいの印象でした。怪獣映画なら『トレマーズ』の方がバカっぽくていいなとまで思っていたのですが、時間が経つにつれてやっぱり大変面白かったと思い直しました。『ミュンヘン』や『ゾディアック』も見終った直後はあんまりピンと来ていなかったのに後になってからやっぱり凄く面白かったという感想に変わりました。恐竜の痛覚並みに感性が鈍いのが原因だと思います。

 ここから先はネタバレなのでこれからお楽しみにしている人は絶対に読まないで下さいね! くれぐれも申しておきたいのですが、これから見る人は怪獣をあんまり期待しないで、極限状態における濃厚な人間ドラマを見るつもりで行くといいと思います。

 なんで見終った直後の評価が悪かったのかと言うと、期待が違った方向に大きすぎたのが大きな原因だと思います。期待していた怪獣があまり出てこなかったのと、怪獣と戦っている場面があまりなかった。『クローバーフィールド』も軍が怪獣にミサイルを撃ったりしていたじゃないですか、そういうが見たかったです。ドラマの重点がスーパーの中での人間関係に置かれていて、実際怪獣映画としては地味なこと極まりなかったです。異次元空間と繋がって怪獣が出現したとの説明がなされ、ずっこけたわけですが、それに対しての回答がなかった。若手の軍人が責任を感じて首吊り自殺しますが、そこまで気にするだろうかと思いました。

『ミスト』の特に面白かったところ
・虫を食べる鳥みたいな怪獣をモップにオイルを含ませた松明で追い払おうとした人が、オイルのバケツをひっくり返して火達磨になる場面。

キリスト教原理主義のおばさんに、おばあちゃんが缶詰をぶつけるところ。その後、おばあちゃんは薬屋にまで一緒に行くという勇敢さ!

・デブチビメガネのスーパーの店員が射撃の名手。彼の射撃場面は一々かっこいい。

・一番のかわこちゃんが虫に首を刺されて顔の半分が腫れあがって死ぬところ。

・中年なのにマッドマックスみたいな格好のおじさんが、勇気を出したら胴体真っ二つになって帰って来るところ。勇敢な人の多くが残念な結果になる。

 主人公であるお父さんが、なんの落ち度もない極めて正統派な男だったところがちょっと不満です。もうちょっとボンクラだったらより感情移入できたと思うんですが、それだと締まらなくなったかもしれないですもんね。そういうのはオレがいずれ自分でマンガで描きます。