古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

マンガ企画『筋トレくん』

 強烈に描きたいマンガがないのですが、それでも商売は継続しないと生活できなくなるので、肩の力を抜いて継続的に描けるようなマンガの企画を立ててネームを起こして編集者さんに見てもらっているのですが、これが全くの不評で困り果てております。『筋トレくん』という6ページのショートコミックなのですが、自分でもそんなに面白くないから当たり前な結果なのですが、でもこれでも戦略があって描いてみたのです。人気のショートギャグマンガってそんなに強烈に面白いわけではないのではないかと、オレなりに分析したんですよ。脱力感があって、ゆるく「ははは」くらいに笑える感じのが売れているじゃないですか。間違ってますか? そういう市場に参入したいのです。オレが頑張って描いてもそんなに強烈に笑えるかと言うと、そうでもないのですが、そのくらいのトーンを狙って描いてみました。

 『筋トレくん』は、体がひょろひょろの高校生が一念発起して筋トレを始めてたくましい肉体の獲得を目指し、ジムで筋トレを始めると、藤田和之みたいなムキムキの男が黙々とトレーニングしていて、さぞ男っぷりもいいのだろうと思ったら、案外気が小さくてびっくりする、というマンガです。毎回筋トレのメニューを題材に、ゆるく面白い感じになったらいいなと3本描いてみました。こうしてあらすじを描いてみたのですが、そんなに面白くなさそうなのが大問題かもしれないですが、これでそこそこのものに仕上げるのがプロの腕だと思っていただきたいです!

 オレなりにマーケティング的な戦略もあるんですよ。筋トレとかフィットネスに関心のある人って多いじゃないですか。それに実際に励んでいる人も相当数います。そんな人たちがまず手にとってくれるんじゃないかと思ったんです。オレのこれまでのマンガが売れない原因の大きなものの一つは、まずその一見さんが手に取らないところにあると思います。単価が高いですし、どんなマンガか得体が知れません。『筋トレくん』なら、その内容はタイトルとほぼ印象どおりです。それで単行本も『THE3名様』みたいな薄いので、安く販売させていただけたらと思うのです。できれば2年くらい連載させていただけたらじわじわと結果が出るんじゃないでしょうか! しかし本を売るどころか、仕事にすらならないのが現状です。

 そんなに面白くないかもしれないですが、まるっきりつまらないわけではないと思うんですよ。見ていただいた編集者さんもお世辞かもしれないですが、そんな感想をおっしゃってくださいました。他の見てもらった人の感想では「いつものマンガとそんなに変わらない」という意見も多かったです。あれ?と思いました。

 なんで筋トレかと言うと、『ワイルドナイツ』で空手を題材にマンガを描いて、その内容がひどい描き方で相当批判されるのではないかと心配していたんですよ。なにしろ空手を、卑怯な暴行の手段でしか描いていないので、空手は弱いものを守るためで、憂さ晴らしに使うなど何事かと怒られると思っていました。ところが、そんな意見はまるで皆無で、むしろ空手を始めてみたくなったという感想をいただきとてもビックリしました。空手家の皆さんも別に不愉快に思ったという話を頂戴しておりません。何かそういう取り組んでいる題材がマンガで扱われている事に対する嬉しさというのがあるのではないかなと思いました。

 マンガ雑誌での掲載でなくとも、最近の流行であるweb連載でも、なんだったらフィットネスや健康雑誌などでもやらせていただければ大喜びでやらせていただきます。ページ数もネームでは6枚ですが、2〜10くらいまでなら対応いたします。2枚だと原稿がまとまるまで大変かな。自費出版で描くほどの根性はないし、自費ではそもそもあんまり売れるような内容でないんですよね。

 強烈に面白かったらいいのかな。それはそれで読者さんを選ぶような気もするし、そもそもそんなに矢鱈と描けないですもんね。まいったな。こんなのに構ってないで、ご依頼をいただいているギャンブルマンガを頑張らないといけないのです!