古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

小林まこと先生にお会いした

 9月2日にマッスル坂井さんと新潟プラネットに漫画家をお迎えするトークイベント『マンガ道』で、念願の小林まこと先生にご出演いただきました。小林まこと先生と言えばオレが小4の時に『1・2の三四郎』を読んで以来の大ファンで、同じ新潟出身の漫画家としても大先輩なんてものではなく、新潟産んだ大天才漫画家です。新潟はそもそも漫画家を多く輩出しているんですが、その中でもトップ中のトップ、他の漫画家先生にも偉大な方は確かにいっぱいいます。しかし、ダントツ大天才、講談社漫画賞2回受賞されてますが、オレにはそれだけでは評価が全く足りてないと思うんですよね。県民栄誉賞を受賞すべきです。国民栄誉賞でも問題ありませんが!

 オレも漫画家として20年くらいやってるわけです。と言っても30過ぎて本が出るまでは自称漫画家レベルでしたが、本が出て初めて「あ、オレ今までいないも同然だったのか」と気づきました。それまで一端の漫画家気取りでした。今や自費本出しても出版社で本を出していただいても収入はあんまり変わらないくらいなんですが、自費本だけだと素人と変わらないので一応プロだと名乗る上でもオフィシャル本は出してないといけないんです。次の本の予定は一切ないので不安でしかたがありません! 近刊は『ライフ・イズ・デッド』の再発なので本当に心細いんです。

 『ワイルド・ナイツ』が終わってからショートコミックの漫画家になろうと努力していたんですよ。それ以前にもやらせていただいていて、『FAKE』『1984』がそうなんですが、『ワイルド・ナイツ』終わってからそれらの連載も立て続けに終わってしまって、今は2ページの連載が3本あります。そのうち一本は隔月だし、全然生活できるレベルじゃないんですよね。それらが週刊連載だったらいいのか?と言えば、実に助かります! けっこう面白いのを毎回描いている自信ありますよ!そうでもない回もあるかもしれないですが、そういった回の次はちゃんと面白く挽回するように頑張っております。

 一昨年の両足骨折の時に、仕事が激減して中野にアパートを借りて営業活動も含めてあれこれしてました。お陰で仕事もちょっとずつ増えて連載は細々としたのが多いですが8本あるんですよ。漫画教室もやらせていただけていよいよ2年目に突入です。イベントにもあれこれお誘いいただき、自主映画活動も広がっております。関係あるかないか分からないけど映画化、映像化2本ありました。中野アパート作戦は大成功と言える成果だったんじゃないかな。一時期漫画の所得は200万を切る勢いでしたが、去年はちょっと増えました。しかし、アパートの家賃と交通費と妻の小遣い5万円が痛くて貯金がどんどん目減りしていました。完全な自転車操業で、今年は妻の小遣いを3万円に減額させてもらいました。それでも順調に貯金は減ってるんですよね。来年の収支計算が怖い! こんな状況にありながら、お世話になってる会社に出資もしたので〜元気で働けてるうちはいいかな! 困ってる時はお互い様!なんてね。せめて300万になりたい! 交通費と家賃で大体100万円掛かっているんですよ。

 話を小林まこと大先生に戻しますが、小林先生と同じ新潟出身漫画家なんて名乗るのも恥ずかしいくらいの存在ですよ!オレは! ゴミ虫レベル!! それでもまあ小林チルドレンはチルドレンじゃないですか。オレが漫画家になったのは『1・2の三四郎』に胸を熱くした経験が土壌にあるわけです。今回トークイベントにご出演いただくに当たって作品を、三四郎中心に『柔道部物語』などなど読み返しました。最近読んでなかったのもあるんですが、最新の長谷川伸シリーズも素晴らしくて、全く持って改めて感動してボロ泣きしました。小林まことを読んでいたのは間違いじゃなかった! オレの漫画のお父さんは小林まこと、お母さんは大島弓子と常々言って来たんですが、本当にその道、正しい道でした。

 小林先生は日本一の男を一貫して描き続けて、ご自身も漫画界のトップに君臨されていらっしゃいます。ところがオレは取るに足らない屁みたいな人間を描いてこの体たらくですが、一貫して面白い漫画を描き続けようという志は抱いております。廃業寸前なんて時期も、今もそうかもしれないですが、度々訪れるわけですよ。ところがオレの屁みたいな男の漫画を、小林まこと先生は「そういう人が描きたくないものを描くのも大事なんだよ。面白いから大丈夫」と太鼓判を押してくださったわけです! 漫画家でよかった!!! 漫画家になっといてよかった! 漫画家じゃなかったら小林先生にお会いする事もなく終わってたかもしれないじゃないですか。実物の小林先生が、これがまた素敵なおじさまで、本当にかっこいい!その上お優しくいらっしゃって、人間としても目指すなら小林先生!

 そんな小林まこと先生と対談させていただいた模様がKAMINOGE10号で掲載していただいております。これもマッスル坂井さんのお陰!本当にありがとうございます! 対談のすぐ後ろにオレのコラム『客観的判断』も掲載していただいております!感無量!!




 今、オレはそんな小林まこと先生が極秘でやっていらっしゃるバンド演奏を見に行ったりもして、メール交換もしたりしているんですよ!!! 光栄の極み!! いきなりラスボス戦を迎えてしまった新潟プラネットのマンガ道は2回で終了で、漫画教室をさせていただく事にしました。

 そういうわけで、ここ何年かショート漫画家を目指して活動していて、読みきりや長編企画も考えたりネーム描いたりもしていましたが没のラッシュで、もうダメかな〜なんて諦め掛けてもおりました。しかしオレはこれから先も、超面白い漫画をたとえさっぱり売れなくても描いて小林先生に読んでいただきたい、そしてゆくゆくは小林先生の連載している雑誌で一緒に連載させていただきたいという大目標ができました。「思い上がるな!」なんて意見もあるかもしれませんが、目標なんだからどんな目標だって勝手に持ったっていいじゃないか! 売れるのはもう諦めたんだよ! 売れようが売れまいが、胸を張って面白いの描いたぞ!と言えるようなのを描きたいんです。小林先生も漫画を描くモチベーションを「ただただ傑作が描きたいだけ」とおっしゃっているんです。その姿勢は積極的にパクりたいと思います。

 なので、これからはイベント事はなるべく第2週と第4週の漫画教室のある日程だけにして、それ以外は新潟で漫画を描くことにします。イベントもオレが漫画家だから呼んでもらえているんであって、ロクに漫画描いてなかったらそのうち呆れられるに決まっていますからね。