古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

なんですかネームって

 マンガの作業で言うネームとは、原稿に作画をする前に適当ないらない紙に鉛筆でコマを割って雑に絵を描いて吹き出しにセリフを入れて全体的な構成をすることです。この作業が苦手で苦手で、というか嫌で嫌で、苦しいわけです。作業していると脳が沸く感じがして、たっぷり寝ていても眠くなります。オレの白髪の増え方が尋常じゃない事の原因はネームのせいであると思って間違いないです。今日はその作業をしています。今は机を片付けてスタンドの電気をつけたところまでですが。

 ネームの前の段階では、ノートにこんな内容にしようかなと思いついたことを箇条書きみたいにします。それを踏まえて、こうしてああしてと構成して、ネーム作業に取り掛かります。

 多分ですよ、ネームは作業としても負荷が大きすぎるんですよ。映画の絵コンテに似てますが、絵コンテは事前にシナリオがあるじゃないですか。マンガはあまりシナリオを描くってことがないですからね。だから、全体的なページ構成と各ページのコマの構成を考えて、絵を考えて、セリフも同時に考えるって、それは脳も沸いてくるってもんでしょうよ。

 シナリオも小説も、文章じゃないですか。いろいろそれは大変な思いもあると思いますが、でも一貫して文章を書けばいいわけです。オレが一番未だに腑に落ちないのはコマ割りです。最初にマンガを描くときに、いったいどういうつもりでコマを割ったらいいのかさっぱり分からなくて、思い余って適当にやったらなんとなく成立していた。未だにそんな感覚です。それは確かに、横幅が長いのや縦に長いコマが効果的である場合もあります。でもそうやって長い大きいコマを使うと、小さいコマも全部同様に縦長や横長の方が効果的に描ける場合でも、そんなスペースが確保できなくなります。オレはしかたがないかと諦めます。適当なコマでお茶を濁します。紙の大きさには限りがあって、どのコマも好きなサイズで描けないのがマンガなんじゃないですか。変な紙の形だったらできるかもしれないですが、そしたら読む順番がむちゃくちゃになるかもしれないです。4コママンガ2本みたいな感じで、ページを8個のコマで全部貫き通してあったらきっとずっと負担が減るんじゃないでしょうか。

 あとやっぱり事前にシナリオを描けばもうちょっとは負担が減ると思います。それはそれで面倒なんですけどね。中には、ネームなど全くやらずいきなり原稿に一枚目から描きはじめてきっちり定められた枚数で描き終わるなんて天才マンガ家もいるそうです。一体どういう事ですか?そのマンガちゃんと面白いんですか? やっぱり絵と話を同時に考えるなんてどう考えても面倒に決まっているじゃないですか。こうやってオレの精神と神経はどんどん蝕まれていくわけです。

 ネームの最中は面白いとも思えず、全く好きでもない音楽をずっと掛けてます。今日はマッシブアタックを聴いてます。この次はビョークを聴きます。その次はトムヨークのソロ。レディオヘッドもそういうつもりで聴いていたんですが、ずっと聴いていたら好きになってしまったのでネーム中は聴けないです。

 今日は、とある企画で童貞中学生がいかに童貞かというマンガを14枚描かないといけないんです。扉を入れて、見開きを1とすると6セット半です。最近は6ページや2ページしかやってなかったので、まったくなんというややこしさなのだ。ここで結果を出さないと次回がないわけで、半端な仕事でがっかりされたらオレはもうその時点で終わりです。皆さんが引くぐらいな面白いネームを割ってびっくりさせたいところですが、最低でも60点ぐらい、できれば75点くらいは取れるものにしないと本当にまずいです。

 泣き言はこれくらいで仕事します。