古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

礼服がギリギリだ

 親戚ともどもお世話になっていた、新潟の老舗和食屋『五菜庵』のご主人が亡くなって母とお通夜に行ってきました。親戚がお酒を卸していて、それで正月の御節やなにかでうちもお付き合いがありました。オレも以前から東京から編集者さんがいらした場合オフィスとして使っているサイゼリヤで打ち合わせしていたのですが、それではあんまりだと批判の声があって編集さんを案内する事にしました。でもそうしようと思って一回案内したきり、編集さんが足を運んでくれる事もすっかりなくなってしまった……。

 オレみたいな、松屋のマーボー豆腐は最高だ!なんて人間に和食に味がうんぬん言う資格があるとも思えないですが、これまで美味しいお料理どうもありがとうございました。列席した人々はみんなご主人の料理に舌鼓を打ったのかと思うと感慨深かったです。果たしてオレが死んで集まった人はマンガを読んだだろうか、大半は読んでいないだろう、でも身近な人に読まれても気まずいだけなのでこのままでいいと思いました。これまで元気に、82歳まで現役で料理を作っていらしたとばかり思っていたら、随分前から心臓を悪くされたり、脳に何かあったりと病と闘いながらの現役生活だったそうでした。

 「節分ですが、鬼は外、福は内なんて都合のいい事があるでしょうか」と始まったお坊さんの話がとても面白かったです。なんでも鬼も福も全部をもたらすのが自分のチョイスであり、豆で仕分けするのはむしろ自分であるというような内容でした。また、ある作家のお話を紹介してくださって、その作家は息子さんととても仲良くしていたのですが、中学に進学する時にはなむけの言葉で「これからはお前の行動に口出しを一切しない、その代わり、人に迷惑を掛けず自分の言葉や行動に責任を持つように」と言ったら、翌日自殺してしまったそうなのです。これが一体何だったのか、その作家は大変に悩み苦しみ、人は誰にも迷惑を掛けず掛けられずに生きていく事も、自分の言葉や行動に完全に責任を取ることなんかできるわけがないという結論に達したとの事でした。「はあ?オレ何か悪い事しましたか?」なんて逆切れしてしまう事もあるオレには実に見につまされるお話でした。

 先日、『ヤング@ハート』というドキュメンタリー映画を見ました。老人がロックを歌ってコンサートを開くグループの7ヶ月に及ぶ密着ドキュメンタリー作品でした。本当によぼよぼの死の淵を何度も行ったり来たりしているような老人がソニックユースやコールドプレイを歌うんですよ。町山さんがブログで紹介されていた時から気になっていた映画で、新潟にも来たのにその時見れなかった。その取材中に、おじいさんがハードボイルドな事になってしまい……とにかくすごい映画でした。これまで親しんできたけど何の歌かさっぱり興味もなかったロックの名曲が字幕で訳がついていて改めてこんな歌だったのかと知ることもできてとてもよかったです。特によかったのがシニード・オコーナーの『ナッシング・コンペア・トゥ・ユー』で、こんな歌を死にそうな老人に歌わすなんて反則ですよ。


 ituneで買って20回聴いてます。

 それで、今体重が78キロにまでなってしまい、人生で一番重いんですよ。記録を随時更新中という非常にまずい状況です。寒さのせいか脳のある部位が損傷しているせいかいつもお腹が空いていくらでも食べれます。だったら運動をしなければならないのに、特にランニングをすればいいのに雪や雨ばかりでまるでやる気が起こらない。週一の筋トレで筋力が増えているのでそのせいかで重いだけであると思いたかったのですが、礼服のお腹がギリギリなんですよ。ぐ〜ってお腹を引っ込めてボタンを留めると全くベルトが必要じゃないのですが、このままではズボンが壊れてしまう。自宅にランニングマシンは敷居が高いですよね。