古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

映画上半期ベストテン

 映画系のブログでみんなやってるのでオレもやります。今年は楽しみな映画なんて全然ないなと思っていたら、どんどん出てくるので嬉しい悲鳴をあげております。それでも見逃した映画もあって『ミルク』とか、DVDで見たいなと思っています。新潟ではTジョイでの上映で、あそこは駐車が面倒で行くのが億劫なんですよね。でも『ミスト』も『ノーカントリー』も上映してくれたありがたい映画館なので、積極的に足を運ばないといけないのです。次からは気をつけます!

○2009年映画上半期ベストテン

1位 『スラムドッグ$ミリオネア』
2位 『レスラー』
3位 『ウォッチメン
4位 『グラントリノ
5位 『チェイサー』
6位 『エヴァンゲリオン新劇場版・破』
7位 『SRサイタマノラッパー』
8位 『ザ・バンク−堕ちた巨像−』
9位 『チェ28歳の革命』
10位『ワルキューレ
次点『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

 傑作ぞろい過ぎて順位をつけるのが苦しい。去年はもっと気楽にできた。アカデミー賞作品を1位にするのも本当に芸がないですが、ストーリーがとても面白かったです。クイズに答えるたびに悲しい思い出が蘇るというのもひどく皮肉で面白い図式でたまらないものがあります。難を言えば主人公が普通の男なところですが、同情させたいタイプの話だし、あまりに飛ばしすぎてもストーリーの面白さが阻害されるかもしれないです。役割としては充分です。お兄ちゃんがその分クレイジーでよかったです。

 『レスラー』はダメ男映画としても殿堂に入れないといけないかもしれない程の素晴らしさでした。オレ認定のダメ男映画ベスト3は1位『マイアミブルース』 2位『リービングラスベガス』 3位『蜘蛛女』です。レスラー引退を決意して元気に肉を売っている時の、無理矢理なポジティブ感がまた切なかったです。うるせえババアに滅茶苦茶愛想よくしていたのがすごくよかったです。

 『ウォッチメン』はこれもまた、本当にストーリーが残念で、友達のマンガ家が話していたのですがこれは、オジマンティアスがキチガイで、わざわざあんな突拍子もない計画を、人類最高の知能の男が真剣にやるとは思えない綱渡り性の高い計画を、あえて実行して喜んでいる変態だったら成立するよ!と言っていまいた。なるほど!!と思いました。ザックに教えてあげたかったな〜。それらを差し引いても、よかったです。これもね、ダメ男ヒーロー映画なんですよ。特にコメディアンとナイトオウルとロールシャッハがよかったです。ヒーローなのにビターな感じがとてもよかったです。中でもコメディアンが一番好きですが、冒頭で死んでしまい、回想でしか出番がないのが残念でした。スピンオフ作品にして欲しいです。

 『グラントリノ』が1位でも全然いいくらい良かったです。あえて順位が下がった理由を考えると、70歳の老人に共感するにはまだオレは早いかなといったくらいの理由です。世代的な問題です。60くらいになったら見返して、今後の死に様を検討する際に参考にしようと思います。命の有意義な失い方は重要な問題だと真剣に思います。

 『SRサイタマノラッパー』もすごくよかったです。同時期に『ハッスルアンドフロウ』も見て、日米の違いが浮き彫りになったのですが、なんというみっともなさ、わびしさ、半べそかきながらの食堂でのラップシーンは、なかなかここまで描ききれるもんじゃないという凄まじさでした。現役のラップを愛好する皆さんに怒られるのではないかというくらい等身大すぎるんじゃないかと心配です。

『ザ・バンク−堕ちた巨像−』
 すごく地味なおじさんの殺し屋がとてもよかった。こんな真面目そうな人がいったいなぜ?という人生の裏が知りたくなるような感じであった。また美術館の銃撃シーンは本当に興奮しました。『消されたヘッドライン』も殺し屋がとてもよかったです。