古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

ちょっと南相馬市に行ってきた1

 地震や津波を最初パニック映画を見るように喜んでいたんですよ。そういうの大好きですからね。津波超すげえ!東京なんて大した被害もないのに大騒ぎしちゃってさ、なんてね、ところが被災規模の大きさやとんでもない津波の映像、火災、失われた命の多さ、事態の深刻さの報道に触れるたびにずっしり来ちゃって、そういえば先日Tシャツのイラストを描かせていただいた清掃業者ディベロップさんが仙台だった!とか、阿部和重さんのトークイベントの打ち上げでお会いしたブログ『男の魂に火をつけろ』のワッシュバーンさんも仙台だし、マンガ家の地下沢中也さんのご実家は岩手だったし、まったく縁がないわけでもなく、ちょっと想像力を働かせれば読者さんだっているかもしれない。福田萌ちゃんも岩手のご出身。そこにきて原発騒ぎじゃないですか。どんどんとんでもなくなって来て放心してテレビとネットばかりの一週間でした。

 モンスターハンターはしっかりやってました。今まで使っていなかった双剣やハンマーを使い始めて、アマツマガツチをライトボウガンなら仕留める事ができるようになりました。アルバトリオンのソロはまだまだです。すぐこっちが死んじゃう。そんな場合じゃないけど別にできることもないし、とにかくモンハン面白いし、深刻ぶってりゃいいってわけじゃないだろくらいな気持ちもありました。いちマンガ家として存在があまりにマイナーだし、そもそも人様の励みになるようなマンガなんて一度も描いたことがないじゃないですか。全く災害向きの仕様じゃないんですよオレは。今、皮肉めいた表現が必要かと言われたら全く無用以外の何ものでもないんです。

 大根仁さんがDIGでおっしゃってました。「今オレたちには桑田の声が必要だ」と言いながらサザンオールスターズの『旅姿七人衆』を掛けていらして、本当に胸に沁みる超名曲で、ああこれだよなと思いました。『TSUNAMI』を掛けるかと一瞬ドキドキしました。そのラジオ番組の裏ではFMでキムタクがしゃべっていて、そのスターとしての存在感を本当にまばゆくラジオの音声だけなのに頼もしく感じました。

 キムタクなんて普段なんとも思ったことないですよ。むしろしゃら臭いくらいに思っていました。日本一のイケメンの人生ってどんな気分なんだろうなとか皮肉めいた考えをめぐらすくらいです。でも今、そんなドメジャーな存在がもたらす、彼が生きていてくれる事の何か安心感みたいなものを感じたんですよ。スマップは被災地域でコンサートすべきです。被災された皆さんの心をひとつにして復興の励みに絶対になると思います。

 家に帰ってふと小沢健二が聴きたくなって『Life』ですけど、パソコンで聴いているとそのストレートなポジティブなメッセージにとても感動してしまいました。何年も聞いていなかったのに随分覚えていて、希望に満ちたこのすばらしい楽しい曲がもたらす励みの力が凄い事に気づきました。去年の復活ライブ行けばよかった。これまでの人生振り返ってサブカルだとか、マイナーなアンダーグラウンドのロックとか大喜びで親しんできたのですが、オレが幸福で余裕があったからそっちに神経が向いていて、心をひとつにしようなんて更々思ったことがなかったんです。真にきつい状況で必要なのはストレートでポジティブなメジャーなものがもたらす力強い存在感なんですよ。平原綾香の『ジュピター』でもいいですよ。中越地震では彼女のこの歌が本当に被災された皆さんを励まして心をひとつにする安心感をもたらしたんですよ。

 とにかく、オレは仕事や活動では丸っきり役に立たないとそれこそガッカリしてしまったんですが、かつて阪神大震災内田康夫田中康夫さんがスクーターで被災地をめぐりにめぐってボランティア活動されていた事をSPA!の連載で読んでいました。うちはお菓子屋でもあるのでお菓子を届けたいなとずっと考えていました。ところが、うちはうちでお彼岸を目前に控えて零細企業ですから、店を続ける続けないの状況でサバイバルしております。母に聞くと「お彼岸が終わってからにしてくれ」と言われました。お彼岸は一年で一番の稼ぎ時なんですよ。

 そんな時、ツイッターで被災地の避難所では物資が不足していて、ひとつのおにぎりを4人で分けて食べたとか、男が子供や女から食べ物を取っているとか、悲惨な状況のレポートを目にするようになりました。いわき市には放射能をドライバーが恐れて物資を運んでくれないとか言われていました。テレビではしきりに被災地には行くなといいます。ネットでもそんな論説の人がいます。確かに阪神大震災などで人が押しかけて迷惑された話はありました。ところが、ちょっと考えてみると今回の被災地域の規模は桁違いなんですよ。神戸とは全く状況が違うんじゃないかと思いました。また、東京の人が有志で物資を集めてトラックを借りてどこかに持っていったらむしろガラガラで人がいなかったなんてブログ記事も読みました。

 とある小学校の避難所で本当にものがなくて助けて欲しいというツイートを読んでしまったんですよ。その場所なら、うちからガソリン満タンなら往復できるような距離の場所でした。

(続く)