古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

心霊ドキュメントあれこれ

 『パラノーマルアクティビティ』をきっかけに心霊ドキュメンタリーの映像作品を何本か見たのでレポートしたいと思います。総評として感じたのは、心霊ドキュメンタリーはあんまり怖くないという事でした。Jホラーってすごく怖いじゃないですか、『呪怨』なんて呼吸が困難になるほど怖くて怖くてそれ以来あんまり見ない方針を貫いておりました。怖いホラー映画は苦手なんですよね。余談ですが、これまで歴代怖い映画1位はリメイク版の『テキサスチェーンソー』です。

 こんな怖いの苦手なオレでもそんなにビビらずに見れました。今回は特に評判の高かった次のDVD5本とたまたま見た映画です。なるべくネタバレしないようにしますが見終わってからお読みいただきたいと思います。

『怪談新耳袋 怪談実話ドキュメント』
『本当にあった呪いのビデオ リング編』
『オカルト』
『怪談新耳袋 殴りこみ』
『怪談新耳袋 殴りこみ2』
『フォースカインド』

・『怪談新耳袋 怪談実話ドキュメント』(恐怖度★★)
 ドキュメンタリー監督の村上賢司さんご本人が新耳袋で紹介された2つの実際の事件を調査します。京都にある幽霊マンションとそこに現れる「みさお」という女の霊について、現地まで行って地域の周辺や物件の情報や地方紙などをくまなく調べます。そこで浮かび上がる意外な事実が……といった内容でした。さすが村上監督、ぐいぐい興味をそそられて引き込まれます。関係者へのインタビュー取材も面白かったです。村上監督のナイトモードの顔がとにかく怖かったです。

・『本当にあった呪いのビデオ リング編』(恐怖度★★)
 投稿されたビデオに「消えろ」という音声と映像ノイズの人影があると、その映像に映っていた人が自殺してしまうという現象を調査する内容でした。途中で調査対象の一家がレポーターの女の子を拉致してしまいちょっとした事件になり、調査先に現れる謎の帽子の男の正体とは……。一家がみんな怒ってしまって雰囲気が最悪でした。霊や現象の正体には特に迫っていなかったです。

・『オカルト』(恐怖度★)
 奇跡体験がしょっちゅう起こるというネカフェ難民日雇い派遣社員の男の密着ドキュメントです。特に心霊現象ではないような不思議な現象が起こる一方、男がけっこう厚かましい性格でスタッフの女の子とすごく仲が悪くなってしまい雰囲気がとにかく悪いです。また下流社会的な現実の厚みが感じられる作品です。最後はとんでもない事になって興奮しました。怖い場面はさっぱりなかったですが、とても面白かったです。

・『怪談新耳袋 殴りこみ』(恐怖度★★★)
 映画秘宝スタッフ陣と新耳袋スタッフ陣が協力して、実際の心霊スポットに体当たり取材をします。目的は霊を映像に記録するという事で一貫しています。お払いやお守りなどを身につけず、霊をなるべく挑発するという本当に恐ろしい自殺行為をしているので魂消ます。すると狐火などを本当に撮影に成功します。また、心霊以外の謎の施設「山の牧場」などもとても恐ろしい存在感を放っていてドキドキしました。この作品は、書籍版もあって、それを以前に読んでいたのでまた興味がひとしおで、ギンティ小林さん、田野辺編集長、豊島圭介さんなど知っている人がやっているというのもグイグイ来るところでした。ちょっと触っただけでバチが当たるというオメコ岩にギンティさんが体ごともぐりこんで、本当に体調が悪くなるというエピソードが書籍版にはあったのですが、映像にはなっていないのが残念でした。

・『怪談新耳袋 殴りこみ2』(恐怖度★★★)
 こちらも書籍版があってそっちはまだ読んでいなかったのですが、それでも充分面白かったです。今回は本当に霊の撮影に成功という快挙を達成していました。特に怖かったのはOホテルで百物語をして渡り廊下を歩くと霊に出会うと聞いて、それを再現してみるというエピソードでした。その渡り廊下が本当に恐ろしい雰囲気で、絶対に泊まりに行きたくないホテル第一位です。元々オレはホテルがちょっと怖くて、壁の額縁をめくるとお札が目一杯貼られているなんて話をよく聞くじゃないですか、だから絶対に額縁を裏返す事ができません。深夜に心霊スポットのトンネルを順番に自転車で走るのも本当に怖かったです。それから、ゲームセンターの上の階に現れる女の子の霊を順番に各自ナンパをするというのは、まず本当に大変怖い場所で、なのにふざけていて、それが逆に不謹慎で霊の怒りを買いそうで怖いというねじれた状況になっていて特に面白かったです。

・『フォース・カインド』(恐怖度★★)
 心理学者の女(ミラ・ジョボビッチ)が謎の記憶障害などの怪現象をカウンセリングで解明を試みると、患者達がパニックを起こしたり靴中浮遊をしたりして大変な事になります。実際の映像と再現映像ドラマを並列したりといった一風変わった演出がなされていました。結局霊ではなくて○○人でした。散々な評価だったので思っていた割には面白かったし、あんまり怖くなくてよかったです。

 こうしてあれこれ見ましたが、「オレは童貞じゃねえ」認定心霊ドキュメント大賞は『怪談新耳袋 殴りこみ2』に捧げたいと思います。何より恐怖に対しての踏み込みが前作よりも鋭くなっていて驚嘆しました。絶対に真似をしたくないです。