古泉智浩の『読書とお知らせ』

マンガ家の古泉智浩です。ココログより引越ししました。

歩けないのはつらい

 先日、バンドの練習で東京に行っていた際にマクドナルドの階段を踏み外して変な足の着き方をしたと思ったら、バキバキという音がして歩けなくなってしまいました。マックモーニングで、サラダマリネマックを食べて帰ってまた寝ようかななんて考えていたらそんな事になって、立とうとすると両足が痛くて痛くて、目の前がインベーダーゲームのようなドット絵みたいにチカチカして吐き気もするし、折れちゃったかなと思いました。けっこうブカブカのサンダルを履いていたので変なひねり方をしたようでした。骨折は子供の頃に何度か経験がありました。右足の甲がぷっくり腫れて怖かったし、左足は体重をまったく掛けられなくて、マクドナルドの外の椅子を一つ借りて座りこんでおりました。台車みたいのがないと帰れないどうしようと思案に暮れて結局救急車で運んでもらう事にしました。

 救急車に乗るのも2回目で前に乗ったのはバイクで転んだ時で、タクシーと接触しそうになって、変なブレーキを掛けたらちょうど台風が過ぎた後で銀杏の葉が降り積もっていてそれに滑って転びました。中野通りを笹塚方面に走っているところで、バイクは25メートル滑ったそうで警察に言われてゾッとしました。その際は病院に行ったら、肩が上がらなかったけど特にどこも怪我もなくて、気まずかった。タクシーの運転手が最初神妙にしていたのに、どこにも接触していないと分かったら「当ってないよね!当ってないよね!」と大喜びしていました。

 当初、座っているのも眩暈がひどくて厳しかったのに、119番で説明して救急車を待つ間にどんどん回復して足以外元気になって来るのでどうしようかと思った。車椅子で充分だったんだけど、ストレッチャーで運ばれてサンモール商店街から中野通りに抜けるのが恥ずかしくて恥ずかしくて実際意識はどんどん元気になるので申し訳なくて仕方がなかったです。

 最近WOWOWで『パシフィック』という太平洋戦争のテレビドラマを見ているんですが、とにかく登場人物が撃たれたり爆撃されたりで怪我したり死にそうになったりするんですよ。銃弾が飛び交う中足を撃たれて歩けない人をタンカで後方に運ぼうとすると、運ぼうとしている人が撃たれて死んだり大怪我したりします。動けないってだけでも超不安なのに助けてくれる人がまた撃たれたり、運ばれても病院もなくてそこら辺に野ざらしだったり、テントだったりで、充分な医療もないなんて最悪ですよ。これまで大変そうだなとどこか人事としか思えなかったのが、そんな最悪さがアリアリとイメージできました。でもオレのイメージより更に何倍も大変なんですよね。

 小滝橋通りの外科に運んでもらって、レントゲンを撮ってもらうと左足は、足首の上の外側の細い骨が斜めに2箇所線がくっきり入っていました。右足は、レントゲンでは分からなくて、剥離骨折か捻挫じゃないかとお医者さんは言っていました。両足とも添え木の役割をする包帯と板の中間のような素材のボード的なのを後ろから足の形に曲げて包帯で固定しました。入院を勧められたけど、どうしても帰りたかったら帰ってもいいよと言われ、なにしろ日曜日だったので、特に治療はできないそうでした。車で上京していたので妻に運転してもらって帰宅する事にしました。妻はほぼペーパードライバーなのですが、安全運転で関越道を休日千円で帰りました。東京に居てもどこにもいけないし何もできない。せいぜいツイッターでつぶやくくらいです。iphoneにまだ慣れていないのでこんなふうに長々とブログを書くのもできない。

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 偉そうな態度に見えますが、足を上げていないと浮腫むそうなので仕方がないのです。

 帰宅すると祖母が使っていた車椅子があったはずだと安心していたら、母が誰かにあげちゃったそうで、代わりに祖父が使っていた歩行機がありました。歩行機よかったです。それにうちは、年寄り対応でいたるところに手すりがついているので掴んで歩けました。年寄りは足を骨折していなくても、オレが足を折ったくらいの難儀な思いをして日常を送っているのかと実感しました。廊下にあんまりものを置くと歩きにくいから可愛そうでした。今は施設で暮らしている祖母に申し訳ない気分になりました。何の気なしに雑誌の山を廊下に置いてしまいごめんなさい。

 翌日、月曜日の朝、亀田の病院に電話すると11時からなら診察してもらえるとの事で行くと、病院というのはオレ以上に弱っている人ばかりで大変な現場でした。患者さんだらけ!結局見てもらえたのが1時半くらいでした。

 左足は骨折なので、手術で金具で固定するかギブスで固めるかと聴かれ、どっちも骨がくっつくには1ヶ月半くらい掛かるそうで、金具をつけると取り外すのにも手術がいるとのことで、ギブスにしてもらいました。ふくらはぎの下の方から足の甲までガチガチにしてもらいました。膝が動かせるからまだよかった。右足は剥離骨折だろうと、昔で言うヒビくらいのもので、包帯を外すと露骨な腫れは引いていました。包帯で固定するという方針で特に湿布もしませんでした。

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 右足は体重を掛ける事ができるので、松葉杖の練習をリハビリ室でさせてもらって帰宅しました。右足しか使わないので腿がすぐパンパンになりました。

 手術で入院するかもしれないと思っていて、いろいろ道具や本を持って行っていました。お医者さんも帰宅して生活が困難なら入院もどうかと勧めていました。治療でもないのに入院はお金ももったいないし、パソコンもいじれないので嫌だったので帰宅する事にしました。家なら録画した映画も見れる!

 歩けないのはつらい。運動もできないし、トイレに行くのも大変で、映画も見に行くと「あの人杖ついてまで見に来てるよ、どんだけ〜」と後ろ指を刺されてしまう。ネームを考えるのはマクドナルドやガストに行っていたけど、当分は自宅でやります。打ち合わせも電話かメールでなんとか済ませなくてはならない。

 今月はカナザワ映画祭や大阪での漫画家バンド大戦、東京でゴジゲンのお芝居など遊びや浮かれた活動の予定が詰まっていたんだけど全部キャンセルで、家で大人しく録画した映画見たり仕事します。関係の皆様、ご迷惑お掛けいたします。これからきちんと連絡します。両足骨折なんてそんな浮ついた生活に対しての戒めとしか思えない。天罰なのかな。同じ頃に谷啓さんが階段で転んでお亡くなりになっていて、階段なんて普段なめて掛かってますが、油断のならない相手です。手すりがあるなら絶対にしっかり握って上り下りすることを強くお薦めします。それからサンダルも油断しない方がいいです。