古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

さよならミラノ座『インターステラー』

 新宿歌舞伎町の巨大映画館ミラノ座が50年の歴史に幕を閉じるとのことで、せっかくなので現在上映中の『インターステラー』を見て来ました。『インターステラー』は新潟のTジョイで一度見て、非常にしみじみしたので、ミラノ座の最後で感傷に浸るのにちょうどいいなと思いました。

 

 ミラノ座と言えば、記憶では『ブレードランナー』のリバイバル上映、たしかディレクターズカット版や『七人の侍』のリバイバル上映を、90年代に見たような気がします。他にもいろいろ見たかもしれないし、『ブレードランナー』はミラノ2だったかもしれないし『七人の侍』も違う劇場だった可能性もあります。正直言って、見た映画館なんかいちいち覚えてないですね。そんなことを言ってしまうと台無しなのでミラノ座で見てとても感動したと自分としても思いこみたいわけです。

 

 それでミラノ座に来ることもこれが最後だろうと思って見た『インターステラー』ですが、クリストファー・ノーラン監督の悪い面がいつもより控え目で、面白い映画だったな~と思った一度目と違って、いろいろ腑に落ちない点が見えて来て感傷に浸りたかったのにモヤモヤしてしまいました。

 

 ここからネタバレします!! 見てない方は読まないように!

 

・一回目の感想


「しみじみとした味わい」インターステラー 古泉智浩さんの映画レビュー(ネタバレ) - 映画.com

 

 クリストファー・ノーラン監督と言えば、独自ルール問題がいつもあるわけです。オレが認定しているだけですが、とにかく主人公に困難をもたらすために、独自の世界で独自に通用するルールが存在して、それに主人公が挑まなければならない状況です。『インセプション』では夢には何層もあって、その層が深くなればなるほど大変になるとか、そういうのが当たり前みたいに語られます。ある人物の夢にエージェントが何人も入って行って、夢のなかをいじくることで、その人物に特定の行動をさせるというのが目的です。そんなルール知った事ではないし、この世界には催眠術という便利な技術があることを無視してそんな世界観を語られても、付き合いきれないとしか思えない。『ダークナイト・ライジング』でもバットマンが穴を這い登らなければならない理由に独自ルールを感じた。

 

 とにかく、なんでノーラン監督が勝手に考えた世界の困難に主人公が頑張って挑まなければならないのか、それを応援しなければならないのか、ノーラン監督のさじ加減だけの問題なので、主人公を応援するより、ノーラン監督に文句を言った方がはやいじゃないかと毎回思う。

 

 『インターステラー』もノーラン監督のさじ加減で決定されている、宇宙での時間の流れ問題が一回目に見た時も気になったのだが、2回目はますます気になった。黒人の宇宙飛行士が波の惑星で宇宙船で23年も待たされて、すっかり初老になっていて、なんでコールドスリープしなかったのかと聞かれて「帰って来ないと困るから」と力なく答えていてとてもかわいそうだった。でもその問題は主人公が自分の娘と再会した時に老衰寸前のおばあさんになっていたのがとても切ないながらも、親子の深いつながりが感じられてよかった。

 

 それより気になったのが、決死の覚悟でブラックホールに飛び込んでそこで測定した結果を伝えて、娘がだれも解明できなかった数式を解いた問題だ。その数式がその後なんの役に立ったのか何も描かれていなかった。数学や宇宙に人生のすべてを掛けてそれまで恋愛もしたことなく45歳くらいになるまで多分処女だったんじゃないかな、そんな彼女が大喜びしてキスまでしたのにその後それがどう役に立ったのか不明だった。

 

 あと、未来人だか宇宙人だか、未来宇宙人だかが、主人公のマシュー・マコノヒーと娘を連絡させようとして、娘の自室の本棚の裏に行かせてくれる。そこで特定の本を落としてモールス信号をしたり、バイナリという何かの暗号を伝えたりする。宇宙人だか未来人、だったら部屋の内側に案内しろよ。なんだそのいらない苦労!と思った。

 

 それも全部ノーラン監督の、数式とかブラックホールとか相対性理論とか、モールス信号とかバイナリとかオレが知らねえと思って小難しいのをちらつかせてバカにしている感じがした。どうせ分からねえよ。客をバカにすんじゃねえ!

 

 ノーラン監督映画は気になるところがあったとしても、1回でやめておいた方がいいと思います。『ダークナイト』だけは何回見ても面白い。

 

 そういうわけでせっかくの最後のミラノ座だったのに全く感傷に浸るどころかモヤモヤが残った。その後、歌舞伎町の入り口のセブンでお金をおろそうとして前の人を待っていて、その間に財布からカードを取り出していたら、前の人がけっこういろいろやっていて長くて、ノーラン監督に小ばかにされている感じにイライラしていたら無意識のうちに財布をポケットに戻していた。順番が来てキャッシュディスペンサーで財布からキャッシュカードを取り出そうとしたらカードがない。オレのカードはクレジット機能も付いたカードなので人に盗られたら大変な事になってしまう。考え事をしているうちに手を滑らせて落として財布だけポケットに戻していたのだろうか。場所が歌舞伎町なだけに回りの人が金に困った風俗嬢やポン引き、食い詰めたホストに思えて慌てて銀行に連絡してカードを止めた。幸い使用された形跡がなく安心した。しかし財布には千円しかお金がなくて心細い気持ちになった。

 

 翌日は小学館の忘年会だったのだが、お金もないしその次の日は猛吹雪になるとの予報だったし、銀行に再発行の手続きに行きたかったので忘年会をキャンセルして新潟に帰った。部屋着のフリースを着たらポケットにキャッシュカードが入っていたのだった。ノーラン監督のせいでとんでもない目に会ってますます嫌いになった。