古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

青林工藝舎に神風を!

 常にナイフの刃の上を歩くような経営を続けている出版社、青林工藝舎ですが、島田虎之介さんの著作『トロイメライ』が手塚治虫文化賞の新星賞を受賞されました。おめでとうございます!

 一台の古いピアノを巡ってナチスや東南アジアや日本やらと時空を超えた物語が展開するという大変スケールの大きいマンガです。戦争からワールドカップサッカーのカメルーン代表の中津江村騒動など点と点が線になっていくというような練りこみ度の高い構成です。絵も独特のイラスト的な風合いで非常に独特で、大抵絵の上手な人はお話がそうでもないというか、雰囲気重視だったりするじゃないですか。シマトラさんはどっちもすごいんですよ。はっきり言うとずるい! 誰も読んだ事ない種類のマンガであると、オレは自信を持って断言します。

 オレも青林工藝舎には大変お世話になっていて、何冊も本を出していただいているのですが、時に印税の支払いを待って欲しいと言われたり、印税率が下がったりする事があります。社員の皆さんは生活を投げ打ってマンガの出版に精を出しています。はっきり聞いたわけではないですが、給料はほんの雀の涙しか出ていないはずです。編集者の浅川さんは会うたびに髪が膨張して行って、次会うときにはさっぱりしているだろうと思っていると、膨張の収集がつかなくなっています。多分散髪代にも事欠いているのだと思います。編集者の志村さんはかつてはロン毛だったのですが、何年か前から坊主頭になりました。恐らく自宅で散髪しているんだと思います。そんな状態なので、お金について自分だけ欲をかくことが全くできません。

 そんな青林工藝舎はギリギリの経営を続けているわけですが、花輪和一さんの『刑務所の中』が映画化するほどの大ヒットで、随分助かったそうです。福満しげゆきさんの単行本も順調に売れています。それでも波はあるので、苦しい時期も時折訪れます。オレもなんとか戦力になりたいのですが、御覧の通りの体たらくで、もうちょっとピリッとしたいところです。

 そこで今回のシマトラさんの手塚治虫漫画賞受賞です。なんとかこれを大ヒットに結び付けて経営状態の追い風としたいじゃないですか。ここでお願いしたいのは、『トロイメライ』に合わせてオレの『ピンクニップル』も買っていただくと、アマゾンの送料も掛からなくなってとてもいいのではないでしょうか。あれですよ、『トロイメライ』は非常に面白く芸術性も高いマンガですが、シモネタがちょっと弱いですし、エロもあんまりないので『ピンクニップル』と一緒に読むと調度バランスが取れると思います。