古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

深町秋生さんの新刊『ダブル』

 山形在住のバイオレンス小説家、深町秋生さんの最新刊『ダブル』を読み終えました。これまでの著作は全部読んでますが、前作『東京デッドクルージング』も野良犬感がたっぷりで良かったですが、今作は主人公がおじさんなので野良犬度合いが余計に煮詰まった感じがして、中年のオレにはかなりグッと来ましたよ! これまでの著作で一番面白かったと、読み終わった直後で興奮しているのもあるけど、断言します!

 潜入捜査ものという内容を事前に聞いていたので、ほほうと思って読み始めるとそんなのすっかり忘れてヤクザものとして楽しんでいたら途中から、なるほどそうなるのかと、物語としてはよくあるけど、実際問題そんなのあり得るのか?とつつきたくなるような設定を実に丁寧に仕掛けて描写しているのがすごくよかったです。あんまり描いちゃうとミステリー的な面白みをそいでしまうので、ネタバレを気にしながら面白かったところなど紹介したいんだけど、でもやっぱり情報入れずに読みたい方はここから先読まないでね!


 特に面白かったのは、舞台で新潟港が出てくるところで、新潟港の倉庫でヤクザ同士が派手に銃を撃ち合って大変な殺し合いをするんですよ。オレが中学生の時におじいちゃんと釣りに行った辺りなので、その当時の潮や重油みたいな、気分悪い臭いが蘇ります。しかも新潟港は万景峰号が入港したり、自衛隊の護衛艦というすごい軍艦が来たりもして、近くに住宅や商店街もあるような日常に、そんな物騒なのが同居しているような変な感じがあるんですよ。

 他にも、千葉のドライブインみたいなところや、別に面白くもなんともないような普通の雑な景色が戦場みたいになったりするのも面白いです。映画でスクリーンで上映されていたらさぞ楽しいだろうないう感じがするんですよ。深町さんは日本の景色を大切にする作家!

 自衛官が身を持ち崩してヤクザの兵隊になったりするのも日常から地続きな感じがしてとてもいい。殺人を請け負うような武闘派のヤクザの組織が警備会社を装っていて、社長とか社員とか言っているのもよかった。

 あと、女刑事が全裸で拷問される場面はあまりに激しくて逆に面白くなってしまうような変な背徳的な感じがしてとても面白かったです。ヤクザの組織に潜入している主人公の面倒を見ている女刑事で、主人公にすごいつらく当たるのでムカついていたんだけど、そんな生意気な女が全裸にひん剥かれて犯されて半殺しみたいにされているんだけど、主人公も踏み絵的に、自分は女と仲間じゃないと証明するために更に暴行を加えなければならないという状況なんですよ。前からムカついていたとは言え、本当は味方じゃないですか、しかもけっこういい女が全裸になっている状況をありありと想像すると、江角マキコ天海祐希みたいな女を想像して読んでいたんだけど、正直言って大興奮してしまいました。