古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

『プラネット・テラー』と『ゾンビーノ』

 10月27日から都内で上映となる『ゾンビーノ』という映画にコメントを依頼していただいて、サンプルのDVDで鑑賞しました。これが大変面白いゾンビ映画でしたので、もうすぐ公開なのでぜひ御覧いただけたらと思います。

・『ゾンビーノ』公式HP

 主人公のいじめられっこの男の子が、召使のゾンビと仲良くなるという心が温まりながらもグロい場面が満載のとてもいい映画でした。まだ公開前なので、今回はネタばれできません。

 それから、ロバートロドリゲス監督の『プラネット・テラー』を見てきました。これまたすごく面白くビックリするような場面が満載でとてもよかったのですが、どこかバランスの悪さを感じそれは一体なんだったのか、ちょっと考えてみました。ここから先、ネタばれなのでこれから見ようという人は絶対に読まないで下さい。

 そもそも『グラインドハウス』の『デス・プルーフ』との併映で、要するに意図的にB級作品であり、オレが気にしている事は全く的外れである事は間違いありません。

 どの登場人物も一癖も二癖もありそうな魅力的な人ばっかりで、そんな人らが、ゾンビになったりゾンビと戦ったり殺し合いをしたりして、こんな場面が見たかったというようなのや、初めて見てびっくりするような場面が満載で、お腹一杯楽しい映画です。2時間の上映時間が本当に短く、あと30分長くてもよかったとすら思いました。

 一緒に行った友達も大満足で、00年代で最高だと言うのですが、どうも心から同意ができない。どこかそこまで言い切れない部分があるんですよ。心から楽しめなかったのかというと、若干そういう面がある事に気づきました。

 例えば、ブルースウィルス率いる、どこかの軍が口にマスクをして常にガスを吸っている。それは人々をゾンビ化する化学兵器のガスを吸ってしまい、ゾンビにならないためにガスを吸い続けなければならないんです。これって、すごくよくできてる面白い話じゃないですか。何か出典があるのかもしれないですがとても面白いと思いました。ところが、彼らは初めと終わりに出て来て主人公チームと戦うだけであんまり見せ場がありません。

 主人公の解体屋の男は、謎めいた過去があるようで、銃やナイフ、格闘技に滅茶苦茶強くかっこいいですが、過去についてはリールの紛失で語られずじまいでした。彼の恋人はゾンビに足を食われ、義足代わりに銃を足に取り付けてゾンビと戦います。この二人が主人公なんでしょうが、他の登場人物も面白い見せ場があるためか、出番が思ったより少なかったです。映画を見る前はてっきり初めから足に銃を備えた女が主人公で、ものすごい執念で復讐したり何かするのかと思っていたので肩透かし感がありました。

 ヘリが低空飛行をしていて、なんでこんなに低く飛ぶのかと思っていたら、ヘリの羽でゾンビの首をピュンピュン飛ばしていました! 

 こんなに面白くなりそうなアイディアが盛りだくさんなんですが、敢えてそこは盛り上げずB級でよしとしているような感じがあります。S級のエンターテイメントになりそうなのに、できるのにしていない。主人公が物語の軸になっていないところが大きな原因じゃないでしょうか。『ターミネーター』や『ロボコップ』、『エイリアン』級に面白いSFアクション映画になる可能性があったのに放棄しちゃってる感じがします。

 ロドリゲス監督が「こんな映画ならいつでも軽く作れるんだよ、ハハハ」なんつって笑ってそうな、肩の力の抜けた感じがいいのかも分からないんですが、この題材だったらオレとしてはもっとギチギチに気合を入れて作った映画が見たかったです。その点タランティーノ監督の『デス・プルーフ』は言いだしっぺらしく、グラインドハウスらしいバランスの作品だなと思いました。