古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

ハローの秋

 週末は松浦亜弥主演の映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』をワーナーマイカルシネマ新潟でと、モーニング娘。コンサート『踊れ!モーニングカレー』を新潟テルサに見に行って来ました。

 紺野あさ美ちゃんの卒業以来、ミュージカル『リボンの騎士』は見に行ったのですが、心が高ぶることもなくぽっかりと空いた穴を埋めるものでもなく、今回の映画もコンサートもほとんど惰性で行こうと思ったに過ぎなかった。そんな暇があるなら運動したり仕事したり、ポケモンしたりした方がずっと有意義ではないかとさえ思った。

 ところが、どちらもいい意味で期待を裏切る素晴らしいものでありました。

 そもそも映画『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』は『バトルロワイヤル?』をずっこけさせたで評判の二世監督・深作健太氏がメガホンを取っており、あややちゃんもアイドルと言うにはふてぶてしさが増大するばかりの反面、可愛気が減少の一途を辿っており、そんな現状でアイドル映画なんて製作してもまた一つハローの暗黒史が刻まれるのかと、悪いほうの気体が無限に膨れ上がっておりました。

 お話は、スケバン刑事の娘であるあややちゃんが、アメリカから拘束衣を着せられての強制送還から始まる。母の裁判での司法取引のために事件を解決するためにスケバン刑事として潜入捜査を命ぜられる。期限は3日間。潜入した高校では爆弾テロや集団自殺みたいなサイトで生徒が洗脳状態にあり、サイトの運営者を見つけてやっつけるのであった。かいつまんで言うとこうだけど、話は無駄に複雑で意味の分からないところや通じないところ、投げっぱなしの複線が目立った。若干破綻気味だったのだが、ハロモニコントを見慣れていれば全然問題なし。

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 そんなことより、特筆すべきはあややちゃんのかっこよさが極めて上手に描かれていることだ! 不良生徒に見栄を切るあやや、不良をぶちのめすあやや。アクションシーンが素晴らしくかっこよく、走る姿も躍動感溢れていて、運動神経のよさがたっぷり発揮されていた。上戸彩ちゃんなんかより断然『あずみ』はあややちゃんの方が向いていると確信した。ホステスのような風貌の石川梨華ちゃんも凄みと色っぽさ、アクションのかっこよさを存分に発揮して悪役をこなしていた。

 風格や凄みばかりを見せ付けるあややちゃんは、かわいらしいアイドルとしての活躍はもう諦めるしかないのだが、その分悪くてかっこいいアクションスターのあややちゃんとしてこれから活躍してほしい!




 そしてモーニング娘。コンサート『踊れ!モーニングカレー』ではタイトルに嘘の無い躍らせっぱなしの素晴らしいコンサートでありました。

 そもそも、オレはハローの何が楽しいかと言うと、メンバーの魅力も確かにそうですが、コンサートやDJイベントで踊る楽しさが一番であった。ハローを聴き始める前はもう音楽なんてオレには必要がないのではないかとすら思うほど音楽から離れようとしていた。ロックのライブに行っても、最後まで楽しいと思ったことが一度もなく、いつも早く終わって帰りたいと思っていた。そんなある日、2002年の夏に新潟に『爆音娘。』というイベントが来た。知り合いが運営に携わっていたので、ほんのつきあいのつもりで行って見るとあまりの楽しさにぶっ魂消た。

 これはハローの楽曲をクラブで掛けてヲタが、ハローの皆さんもいないのに、勝手に声援を送ったり、ヲタ芸をしたり、完璧な振り付けで踊ったりするイベントだった。ちょうど、保田圭ちゃんが卒業する前で、「保田大明神」というのぼりを掲げたヲタがいた。なんという狂いっぷり。それまでテレビで軽くみるだけのライトユーザーだったオレだが、音楽が大音量で流れると、テレビで見ていた映像がまぶたに浮かぶと言う衝撃的な体験だった。また、ヲタのみなさんがあまりに楽しそうでオレも仲間に入りたいと強く思った。

 そもそもクラブとかロックのライブはなんかねえ、空かして「ふん」みたいな格好した他人を見下してるような連中がかっこよく人目を気にして踊ったりしてるでしょ、オレはそういうのが本当に大嫌い。何一つ楽しくないんだよね。ところがハローのイベントと来たら、醜い怪人みたいな人たちが本当に幸せそうな笑顔を浮かべているんだよ。普通にしてればまだいいものを、全身に推しメンの写真やバッチを張り巡らして、歩く祭壇みたいになってたり、首から大きな顔写真をぶら下げたりしていて、一体何が目的なのか、どう思われたいのかよくわからない。でもそうするのが楽しくて仕方が無いというオーラが漲っている。彼らにはハロメンが神なので、神にアピールできれば他は関係ないとでも言うようだ。

 初めて見たのは保田圭ちゃんの卒業の前の日のコンサートだった。確か埼玉スーパーアリーナだった。音楽イベントで最後まで楽しんだことがなかったのに、この日は時間を忘れて楽しんでTシャツが濡れ雑巾のようになるまで汗をかいた。それから、新潟に来るハローはほぼ全部見て、山形でごっちん、埼玉でハロコン、横浜で握手会などなども足を運んだ。

 そうこうしているうちに紺野あさ美ちゃんが大好きになって、写真集も買って、スポーツフェスティバルでのMVPも見て、ソロDVDも買ってとしているうちに、今年の7月23日に彼女は卒業してしまった。

 その卒業コンサートは、ネットオークションで2万を払って買ったチケットはファミリー席だった。これが本当に痛恨のチケットで、オレは本来、何が楽しくてハローに通っていたかというと、我を忘れて騒ぎ狂うためにあったのに、じっと座って見ていなくてはならないファミリー席なんてものを買ってしまったために、紺野あさ美ちゃんの最後の最後でただじっと座っていなくてはならなくなってしまった。命の最後を燃やし尽くすまで限界よろしくで踊りまくらなくてはならない場面でオレは一体なにをやっているのかと本当に悔しい思いをした。あさ美ちゃんと空間を共有して踊る最後の機会を失ってしまったのだった。

 ミュージカル『リボンの騎士』は始めから座って見るものだし、好きな子もいないしで、さっぱりなんの感動もなかった。もうハローの季節も終わりかなと思ったものだった。寂しくもあり寂しくもなしだった。

 そうして迎えた今回のコンサートは、特に好きな子もいないので、全体を見ながら斜に構えて見始めた。軽く「おい!おい!」言ったくらいにしていた。ところが曲が進むにしたがってどうしても居ても立ってもいられない気分になり、本当に一番楽しんでいた時くらいワーワー歌って踊った。中だるみ一切なしの躍らせる曲ばっかりだった。大好きなディスコ調のアルバム曲の『How do you like Japan』があまりに素晴らしく楽しかった。これだけ躍らせてくれるんだったらいくらでもコンサートに行っちゃおうと思った。

 ぐっちょり塗れたTシャツを片手に帰宅すると母が「あんた走って来たん?」と聞くので「そうだよ」と嘘をついた。