古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

遠藤賢司さんのライブ

FM-NIIGATA「週間アコギ倶楽部」PRESENTS アコギの世界vol.2】ということで、遠藤賢司さん、遠藤ミチロウさんのアコースティックライブに行ってきました。事前にチケットを予約した際に、売れ行きもぼちぼちなので椅子を出そうか検討しているとのことで、なるほどアコギだしまったりしたライブなのかなと油断していると、とんでもないものでありました。

 まず遠藤ミチロウさんのバンド、ノータリンズがアコギ、ドラム、チェロという編成で、なるほどと思うまもなく、ギターを掻き毟るように演奏する遠藤ミチロウさんはやたらと怪鳥音でシャウトするのでした。チェロの坂本弘道さんがまたとんでもなく、遠藤さんの後頭部から後光が差していると思うと、それはチェロの足の金具にグラインダーを当てて、坂本さんが火花を散らしているのでした。どんどんエキサイトして、お客さんにまで火花を飛び散らせていました。ドラム以外に何か打楽器の音がすると思ってよく見ると、坂本さんが激しくチェロの弦を指で叩いていました。チェロって本来もっと奉って扱う楽器じゃなかったのかと、粗末に扱われているのにブッ魂消ました。ミチロウさんの歌、toshiさんのドラムも素晴らしく激しく、始終圧倒されっぱなしでした。

 スターリンは、大学の時に友達に、「ブタの臓物を客に投げつける」「ステージでオナニーをする」「客は凶暴な人ばかり」「客におしっこをぶっかける」「客と殴り合いの喧嘩になる」などという恐ろしい噂ばかりを教えてもらって、教えてくれた友達も、ちょっと狂ったような人だったので、田舎の純朴な青年だったオレを震え上がらせるばかりでした。ライブなんてとんでもないタダでは帰れないだろうから絶対に行きたくないと思ってました。新潟のヤンキーですら恐ろしいのに、もっと恐ろしい人が東京にはいるものだなと思ってました。そんな遠藤ミチロウさんの姿はバンドブームの時に、メジャーでCDを出してMTVジャパンでPVが流れるようになって始めて見ました。『勉強ができない』という曲で、新築の家で子供が勉強しようとすると、スターリンのみなさんが、机の下で演奏していたり、クローゼットで演奏していたりする変なPVでした。

 それからバンドは解散されて、ソロで弾き語りをしていらっしゃるとの事情は知ってましたが、全く聴いた事はなく、それでもアックスで遠藤ミチロウさんが表紙に作家の名前を毛筆で書いて下さって、オレもお世話になるに至っていたのでした。なので、少なからぬ因縁を感じ、最新刊である『ライフ・イズ・デッド』を持って物販にいらっしゃったミチロウさんに挨拶させていただきました。ノータリンズのCDを購入してサインをいただき、名乗ると「ああ、この名前はね、すごく書きやすくてよかったよ。字にも書きやすいのと苦手なのあるからね」とおっしゃってくださいました。

 遠藤賢司さんにサインをいただこうと『史上最長寿のロックンローラー』をビニール袋に入れて会場に訪れると、とにかくオレの腕よりも長さの正方形という大きさで目立って開場になるまで気まずかったです。

 遠藤賢司さんも座っての弾き語りだからしっとりとしたものなのかと思ったら、激しく叫びまくり、ギターは一曲ごとにチューニングするために交換するという激しさで、これまた飛んでもなかったです。後半はTOSHIさんがドラムを叩いて、エレキギターで歌うという、アコギライブというコンセプトが全く無視された、激しいものでした。名曲『東京ワッショイ』も聴けてよかったです。贅沢を言えば『不滅の男』が聴きたかったです。ドラムとギター、ボーカルだけとは思えない音の厚みで、これは恐らく楽器の音以外何か凄まじいものが発生していたのではないかと思いました。アンコールの後、遠藤賢司さんは獅子舞のような見栄を切ってステージを後にしました。わけが分からなかったですが、かっこよかったです。演奏が終わってステージには幕が張られましたが、端っこをめくって覗くと、ビッグマフを始めとして7種類くらいのエフェクターが使用されてました。

 遠藤賢司さんには、勝手にCDを買って聴いていた以外の因縁は全くなかったのですが、CDの中身を盗まれてしまったにもかかわらず、未練たらしく巨大なCDジャケットを持ち続けていたという意地で絶対にサインを頂戴したいと、図々しくしつこく会場で遠藤さんを待ってました。そしたら、会場に残っていた熱心な人たちと一緒に楽屋の入り口に案内していただいて、サインを頂戴できました。遠藤さんが「お!史上最長寿」と言ってくださいました。せっかくだったので『ライフ・イズ・デッド』をお渡しすると「じゃあ僕にもサインちょうだい」とおっしゃって、眩暈がしそうな気持ちでサインさせていただきました。

 6時半開演で9時くらいに終わるかと思っていたら、開演が押したのもあってか、帰路に着いて車に乗ると11時を回ってました。運転していてもライブの模様をフラッシュバックしてしまい、交通事故起こしても不思議じゃなかったです。こうして寝て起きた今も反芻してしまいます。

 とんでもなく濃くて熱いものをぶっかけられたような圧倒的なものに触れた感じでした。ビックリライブでした。いい意味で、犯されたような気分です。遠藤賢司さんは今年還暦を迎えたそうで、関係ないですが銀杏BOYZの峯田さんもこんな感じで年をとって行くのだなと勝手に思いました。今、若い人らが応援してますが、きっとそのまま年をとっても会場に行くんでしょうね。お客さんは、おじちゃんおばちゃんばっかりで、20代の女性は全然いませんでした。そもそもチャラチャラした人が全くいなくて居心地がよかったです。遠藤ミチロウさんの演奏の時にステージのまん前で拳を振り上げている人が7人くらい居ましたが、周りを気にしていました。それから、ライブが始まる前にFM新潟の番組の人がステージで挨拶と解説をしていらしたのもよかったです。毎回出て来て、いちいち解説があったらもっといいと思いました。