古泉智浩の『オレは童貞じゃねえ!!』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

ヒットがしたい

 映画『死んだ目をした少年』2月21日よりテアトル新宿での上映が3月20日で終了となりました。Twitterで感想をちょいちょい検索していたところ概ね好評いただいていたようで、リピーターもちらほらうかがえました。トークイベントを松江哲明監督とうしじまいい肉さんと2回やらせていただいてかなりの皆様にご来場いただきました。

shindame.com

 新潟でアクション映画、しかもハリウッド大作を見てもせいぜい20人くらいで見るのが普通で、ともすれば2~3人なんてのもざらなので、一日一回上映とは言え客入り超すげえ!と思ってしまいます。上映サイドとしては連日立ち見が出るくらいが理想なのだとは思うのですが、そこまで至らなくともよかったんじゃないでしょうか。加納監督の初作品としても上々なんじゃないなか!

 

 

死んだ目をした少年

死んだ目をした少年

 

 新装版です。あとがきを新たに書き足しましたよ!

 14年以上ぶりでアックスで特集していただきました!

 

 これまで20年以上漫画描いてきて、そこそこ原稿料がもらえればいいやと思っていて、それで充分生活が成り立っていたのですが、どうやら漫画はそういう商売ではない事に最近気づきました。例えば週刊ビッグコミックスピリッツという漫画雑誌がありますね、そこで連載されている漫画で単行本が大ヒットしている『闇金ウシジマくん』『アイ・アム・ア・ヒーロー』といった上位5作品くらいが、編集部の社員や契約社員やバイトの給料を払って、その他出版事業の従事者、それ以外の漫画の原稿料を支えています。単行本がそこそこ赤字ではない程度に売れて増刷されない漫画は、あってもなくてもいいくらいの連載で、売れず大赤字の漫画はマイナスで、つまりオレのような利益としてあるかないかともすれば赤字だったような漫画は商売として成立してなくて、いわば寄生虫のような、若干の可能性に賭けてやってみたら失敗みたいな、そういう存在です。

 

 オレみたいなのも漫画界のすそ野を広げて多様性をもたらすような意義はあったと思うんですが、出版業界自体に余裕がなくなってきており、ヒットがないと会社自体が持たないくらいの危機感でいっぱいで、ヒットしなかったらもう意味がないくらいの感じだと思います。

 

 大ヒット作がさっぱり面白くないとか、そういった批判は本当に天に唾を吐く行為だった。自分がよもやヒット作を描ける気も全くしないですが、変にヒットして連載が長期化して世界観がおかしくなっていく漫画をずっと見て来ました。そういうのは作家としてどうなのだ?もうかればいいのか?なとど考えていたのですが、そういういろいろなものと格闘しながら出版社を支えて来た皆さんにこそ、オレもおこぼれを頂戴していたわけです。

 

 さてコミックビーム連載中の『悪魔を憐れむ唄』は次号で最終回を迎えます。これは1巻の売れ行きがかんばしくなく、2巻で盛り返すことができなかった結果です。本当はもっとダラダラと5~6巻くらいまで続けたかった。悪魔にいじめられる主人公がいじめられた内容を漫才ネタに反映させてそれでちょっとずつ人気があがって芸人として出世していくというような内容にしたかったのですが、サイズが決まってしまったため、当初から予定していた結末に向けて物語を進めることを優先させて、あまりそういった内容にできず心残りがあります。でも物語としてはいい感じでまとまっているのではないでしょうか。単行本が完結してから読む派の皆さんも、ぜひお楽しみに! 全22話、2年近くの連載は初めてで、手探りだった割りにやれた気がします。

 

これは最終回の前の号

 

 そういうわけで、大金持ちになりたい気持ちがないかと言えばあるわけですが、そんなの無理だろうみたいな、オレには荷が重いとか、調子に乗ってるみたいで恥ずかしいとかそんなことをグジグジ考えている場合じゃなくて、ヒットがないと次の漫画を描かせてもらえない現実に直面しております。電子書籍でちまちまと稼ぐことができればそれでもいいかもしれない。でもまだ、原稿料の方が圧倒的に売り上げの大半を占めております。

 

 アシスタントをたくさん雇う方式の漫画家ならヒットがないと即赤字に転落で、もっとガツガツしていたはずなんだけど、もうず~っと一人で描いていて、原稿料だけで充分暮らしていけたため、気づくのが遅れてしまいました。ぬるま湯があまりに気持ちよすぎて全然目が覚めなかった。まどろみでぬくぬくと過ごしておりました。とにかくヒットを出して雑誌で他の食えない漫画家を支える側に立たないと後がないんです。

 

 どうすればヒットが出せるのか?それが分からないからみんな苦労していて、狙って出せるわけでもない。オレが思いついているのは、ヒットしない要素を減らすくらいで、あとは自分が面白いと思ったのを精いっぱい描くのと宣伝も頑張るくらいじゃないでしょうか。

 

 オレがこんな具合に漫画界で発見した図式が、映画業界や音楽業界などでも言えるのではないでしょうか。とにかくヒットを出して業界を支える側に回らないと続かない。それと同時にヒットがなくても続けられる方式も模索していきましょう。

 

 コミックビーム連載中で次回最終回の『悪魔を憐れむ唄』は無名のお笑い芸人が総武線で悪魔と出会って散々な目に会うホラーでしたが、今月末より太田出版のぽこぽこというネットサイトで『無名のお笑い芸人がある日ゾンビに噛まれた結果』というズバリなタイトルの連載が始まりますよ。

www.poco2.jp

 芸人ホラーシリーズ第2弾と言ってもいいのではないでしょうか。続編と見ることもできなくもない構成となっております。全5回です。

 

 次は吸血鬼に噛まれたり悪霊の憑りついた家に住むとか、そんな芸人シリーズになるといいな。散々言ってきましたがヒットするかどうかは全く不明ですね! 相乗効果で全体的に売れるといいけど全部が全部共倒れにならないように気を付けたいです。