古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

アックス忘年会

 先日、お世話になっているアックスの忘年会で、幹事などという大役を仰せつかりました。去年の忘年会のクジで決まったんですが、一緒にやるはずの西岡兄妹のお兄さんは物凄く嫌そうで、これは当てにならないと一人でやる覚悟だったのですが、川崎タカオさんが幹事でもなんでもないのにご協力を申し出てくださいました。アックスあってのオレであり、アックスの編集部の皆さんの労をねぎらい、これからの世代の作家さん達に目配せして、今後今以上落ちぶれたら仕事を回してくれるように媚へつらっておくことが最大の目的でもあるわけです。

 

 なので、こうして年末の貴重な時間を割いていただく以上絶対に楽しんで帰っていただきたい。来たことを後悔させたくない。予算もなるべく安くしてあげたい。一人でも長時間黙り込んでいたり、携帯をいじったりする人がいたらオレの負けである。そうならないよう川崎さんにも協力をお願いしました。

 去年は景品がくじ引きで、それはそれで大変面白かったのですが、やっぱり忘年会ならビンゴでしょ。景品は、うちにある大量のエロDVD。サン出版でもらったものとオレが趣味で買ったものですが、それに何か本当にもらってうれしいものを東京で買ったらいいかなと思いました。当日、お世話になっているタコシェさんに行くと名作SF映画のDVDが500円で出ているので3000円分買いました。みんな作家なんだし、こういうのちゃんと見ておいた方がいいです。安く上がってよかった。

 5時に新宿で川崎さんと待ち合わせして、喫茶店でドンキで買ったビンゴの玉をフレームから外す作業や、景品に番号を貼り付ける作業をしました。そんなのはすぐに終わって腹が減ったのでロッテリアで軽く食事しました。

 7時半集合だったのでちょっと早めに待ち合わせ場所に行くともう4人集まってました。誰が来る予定なのか、書き付けたノートを忘れて来てしまい、よくわからなくなり、後はだれだっけと川崎さんとうろ覚えの記憶をつき合わせ、ようやく確認できました。人数が足りなかったらその場合の会費はオレが持たないといけないのだろうかとドキドキしましたが、最終的にはみんな来てくださいました。よかった。最後に誰が来るのか現場で待って会場に向かおうとすると、そのビルのエレベーターが大変な混みようで先発隊がまだ待ってました。エレベーターに乗り切れなかった人とエスカレーターと階段で会場に向かいました。

 会場に入ると誰よりも出世が早かったのに、現在休業中のマンガ家じぇんじぇんが枡野浩一さんと大西祥平さんに挟まれ、正面には花くまゆうさくさん、その両隣が川崎タカオさん吉田豪さんという超豪華席に居るのが衝撃でした。じぇんじぇんはビンゴでも1等でした。じぇんじぇんは自分の不運ぶりをいつもネタにしているのに、こんな幸運に恵まれ、2007年は死んでしまうんじゃないかと心配です。

 会話もなく黙り顔で、居辛そうにしている人が約三人点在していました。彼らは固めればそれで済むかと言えばそうでもないだろうし、なるべく自立を促す方向で、隣あっている人にオレが「この人はこういう人で、こうなんですよ」と紹介するようにしたつもりだったのですが、あんまりうまく行きませんでした。しかもそれが、アックスにあんまり関係ないのにオレがなんとなく誘ったような人でもあり、申し訳なかった。そこを巡回しようと思ったのですが、こっちはこっちであれこれ気も散るし初めて会う人もいるしで、もっとうまい方法があったはずです。

 そうこうしているうちに開始1時間後にビンゴを始めました。なかなかリーチが掛かる人もビンゴがそろう人もいなくて大いに盛り上がらないビンゴでしたが、じぇんじぇんのビンゴを皮切りに連発し、うまい具合に女性にはエロDVDが行き渡らず、ゾンビ好きの人には『ナイト・オブ・リビングデッド』が当たるという神の展開で、そこそこ楽しんでいただけたのではないでしょうか。最後の景品が外れのエロDVDだったので最後が丸っきり盛り上がりませんでした。このビンゴには罰ゲームがあって、ある景品には来年の幹事が当たる仕掛けになってました。今回はアックス以外の人も多かったので、保険で4人に幹事の当たりを入れてました。タコシェの中山さんにも当たってしまったのですが、アックスの後藤由香さんと田中六大さんも当たっていたので、座りのいいところに収まりました。ビンゴとビンゴカードも来年に向けて贈呈しました。もう持ってても仕方なく厄介払いなんですけどね。

[教訓]ビンゴの最後の景品はいいものを残しておいた方がよい

 居酒屋の天狗さんにお世話になったのですが、コースの料理を一品出し忘れていたとの事で、開始が大幅に遅れた事もあり、もうその時点で2次会がスタートの時間でした。どうにかキャッシュバックにならなかとお願いしたのですが、それは無理とのことで、しかしよくよく考えるとわずか3000円で飲み放題のコースを設定してくださり、普通においしい料理も提供してくださる天狗さんにそんなにゴネたりしたらバチが当たると言うもので、こんど何かサービスしてくださいと言って退出しました。オレは居酒屋では天狗が一番好き! 安くておいしい。皆さんもどうぞご利用ください。

 編集部の皆さんの大半は2次会からの参加で、ところが2次会は1次会との会場が遠かったせいもあり、本来の開始時間に40分の大遅刻、手塚編集長を始めとした編集部の皆さんを水だけで待たせるというひどい扱いをしてしまいました。

[教訓]忘年会の1次会と2次会の会場は近い方がよい

 2次会はなんだか疲れてしまって、吉田豪さんの近くに座った時に、芸能の面白い話をあれこれもっと聞けばよかったと今更にして思ったり、なんの知恵も働きませんでした。大西祥平さんに自分のお礼とアックスの作家は本当にみんなお世話になっている事を申し上げました。オレが一番最初に活字でマンガを取り上げていただいたのも大西さんで、オレはもう中年ですが、アックスの若手作家をこんなにも取り上げてくださるマンガ評論家は他に誰もいません。

 2次会は会費を編集部が3万円ものお金を出してくださったので、信じられないくらいの安さとなりました。40分間水だけで待たせるという手ひどい拷問のような扱いをしておきながら、こんなに良くしていただくとは、まったく申し訳ありません。3万円も出して会社がつぶれないか心配です。どうにかもっと立派になっていつか出資ができるようになりたいものであります。

 最後まで幹事を手伝っていただいた川崎さんに最大限のお礼を述べつくしていたのですが、何か言い忘れているような気がして、なんだろうと、それこそ5時に新宿で待ち合わせして、喫茶店でビンゴの景品の仕込をして、ロッテアで今年見た映画の話を延々だらだらして、会場の前で待ち合わせをして待っている最中、いくらでも言う機会があり、なおかつ何か会ったら言おうと思っていた事を、2次会で幹事のクセに先に帰る時にようやく思い出しました。

 「今回のアックスのマンガ、構成が画期的で、それが素晴らしく効果的ですっごく面白かったですよ!」

 「それ今言うことですか!」と川崎さんも困っていた。